Q:職員「支店長は投信販売の経験がありませんよね? 契約を取れと簡単に言わないでください!」
A: 支店長「そんなこと言っている暇があったら一件でも取ってきたらどうですか?」
森脇's Answer:
今回も読者アンケートからのご意見を取り上げました。実際に部下からここまではっきり言われることはあまりないと思いますが、このような不満は決して珍しいものではありません。
はじめに申し上げておきますが、支店長に投信販売経験があるか否かはこの問題の本質ではありません。これは投信販売に限ったことではなく、全ての業務について言えますが、実務経験の有無とマネジメントの優劣は本来無関係なものです。ですから、部下がそのことを責めたりするのはお門違いであり、支店長は実務経験がないことについて気後れする必要はありません。
しかしながら、実際にこのような不満を持たれている時点で、部下への指示が適切でない可能性があります。その訴えの矛先に実質的な意味はないにしても、職員の抱えている不満の切実さには理由があり、心を寄せる必要があるはずです。「時には上司について愚痴をこぼすこともあるだろう。ガス抜きして、また明日から頑張ればいい」などと軽く考えるべきではありません。このような訴えで垣間見えるのは、自分の仕事についてのやりがいのなさとそれを強制される苦しさです。その背景には、支店長をはじめ役職者が「契約を取れ、営業成績を上げろ」と雑な指示を現場職員に投げかけていることが容易に想像できます。
多くの人々は納得できる仕事を希望しています。職員たちの本来前向きな思いを無視していれば、その不満はやがて増幅し、無気力や離職につながっていくことを直視しなければなりません。
仕事の目的を説く
支店長から指示される仕事に納得感がないのは、売上や契約件数など単なる数値目標を達成することばかりを求められており、仕事の目的を見出せない状況に置かれているからです。本部から課される業績目標を達成することは支店長の責務ではありますが、ただ単に数値目標を示して成果を上げることだけを部下に指示することは、その責任を部下に押し付けているだけであることにまずは気付いてください。
ではどのように部下に指示を出すのが好ましいのでしょうか。それは、仕事の目的とは何かを示し、その目的を達するための活動を支援して、部下がそれを達成することへと導くことです。本来の仕事の目的を見失い、業績指標を振りかざしてばかりいる支店長はその役目を果たしているとは言えません。では、部下に示すべき仕事の目的とは何でしょうか。これは自金融機関が掲げている理念に他なりません。自金融機関の経営理念や企業理念を達成することにまい進してこそ、付加価値を生み出すことができ、その対価として利益が上がります。すなわち、利益を出すのは目的ではなく、目的に向かって仕事をしたことの結果なのです。もし仕事の目的が売上や利益なのであれば、自金融機関が掲げる理念は「利益至上主義」的な文言になっているはずです。しかしそのような金融機関は存在しません。今一度自金融機関の理念を胸に刻み込んでみてください。そして、その理念に向かってどのように部下を導くべきかを再考してみてください。
仕事の目的を示すこととともにやっていただきたいのは、とにかく職員に直接声をかけることです。たとえば、良い成果を出した職員がいれば、その部署まで自ら足を運び、職員個人に直接ねぎらいの言葉をかけ、どのような経緯で成績に結びついたのかを聞くとよいでしょう。職員は自分に関心を持ってくれていることに喜びを感じ、やりがいの一つになっていくでしょう。
また、自金融機関がお客さまに提供しているサービスを知るために、支店長自身が現場職員の案内を受けて投信を購入してください。もちろんNISA口座の開設と活用もお忘れなく。
支店長のこのような行動が、職員の仕事への納得感と動機付けを高めることになるはずです。
私たちはどこを向くべきなのか
前述のとおり、仕事の目的は常に自金融機関の「理念」です。経営理念や起業理念によく目を通してください。理念とは北極星のようなものであり、常にそれを参照しながら自分の進むべき道を決めるためのものです。目的地へのルートには、ただ一つの正解があるわけではありません。取り組むべき課題は千差万別で、状況は刻々と変化します。一人ひとりが創意工夫をこらしながら切り開いていかなければなりません。したがって、理念とはルールでは示せないものです。
価値を生み出す仕事というものは、チェックシートをクリアしていけば達成できるものではありません。ルールがないと不安になる人もいるかもしれませんが、何をどのようにすべきかを自ら考えて実行する余地があるということなのです。もちろんコンプライアンスを徹底することは当然として、その上で発揮する裁量が価値の源泉です。この裁量すなわち自由は、お客さまのためにあります。私たちは、ただルール通りに動くのではないからこそ、十人十色のお客さま一人ひとりの最善の利益を追求する活動ができるのです。
上司が変わっても、経営者が変わっても、自金融機関に勤務する限り、理念は頻繁に変わるものではありません。常に自らの仕事の目的を見失わずにいてください。
そして、多くの人々にはお金の心配があり、金融商品へのニーズがあることを忘れないでください。私たち金融機関の職員には果たすべき役割があるのです。そのような視座から私たちがなすべきことは何であるのかを考え、たとえ上司から数値目標の達成を連呼されようとも、お客さま一人ひとりの金融ニーズにあった金融商品を届ける使命を忘れずに共に活動していきましょう。

