finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
こたえてください支店長~投信窓販における顧客本位を実現するために~

「支店長は投信販売の経験がありませんよね? 契約を取れと簡単に言わないでください!」

森脇 ゆき
森脇 ゆき
フィデューシャリー・パートナーズ 代表
2026.04.17
会員限定
「支店長は投信販売の経験がありませんよね? 契約を取れと簡単に言わないでください!」

投信販売に徹底した顧客本位の姿勢が求められる中、現場からは戸惑いや不安の声も聞かれます。若手、ベテランを問わず真のフィデューシャリー・デューティーを実現するにはどうすればいいでしょうか。これまで2000人以上のお客さまに「あなたのための」資産アドバイスを行ってきた株式会社フィデューシャリー・パートナーズの森脇ゆきさんが、皆さんのお悩みに答える連載、第29回目です。

Q:職員「支店長は投信販売の経験がありませんよね? 契約を取れと簡単に言わないでください!」

A: 支店長「そんなこと言っている暇があったら一件でも取ってきたらどうですか?」

 

森脇's Answer:

今回も読者アンケートからのご意見を取り上げました。実際に部下からここまではっきり言われることはあまりないと思いますが、このような不満は決して珍しいものではありません。

はじめに申し上げておきますが、支店長に投信販売経験があるか否かはこの問題の本質ではありません。これは投信販売に限ったことではなく、全ての業務について言えますが、実務経験の有無とマネジメントの優劣は本来無関係なものです。ですから、部下がそのことを責めたりするのはお門違いであり、支店長は実務経験がないことについて気後れする必要はありません。

しかしながら、実際にこのような不満を持たれている時点で、部下への指示が適切でない可能性があります。その訴えの矛先に実質的な意味はないにしても、職員の抱えている不満の切実さには理由があり、心を寄せる必要があるはずです。「時には上司について愚痴をこぼすこともあるだろう。ガス抜きして、また明日から頑張ればいい」などと軽く考えるべきではありません。このような訴えで垣間見えるのは、自分の仕事についてのやりがいのなさとそれを強制される苦しさです。その背景には、支店長をはじめ役職者が「契約を取れ、営業成績を上げろ」と雑な指示を現場職員に投げかけていることが容易に想像できます。

多くの人々は納得できる仕事を希望しています。職員たちの本来前向きな思いを無視していれば、その不満はやがて増幅し、無気力や離職につながっていくことを直視しなければなりません。

仕事の目的を説く

支店長から指示される仕事に納得感がないのは、売上や契約件数など単なる数値目標を達成することばかりを求められており、仕事の目的を見出せない状況に置かれているからです。本部から課される業績目標を達成することは支店長の責務ではありますが、ただ単に数値目標を示して成果を上げることだけを部下に指示することは、その責任を部下に押し付けているだけであることにまずは気付いてください。

ではどのように部下に指示を出すのが好ましいのでしょうか。それは、仕事の目的とは何かを示し、その目的を達するための活動を支援して、部下がそれを達成することへと導くことです。本来の仕事の目的を見失い、業績指標を振りかざしてばかりいる支店長はその役目を果たしているとは言えません。では、部下に示すべき仕事の目的とは何でしょうか。これは自金融機関が掲げている理念に他なりません。自金融機関の経営理念や企業理念を達成することにまい進してこそ、付加価値を生み出すことができ、その対価として利益が上がります。すなわち、利益を出すのは目的ではなく、目的に向かって仕事をしたことの結果なのです。もし仕事の目的が売上や利益なのであれば、自金融機関が掲げる理念は「利益至上主義」的な文言になっているはずです。しかしそのような金融機関は存在しません。今一度自金融機関の理念を胸に刻み込んでみてください。そして、その理念に向かってどのように部下を導くべきかを再考してみてください。

仕事の目的を示すこととともにやっていただきたいのは、とにかく職員に直接声をかけることです。たとえば、良い成果を出した職員がいれば、その部署まで自ら足を運び、職員個人に直接ねぎらいの言葉をかけ、どのような経緯で成績に結びついたのかを聞くとよいでしょう。職員は自分に関心を持ってくれていることに喜びを感じ、やりがいの一つになっていくでしょう。

また、自金融機関がお客さまに提供しているサービスを知るために、支店長自身が現場職員の案内を受けて投信を購入してください。もちろんNISA口座の開設と活用もお忘れなく。

支店長のこのような行動が、職員の仕事への納得感と動機付けを高めることになるはずです。

 

私たちはどこを向くべきなのか

前述のとおり、仕事の目的は常に自金融機関の「理念」です。経営理念や起業理念によく目を通してください。理念とは北極星のようなものであり、常にそれを参照しながら自分の進むべき道を決めるためのものです。目的地へのルートには、ただ一つの正解があるわけではありません。取り組むべき課題は千差万別で、状況は刻々と変化します。一人ひとりが創意工夫をこらしながら切り開いていかなければなりません。したがって、理念とはルールでは示せないものです。

価値を生み出す仕事というものは、チェックシートをクリアしていけば達成できるものではありません。ルールがないと不安になる人もいるかもしれませんが、何をどのようにすべきかを自ら考えて実行する余地があるということなのです。もちろんコンプライアンスを徹底することは当然として、その上で発揮する裁量が価値の源泉です。この裁量すなわち自由は、お客さまのためにあります。私たちは、ただルール通りに動くのではないからこそ、十人十色のお客さま一人ひとりの最善の利益を追求する活動ができるのです。

上司が変わっても、経営者が変わっても、自金融機関に勤務する限り、理念は頻繁に変わるものではありません。常に自らの仕事の目的を見失わずにいてください。

そして、多くの人々にはお金の心配があり、金融商品へのニーズがあることを忘れないでください。私たち金融機関の職員には果たすべき役割があるのです。そのような視座から私たちがなすべきことは何であるのかを考え、たとえ上司から数値目標の達成を連呼されようとも、お客さま一人ひとりの金融ニーズにあった金融商品を届ける使命を忘れずに共に活動していきましょう。

Q:職員「支店長は投信販売の経験がありませんよね? 契約を取れと簡単に言わないでください!」

A: 支店長「そんなこと言っている暇があったら一件でも取ってきたらどうですか?」

 

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
1

関連キーワード

  • #フィデューシャリー・デューティー
  • #投信窓販
前の記事
「支店長! お客さまから商品選びを丸投げされてしまいます!」
2026.03.19
次の記事
「支店長! 研修は受けたのですが、投信をセールスできる気がしません。慣れるしかないのでしょうか?」
2026.05.22

この連載の記事一覧

こたえてください支店長~投信窓販における顧客本位を実現するために~

「支店長!お客さまが迷惑そうなので、電話をしたくありません!」

2026.09.18

「支店長! 今の時代、対面の営業はネット取引ができないお客さまのためにあるのですよね? であれば、いずれこの仕事はなくなりますよね?」

2026.08.21

「支店長! お客さまとの雑談が大切とおっしゃいますが、何を話していいかわかりません。時間もありません!」

2026.07.17

「支店長! 接客について、先輩方のように自信が持てません。どうしたら自信が持てるようになりますか」

2026.06.19

「支店長! 研修は受けたのですが、投信をセールスできる気がしません。慣れるしかないのでしょうか?」

2026.05.22

「支店長は投信販売の経験がありませんよね? 契約を取れと簡単に言わないでください!」

2026.04.17

「支店長! お客さまから商品選びを丸投げされてしまいます!」

2026.03.19

「支店長! 私たちが投資信託を販売する目的は何ですか?」

2026.02.26

「支店長! ノルマから解放されたいです!」

2026.01.23

「支店長! 金利が上昇しているのだから預貯金や円保険で十分です! お客さまにリスクの高い投資商品を提案する必要なんてないですよね?」

2025.12.22

おすすめの記事

【独自】世界の要人が参加「ブルームバーグ・ニューエコノミー・フォーラム」、来年11月に東京で初開催へ

finasee Pro 編集部

歴史的な金利上昇局面で「オルカン」「S&P500」が盤石な理由は? SBI証券の売れ筋でにわかにランクアップした「ゴールドファンド」

finasee Pro 編集部

「下山」はもっと難しい――資産を生活へ変えるための最適解を考える

文月つむぎ

役割別ファンドラインナップ整備の勧め
~定量データで考える「ファンドの役割」とグローバル株式ファンドの具体例~

中村 裕己

野村證券の9月ランキングで「日経225」が首位奪還、「AB米国成長株」が半年ぶりに復活

finasee Pro 編集部

著者情報

森脇 ゆき
もりわき ゆき
フィデューシャリー・パートナーズ 代表
信用金庫の預金業務担当を経て信託銀行に勤務、個人向け資産アドバイスを担当。担当総顧客数は約2000人、不動産・相続相談を含む総合的な資産アドバイスを経験する。深く学ぶにつれて、働く意義、社会貢献、自分にとっての良い仕事とお客さまの最善の利益を追 求するため、独立を決意。2018年、フィデューシャリー・パートナーズを設立。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
役割別ファンドラインナップ整備の勧め
~定量データで考える「ファンドの役割」とグローバル株式ファンドの具体例~
【みさき透】今泉宣親・金融庁銀行第二課長インタビュー
投信ビジネスで培った信頼は預金の粘着性につながる
「下山」はもっと難しい――資産を生活へ変えるための最適解を考える
歴史的な金利上昇局面で「オルカン」「S&P500」が盤石な理由は? SBI証券の売れ筋でにわかにランクアップした「ゴールドファンド」
【独自】世界の要人が参加「ブルームバーグ・ニューエコノミー・フォーラム」、来年11月に東京で初開催へ
野村證券の9月ランキングで「日経225」が首位奪還、「AB米国成長株」が半年ぶりに復活
みずほ銀行で「キャピタル世界株式」がトップに、想定最終利回り約2.7%の「グローバル債券ファンド」も人気化
マネックス証券で「日本株4.3倍ブル」が第2位に浮上、「世界のベスト」もジャンプアップ
J-FLECの労作「家計見える化報告書」で“先送り”にされた2つの論点
【第3回】オルタナティブ資産ファンドは何を見て選ぶのか
みずほ銀行で「キャピタル世界株式」がトップに、想定最終利回り約2.7%の「グローバル債券ファンド」も人気化
【みさき透】今泉宣親・金融庁銀行第二課長インタビュー
投信ビジネスで培った信頼は預金の粘着性につながる
4カ月連続で2兆円超の資金流入を記録、円高進行によって海外資産の評価減で純資産総額は減額=26年9月投信資金フロー
J-FLECの労作「家計見える化報告書」で“先送り”にされた2つの論点
米国経済Deep Insight 第19回
変わるウォーシュFRBの市場対話

野村證券の9月ランキングで「日経225」が首位奪還、「AB米国成長株」が半年ぶりに復活
佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」第21回:“106万円の壁”撤廃の影響を受けるセクターとは
「家計の見える化」が拓く新たな地平――74項目のデータを実務の叡智に変えるために
「国内株式」の資金流入はパッシブTOPIX型がけん引、「国内債券」の「中長期」アクティブに流入増=26年9月投信(アクティブ・パッシブ)
浜銀TT証券の売れ筋に大きな変化、「WCM」がトップを取り、「AB米国成長株投信」が3カ月ぶりランクイン
「支店長!お客さまが迷惑そうなので、電話をしたくありません!」
佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」第21回:“106万円の壁”撤廃の影響を受けるセクターとは
“霞が関文学”で読み解く金融界② 仕組債販売ルール指針案と「文脈検査の拡張」
【第3回】オルタナティブ資産ファンドは何を見て選ぶのか
「過去の実績上位」だけに頼らない投資信託の提案アプローチ ~10年間のデータが示すファンド成績の入れ替わりと販売現場で役立つ活用ポイント~
「攻め」と「守り」の均衡点はどこに?--2026事務年度金融行政方針のポイント解説
J-FLECの労作「家計見える化報告書」で“先送り”にされた2つの論点
【有識者対談】“正念場”の保険業界に学ぶ「顧客本位のビジネスモデル」の持続性(前編)
みずほ銀行で「キャピタル世界株式」がトップに、想定最終利回り約2.7%の「グローバル債券ファンド」も人気化
「家計の見える化」が拓く新たな地平――74項目のデータを実務の叡智に変えるために
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2026 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら