サムネイル:名古屋銀行が名古屋駅に出稿するデジタルサ
イネージ広告(筆者撮影)
名古屋駅(名駅)に直結するターミナルデパートとして1954年に開業し、地域に愛されてきた名鉄百貨店本店が、2月28日に閉店しました。最終営業日には、閉店を惜しむ多くの来店客が店舗に集まる様子が、中京地区のみならず関東地区のテレビでも放映されました。
このニュースが関心を集めている背景には、70年超にわたった百貨店の歴史の閉幕というストーリー性に加え、今後の再開発計画(名古屋駅地区再開発計画)の先行きの不透明さがあります。
再開発は、名鉄百貨店の親会社である名古屋鉄道が主体となり、日本生命保険、近畿日本鉄道、近鉄不動産ならびに名鉄都市開発と共同で実施することになっています。名鉄百貨店本店の閉店に比べれば注目度は高くないかもしれませんが、23年3月31日には、この地区に近接する複合商業施設であった名鉄レジャックが閉店し、解体後の跡地は期間限定の都市型広場になっています。名鉄百貨店本店閉店の同日には、その隣にあった近鉄パッセ(近鉄百貨店名古屋店)も1966年からの歴史に幕を下ろす形で閉店しています。
ところが、2つの百貨店の解体は現在も手付かずの模様です。名古屋鉄道は再開発計画変更理由として主に以下の2点を挙げて説明しています。
A.概算工事費・工期などを技術協力者(=大手ゼネコン各社)と相応の時間を掛けて検討・精査してきたものの、その後の環境変化が事業推進の前提を大きく変えたこと
B.解体・新築工事の施工予定者選定を進めたものの、応募参加者(=大手ゼネコン各社)から人材確保難によって現計画での解体・新築工事の施工体制構築が困難であると昨年11月26日付で入札辞退届が提出されたこと
名鉄百貨店本店と近鉄パッセの閉店日の2月28日は、米国・イスラエルによるイラン攻撃が開始した日でもあります。4月22日現在では、エネルギーや建築資材の価格上昇を招く形となり、再開発計画変更にあたり、大きな逆風となったことが想像に難くありません。
顕著な地元志向
愛知県によれば、24年3月時の県内高等学校卒業者のうち就職選択者に占める県内就職は95.1%(全国平均81.6%)、大学進学選択者に占める県内大学進学者は71.4%(同44.8%)とのことです。いずれの比率も全国トップであり、強い地元志向が窺えます。
この背景には、幅広い産業の発展と県内に所在する大学の多さ(23大学)があります。製造業を連想することが多い愛知県ですが、海も山もあり冬季の降雪も少ない気候環境にも恵まれ、産業分類を問わず国内シェアトップを占める品目が少なくありません。
この結果、第一次~第三次産業の総生産がいずれも10位以内を占めています。3産業全てが10位以内に入る都道府県は、愛知県以外では千葉県(第一次~三次が各々7・8・9位)だけで、順位の数を足して2で除した中央値も4.3(千葉は8.0)と最上位に位置します。よって、国内で最も産業バランスが秀でた地域と考えられます。
人員が県内にとどまる理由には、所得事情もあります。総世帯の年間収入は都道府県別で3位を占めているため、住宅価格などを勘案した豊かさは、全国一かもしれません。
貨物取扱量トップの名古屋港
筆者は、サラリーマン時代の北海道から静岡県への転勤時に自家用車の輸送を余儀なくされた際、苫小牧から東京港や静岡港ではなく、名古屋へ船舶輸送した後に静岡まで陸送された経験があります。事業者の説明では、名古屋港の方が大型船の船着きに余裕があり、手続きも早いため、結果的に早く安く済むとのことでした。
グローバル化に伴って港湾の国際競争力が問われるようになり、国内では船舶大型化や自動化への対応の遅れから国際競争力が低下して基幹航路の寄港数減少が課題視されてもいるようです。こうした中、名古屋港は一貫して取扱貨物量で国内トップを維持しており、国内物流のみならず、貿易を支えている様子が数値上からも窺えます。
圧倒的な事業者数
そんな愛知県は、かねてより多くの著名人を輩出し続けています。筆者自身、今回調査した中で、愛知県出身と知った方も少なくありませんでした。
それ以上に壮観なのは、事業者の顔ぶれです、製造業を始めとする事業者数が圧倒的で、表に掲載する事業者の選別に悩みました。
メディアでは、何と言ってもプロ野球のドラゴンズを持つ中日新聞の影響が目立ちます。表には放送プログラムの関係で文化放送・ニッポン放送系と記載した東海ラジオ放送も、中日新聞社の関連会社です。
各業態が総じて大きい金融情勢
そんな豊かな経済情勢にある愛知県ゆえ、県内に本店を構える金融機関だけでも、5業態合わせて45先に及びます。19農業協同組合の24年9月末の貯金量は9兆円を超えて都道府県別残高でトップとなり、単純計算で平均貯金量が5,000億円弱に達します。また、15信用金庫の25年9月末の預金量も18兆円を超え、平均預金量が1兆円を超えます。
こうした規模感のほか、8信用組合のうち6信用組合の本店が名古屋市に集中している一方、15信用金庫のうち名古屋市に本店を置いているのは2信用金庫にとどまるなど、業態による違いもみられます。
その一方で、何よりも特徴的な事項は、県内に本店を置く地方銀行がないことです。そんな状況の下、県内に3行あった第二地方銀行のうち、旧愛知・旧中京銀行が経営統合してあいちフィナンシャルグループ(FG)を設立し、25年元日には傘下の両行が合併してあいち銀行となりました。
名古屋銀行も、28年を目途に静岡銀行(しずおかFG)と経営統合を予定しています。営業地域が重複していないため統合メリットが高いと見込まれている一方、先に挙げたように愛知県内には有力な金融機関がひしめいているため、激しい競争が見込まれます。
名古屋銀行の再編の結果、県内に本店(本社)を置く金融グループはあいちFGだけとなります。そのあいちFGでは、県内の産業動向を踏まえて、取引先に対する支援を実施している模様です。
代表的な取組みとしては、まずもって製造業への支援策が挙げられ、以下のような変遷がみられた模様です。
・経営統合前の旧愛知銀行時代の17年時点で自動車業界OBを行員として採用し、そうした行員を中心とした「現場改善アドバイザー」を本部に設置する形で製造現場の生産性向上支援に着手
・22年に「ものづくり技術サポートチーム」を新設し、支援領域を拡大する形で現場改善・事業計画策定・公的支援策の活用支援までをカバー
・25年4月に事業者業界支援を分離し「モビリティサポートチーム」を立ち上げ
加えて、農業分野の支援も視野に入れているようです。
旧愛知銀行時代の13年には、農林水産省東海農政局と連携協定を締結しています。民間金融機関として地方農政局と提携した初の事例となり、締結後には食品の輸出支援などを実施しているようです(こうしたことについて、長南(ちょうなん)広報グループリーダーに非常に丁寧な説明を受けました)。
競争環境の激化は預金・融資など本業のみならず、こうした支援内容にもさらに広がっていくことでしょう。その意味では他の都道府県以上に、愛知県内金融機関には高いレベルの取り組みが求められることになりそうです。
