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こたえてください支店長~投信窓販における顧客本位を実現するために~

「支店長! 研修は受けたのですが、投信をセールスできる気がしません。慣れるしかないのでしょうか?」

森脇 ゆき
森脇 ゆき
フィデューシャリー・パートナーズ 代表
2026.05.22
会員限定
「支店長! 研修は受けたのですが、投信をセールスできる気がしません。慣れるしかないのでしょうか?」

投信販売に徹底した顧客本位の姿勢が求められる中、現場からは戸惑いや不安の声も聞かれます。若手、ベテランを問わず真のフィデューシャリー・デューティーを実現するにはどうすればいいでしょうか。これまで2000人以上のお客さまに「あなたのための」資産アドバイスを行ってきた株式会社フィデューシャリー・パートナーズの森脇ゆきさんが、皆さんのお悩みに答える連載、第30回目です。

Q:職員「支店長! 研修は受けたのですが、投信をセールスできる気がしません。慣れるしかないのでしょうか?」

A: 支店長「具体的にはどのようなことを心配していますか?」

 

森脇's Answer:

今回も読者さんからの質問を取り上げましたが、これは筆者が金融機関に勤務していた時、支店に配属された新入職員が毎年口にする不安でもありました。確かに慣れが必要という側面もありますが、それ以前に研修が足りないという問題が潜んでいることは少なくありません。

心配の理由を丁寧に尋ねてみると、それは以下の2点に集約できます。一つは商品が分からないということ、もう一つは経済が分からないということです。

基礎的な商品理解で「商品が分からない」を解消

商品が分からないとはどういうことでしょうか。研修で売れ筋商品のいくつかを学べば、当該商品を販売するための商品説明はできるようにはなるでしょう。しかし、実際にお客さまに案内をするとなると、覚えたこと以外の質問をされてしまうと何も答えられない気がする、また覚えた商品以外の商品を保有しているお客さまのフォローも自信がない、という不安の声をよく聞きます。

商品についての学習方法は、目論見書、販売用資料、月次レポート、足りなければ運用レポートを参照して、その商品の特徴を把握することです。すなわち、①株式のみなのか債券のみなのか ②国内のみか海外のみか単一国か複数国か ③通貨は何か(投資対象の資産と通貨は別の場合も多い)④組み入れ銘柄数 ⑤銘柄選定方法 などをしっかり押さえておきましょう。

基礎的な商品理解に思えるかもしれませんが、実はここを踏まえてお客さまに提案できる担当者はそれほど多くありません。リスク分散として複数の商品を案内しているつもりで、その資産の中身がほとんど同じこともあります。お客さまに適切な案内をするためには、商品をきちんと理解することが必要です。商品の学習方法については、2025年4月25日掲載の「こたえてください支店長」の記事を参照してください。

「経済が分からない」ならトレンドと商品特徴の把握を

経済動向について把握しておくことも大切ですが、同時に取扱商品の基準価額がどのように変動しうるかについて考えることも重要です。そのためには、前述の通り各商品の特徴を把握しておくことが欠かせないのです。また、経済動向にはトレンドがあり、つい先日までにぎわっていた話題が、ある時を境に全く取り上げられなくなる、といったことがあります。そのため、経済ニュースは毎日の流れを追っていく必要があります。とはいっても、日々の相場変動はノイズと言われるものが多く、長期投資家を一喜一憂させないようにしたいものです。日経新聞の読み方などは2024年3月26日掲載の「こたえてください支店長」の記事を参照してください。

「ロールプレイング」で心配を打ち消す

知識を得ることは必要なことですが、それだけではお客さまへ上手に案内するのはなかなか難しいものです。そこで、実際のお客さまとのやり取りを想定して、ロールプレイング(以下、ロープレ)をすることをおすすめします。ロープレには大きく分けて三段階あります。

第一段階はコンプライアンス関連を漏れなく案内するものです。これは説明すべきこと、お渡しすべきものを確実に行うために、その動作を覚えるためのトレーニングです。お渡しする書類にどのような意味があるのか、どのくらいの時間をかけて説明すべきかを確認しましょう。

第二段階は商品説明です。これはセールストークの練習ではないことに注意してください。商品を説明するにあたっては、前述した商品の特徴を念頭に起きつつ、お客さまが理解しやすい説明を工夫してください。例えば筆者は、代表的なパッシブファンドとの比較で話すことが多くありました。日本株ファンドであれば、日経225との比較で商品説明をしてみましょう。そうするとお客さまはその商品がどういうものなのかについて容易にイメージすることができ、購入すべきかどうかの判断がしやすくなります。

そして、第三段階はお客さま役からの質問に臨機応変に答えるものです。職場内で役を交代しながらロープレを行ってみてください。簡単な質問だけでなく、返答が難しいと思われる質問も交えるとよいでしょう。多くの担当者は分からない質問をされた際、適当にごまかすような返答をしてしまいがちです。しかし、分からない質問には率直に「分からない」と言えるように徹底してください。

なお、売り方のロープレは不要です。お客さまを知って、商品を学習すれば、あとはお客さまに合った商品を提案すればよいのです。「どのように売るか」を考える必要は本来ないはずなのです。

上司は、本当に役立つ「研修」の活用を

研修状況は金融機関によって大きく違いがあると思いますが、新入職員が現場に配属されて以降は、人手不足のため研修に行かせたくないという上司は少なくありません。もしかしたらそれは、自分自身が実務に役立つ研修に出た経験が少ないからなのかもしれません。実務に沿った研修に作り替えることを本部に提言してください。

また、外部機関の研修を利用するのも一考です。ぜひ、現場の課題などを共有して、より実効性のある研修になるよう働きかけてみてください。参加した職員が大いに学びを得られる研修が充実することを願います。

Q:職員「支店長! 研修は受けたのですが、投信をセールスできる気がしません。慣れるしかないのでしょうか?」

A: 支店長「具体的にはどのようなことを心配していますか?」

 

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森脇 ゆき
もりわき ゆき
フィデューシャリー・パートナーズ 代表
信用金庫の預金業務担当を経て信託銀行に勤務、個人向け資産アドバイスを担当。担当総顧客数は約2000人、不動産・相続相談を含む総合的な資産アドバイスを経験する。深く学ぶにつれて、働く意義、社会貢献、自分にとっての良い仕事とお客さまの最善の利益を追 求するため、独立を決意。2018年、フィデューシャリー・パートナーズを設立。
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