finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
こたえてください支店長~投信窓販における顧客本位を実現するために~

「支店長! 私たちが投資信託を販売する目的は何ですか?」

森脇 ゆき
森脇 ゆき
フィデューシャリー・パートナーズ 代表
2026.02.26
会員限定
「支店長! 私たちが投資信託を販売する目的は何ですか?」

投信販売に徹底した顧客本位の姿勢が求められる中、現場からは戸惑いや不安の声も聞かれます。若手、ベテランを問わず真のフィデューシャリー・デューティーを実現するにはどうすればいいでしょうか。これまで2000人以上のお客さまに「あなたのための」資産アドバイスを行ってきた株式会社フィデューシャリー・パートナーズの森脇ゆきさんが、皆さんのお悩みに答える連載、第27回目です。

Q:職員「支店長! 私たちが投資信託を販売する目的は何ですか?」

A: 支店長「当金融機関の収益を確保し、存続させることです。破綻したらお客さまは困ってしまいますから、ウィンウィンの関係なのですよ」

 

森脇's Answer:

この本質的な質問に対して、読者の皆さんならどのように答えるのかをまずは考えてみてください。

上記の回答を正しいと思った方は少なくないかもしれません。しかし、これは根本的に間違っているのです。もし、この誤りに無自覚なのであれば、次回から正しく回答できるように正解を覚えるなどという対処療法的な方策では到底足りません。必要なのは抜本的な問い直しです。すなわち、現在の自分の認識について知ること、そしてあるべき考え方について改めて思考することです。

本稿では読者の皆さんが顧客本位としてあるべき回答にたどり着くようガイドします。質問への自身の回答を頭の片隅に置きつつ、最後まで読んでみてください。

「お客さま」と「投資」について考える

各種の調査結果を一緒に確認していきましょう。まずは「家計金融資産の推移」(金融庁資料2024年6月5日「今後の金融調整の方向性 資産運用立国の実現に向けて」より)です。2003年から2023年までの20年間の家計金融資産の推移を確認すると、米国3.1倍、英国2.0倍であるのに対し、日本は1.5倍の増加に留まっています。この差は運用リターンによるものが大きく、日本人の資金が投資の市場に流れていないことを表してもいます。

次に確認するのは「金融資産の保有目的」(資産所得倍増に関する基礎資料集 令和4年10月内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局)です。これによると、金融資産の保有目的として「 老後の生活資金」をあげた人が68.5%と最も高く、この他の上位は「教育資金」や「いざというときの備え」となっています。多くの国民がお金にまつわる心配ごとがあることが分かります(これは日々お客さまと接する現場職員の実感とも合致するものでしょう)。

そうであれば、多くの人が資産形成の手段として有効なNISAを利用しているはずです。ところが、実際にはNISA口座を開設して投資をしている人は14.4%(2024年時点)しかいないのです(NISA認知状況「新NISA白書2024」2025年6月日本証券業協会)。

そして最後に確認するのは「アドバイスを受けることでの金融商品の購入意欲」(資産所得倍増に関する基礎資料集 令和4年10月内閣官房「新しい資本主義実現本部事務局」)です。アドバイスを受けたとしてもリスクのある金融商品を購入したいとは思わない、と回答した人は全体の41.3%でした。またその割合が一番小さいのは、高齢者ではなく20代の27%だったのです。逆に言えば、適切なアドバイスがあれば金融商品の購入を検討する余地のある人の方が多いと言えるのです。

筆者の当初の感覚では、7割くらいの人は投資に関するアドバイスを受けたいとは思っていないのではないか、特に若い人ほどその傾向があるかもしれない、と考えていましたが、それを見事に裏切ってくれる結果でした。実は多くの人が相談したい、ということが分かります。

以上のようなデータを眺めてみると、対面金融機関が投資信託を取り扱っていることにどのような意義が見いだせるでしょうか。

あなたは何の仕事しているのですか

ここで一つ、よく知られている例を紹介します。アメリカのNASAで清掃の仕事をしていた職員に「あなたは何の仕事をしているのですか」と尋ねたところ、「人類を月に送る仕事をしています」と答えた、というエピソードです。組織の掲げる遠大な理想が現場職員にも浸透し、実践されている好例と言えます。

読者の皆さんにも同じ質問を投げ掛けたいと思います。金融機関の役職員であるあなたは、この問いにどのように答えますか。

そして、冒頭の問いを振り返りましょう。私たちが投資信託を販売する目的は何ですか。改めて考えてみた今なら、どのように答えるでしょうか。その答えは、あなたの所属している金融機関の「経営理念」が教えてくれているはずなのです。

現場職員と経営陣が目的を共有することの重要性

筆者の実施する研修の多くは顧客本位の浸透や実践に関わるものです。金融機関によって顧客本位の浸透度合いが違いますから、研修前に受講者へのアンケートを実施しています。そこで必ず入れる問いの一つが、今回のテーマと同じ質問なのです。

「貴金融機関で金融商品を取り扱う目的は何ですか。①あなたはどう思いますか? ②自分が所属している部室店の長はどのように思っていますか? ③経営者、社長や理事長はどのように思っていますか? ②と③はあなたから見て、どう思っているように見えるかを書いてください。」というものです。

①の回答は「お客さまの老後の資産形成のため」や「目標達成のため」などばらつきがありますが、②と③については多くの受講者が「自金融機関の利益のため」という趣旨のことを回答します。

これは、支店長をはじめ経営陣の発する顧客本位の方針が現場職員に伝わっていないことを表しています。それどころか、上司・経営者が本気で顧客本位を考えているわけではないと見透かされているのです。このような状態では、具体的な実践の方法を教えても、その効果が低いばかりでなく、顧客本位は建前に過ぎないのだと考えている現場職員を苦しめ、迷わせることになります。

目的地の共有が不十分なまま船出をすれば、その航行がおぼつかないものになることは明らかです。キャプテンが口にする目的地と、実際に見ている方角が異なれば、部下は混乱します。目指す先が分からなければ漕ぐ意欲も湧きませんし、乗組員相互に助け合うこともままなりません。ともすれば遭難してしまいます。

職員全員が迷わずに目的に向かって最善を尽くせるよう、支店長には指針となる北極星を常に指し示しながら部下を導くリーダーシップを期待したいのです。ここまでくれば「目的」が何であるかを語れるはずです。

Q:職員「支店長! 私たちが投資信託を販売する目的は何ですか?」

A: 支店長「当金融機関の収益を確保し、存続させることです。破綻したらお客さまは困ってしまいますから、ウィンウィンの関係なのですよ」

 

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #フィデューシャリー・デューティー
  • #投信窓販
前の記事
「支店長! ノルマから解放されたいです!」
2026.01.23
次の記事
「支店長! お客さまから商品選びを丸投げされてしまいます!」
2026.03.19

この連載の記事一覧

こたえてください支店長~投信窓販における顧客本位を実現するために~

「支店長! お客さまから商品選びを丸投げされてしまいます!」

2026.03.19

「支店長! 私たちが投資信託を販売する目的は何ですか?」

2026.02.26

「支店長! ノルマから解放されたいです!」

2026.01.23

「支店長! 金利が上昇しているのだから預貯金や円保険で十分です! お客さまにリスクの高い投資商品を提案する必要なんてないですよね?」

2025.12.22

「支店長! お客さまへ良い提案をするためのコンサルティング能力はどうやって向上させればいいですか。何に関心を持つべきでしょう」

2025.12.03

「支店長! 高齢者にリスク性商品を販売することは顧客本位から外れませんか?」

2025.10.17

「支店長!融資が第一とおっしゃいますが、投信販売は重要ではないのでしょうか。担当する私たちの仕事が軽視されているように感じます」

2025.09.19

「支店長! 同行訪問していただく際、緊張してうまく話せなくなってしまいます!」

2025.08.22

「支店長! 業績を上げるためにFP資格は必要ですか」

2025.07.18

「支店長! 一般職に投信のセールスをしろとおっしゃいますが、日常業務が忙しくてとても無理です!」

2025.06.20

おすすめの記事

高市色強まる資産運用立国政策、成長戦略会議内でアセットオーナーに積極的リスクテイクを求める声

川辺 和将

マン・グループの洞察シリーズ⑰
生産性のパラドックス:AIはいつ成果をもたらすのか?

日本を再生させるマクロ戦略はあるか? 高市政権ブレーンのエコノミスト会田氏が語る2つの戦術

オルイン編集部

高市政権が掲げる日本経済再生のマクロ戦略の内実とは? 高市政権ブレーンの会田卓司氏が解説

オルイン編集部

SBI証券の売れ筋にみえる米大型ハイテク株相場再来への期待、「FANG+」や「S&P500」の人気復調

finasee Pro 編集部

著者情報

森脇 ゆき
もりわき ゆき
フィデューシャリー・パートナーズ 代表
信用金庫の預金業務担当を経て信託銀行に勤務、個人向け資産アドバイスを担当。担当総顧客数は約2000人、不動産・相続相談を含む総合的な資産アドバイスを経験する。深く学ぶにつれて、働く意義、社会貢献、自分にとっての良い仕事とお客さまの最善の利益を追 求するため、独立を決意。2018年、フィデューシャリー・パートナーズを設立。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
「支店長! お客さまから商品選びを丸投げされてしまいます!」
騒動中の就活の末――損保ジャパン社長が396人の新入社員に語ったこと
SBI証券の売れ筋にみえる米大型ハイテク株相場再来への期待、「FANG+」や「S&P500」の人気復調
高市色強まる資産運用立国政策、成長戦略会議内でアセットオーナーに積極的リスクテイクを求める声
フィデリティ・ジャパンの蔵元康雄副会長に聞く
日本に必要なPlowback(再投資)の発想 ファンドマネジャーに確固たる投資哲学を
福岡銀行の売れ筋上位は米大型ハイテク株に強気、国内株ファンドで人気集める「スパークス」とは? 
楽天証券の売れ筋が不変、株価大幅下落を受けても株式インデックスファンドが上位から動かず
【みさき透】ファイナンシャル・ウェルビーイング企業の支援で運用立国の高度化を、今夏の「新金融戦略」に向け議連で検討も
プライベートクレジットと解約設計の整合性を問う
広島銀行の売れ筋トップを独走する「ポラリス」と第2位を継続する「世界経済インデックスファンド」の魅力
騒動中の就活の末――損保ジャパン社長が396人の新入社員に語ったこと
総合証券モデルの利点は残し、それ以上の価値を生む「合弁会社設立」から見えてくるグループの覚悟 case of 三井住友フィナンシャルグループ/ SMBC日興証券
マン・グループの洞察シリーズ⑰
生産性のパラドックス:AIはいつ成果をもたらすのか?
SBI証券の売れ筋にみえる米大型ハイテク株相場再来への期待、「FANG+」や「S&P500」の人気復調
こどもNISAと「NISA貧乏」――「投資枠」ではなく「初動率」をいかに上げるか
米国の年金でも浸透する暗号資産 ブロックチェーン技術が投資にもたらす可能性とは?
高市政権が掲げる日本経済再生のマクロ戦略の内実とは? 高市政権ブレーンの会田卓司氏が解説
「支店長! お客さまから商品選びを丸投げされてしまいます!」
高市色強まる資産運用立国政策、成長戦略会議内でアセットオーナーに積極的リスクテイクを求める声
マネックス証券で国内株インデックスファンドがランクアップ、「世界のベスト」はタイムリーな情報発信も評価
騒動中の就活の末――損保ジャパン社長が396人の新入社員に語ったこと
佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」
第18回:40年ぶりの運賃区分統合実施!JR東日本の運賃改定が各セクターに及ぼす影響は?
「支店長! お客さまから商品選びを丸投げされてしまいます!」
広島銀行の売れ筋トップを独走する「ポラリス」と第2位を継続する「世界経済インデックスファンド」の魅力
事業会社から最も評価が高い運用会社はどこか?Extel社の調査結果に見る日本市場の「360度評価」
こどもNISAと「NISA貧乏」――「投資枠」ではなく「初動率」をいかに上げるか
SBI証券で売れ筋上位は変わらず、イラン紛争の長期化懸念でアクティブファンドにも出番
長期金利の急上昇が話題になった日本国債発行体である財務省国債企画課は市場をどう見ているのか【前編】
【みさき透】ファイナンシャル・ウェルビーイング企業の支援で運用立国の高度化を、今夏の「新金融戦略」に向け議連で検討も
浜銀TT証券の売れ筋トップ10は半数入れ替わり、「日本バリューアップ」「日本ナンバーワン」など日本株ファンドが躍進
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2026 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら