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こたえてください支店長~投信窓販における顧客本位を実現するために~

「支店長! ノルマから解放されたいです!」

森脇 ゆき
森脇 ゆき
フィデューシャリー・パートナーズ 代表
2026.01.23
会員限定
「支店長! ノルマから解放されたいです!」

投信販売に徹底した顧客本位の姿勢が求められる中、現場からは戸惑いや不安の声も聞かれます。若手、ベテランを問わず真のフィデューシャリー・デューティーを実現するにはどうすればいいでしょうか。これまで2000人以上のお客さまに「あなたのための」資産アドバイスを行ってきた株式会社フィデューシャリー・パートナーズの森脇ゆきさんが、皆さんのお悩みに答える連載、第27回目です。

Q:職員「支店長! ノルマから解放されたいです!」

A: 支店長「ノルマというものはなく、あくまで目標ですよ。目標達成できるよう頑張ってください」

 

森脇's Answer:

営業職員に目標が課されていることはよくあることです。本来、目標とノルマは意味合いが違うにも関わらず、実際には目標という名のノルマ、すなわち職員に強制し、管理をする金融機関はまだまだあるようです。「ノルマではなく目標だから問題ない」などとは言えません。そこで、本稿ではノルマではなく目標という言葉を使い、適切な目標の管理体制について言及していきます。

目標というものをどう考えるか

目標とは、目的達成のための参照点です。では、目的とは何か。それは筆者が語ることではなく、各金融機関が掲げているもの、すなわち経営理念です。目標はそのための手段に過ぎません。

保険や投資商品に限らず、金融機関で扱うさまざまな商品・サービスにはニーズがあります。多くのお客さまが「いざという時のお金が心配」「老後資金が不安」と口癖のようにおっしゃるのを毎日聞いているでしょう。あまりに日常のことなので、意識しなくなっているかもしれませんが、私たちにはこの心配を軽減したり解消したりすることができるのです。

営業目標を課され、「お客から取ってこい!」と上司に言われると「こんな嫌な仕事はしたくない」と思ってしまうものです。ですが、よく考えるとニーズがあるのです。地道にニーズ喚起をしていけば、お客さまに喜んでいただく商品提案はできます。そのように考え方を切り替えて活動すれば、気持ちは軽くなるのではないでしょうか。前向きな気持ちで接すれば、それがお客さまへも伝わり、成約率はあがると思います。

まずは顧客リストを探索してみましょう。ニーズのあるお客さまをどのように探すか、どのようにしてメリットを届けられるかを考えます。顧客リストの上位から当たることを繰り返していると、大口の取引先ばかりに折衝が集中してしまいます。同じ顔ぶれのお客さまばかりだと、お願い営業をすることになってしまうでしょう。リストの下位あるいは中間層に連絡してみたり、推進したい商品をまだ保有していないお客さまに絞って活動してみたりなど、いろいろな工夫の仕方があります。多くのお客さまへ金融という手段を届けようと思えば、大口顧客ばかりに頼った営業はしなくなります。幅広いお客さまにアプローチすることで、前任者からの引継ぎではない新たな大口顧客やファンを開拓することもできます。筆者はこのような活動を、「豊かな畑を作るための土づくり」と言っています。活動量は増えますが、既存顧客の乗換営業やお願い営業とは異なり、とても充実感があります。お客さまから「ありがとう」と言ってもらえる契約が増えてくるでしょう。適正な目標があれば、計画的な行動が促され、なるべく多くのお客さまに提案できるよう時間や行動に創意工夫も生まれます。

目標達成に無理がある場合

しかし、どう頑張っても達成できない目標というのも存在します。無理に達成しようとすると、顧客の利益を損ねる可能性もあります。例えば以下のような目標です。数値が過大である目標。自分の信条に反するように思える商品に関する目標。説明ができない商品に関する目標。

明らかに過大な数値目標は、それを達成するためにはお願い営業したり、不要な商品契約をさせたりしなければなりません。それでは経営理念に背くことになります。

自身の信条に合わない商品や説明のできない商品については、自分の勉強不足の可能性もありますので、実際に販売している担当者に教わってみてください。疑問があればどんどん質問しましょう。もし質問をぶつけてみても重要な点をはぐらかされてしまい、疑問が解消されないようであれば、そのような商品は販売しなくて良いのです。むしろ販売することのほうが問題です。

販売せよと指示されているものを販売しないという決断は辛いものだと思います。厳しい評価が下されたり、後ろ指を指されたりするかもしれません。しかし、それは経営理念に従っているにすぎません。筆者はデスクに経営理念を置いて、常に参照しながら仕事をしていました。上司が変わろうが、支店長が変わろうが、経営理念はそう頻繁には変わりません。それは広い視野で仕事に向き合っているということなのです。

ブロニー・ウェア著『死ぬ瞬間の5つの後悔』(新潮社、2012年)によると、死ぬ瞬間に後悔することトップ5は「自分に正直な人生を生きればよかった」「働きすぎなければよかった」「思い切って自分の気持ちを伝えればよかった」「友人と連絡を取り続ければよかった」「幸せをあきらめなければよかった」です。人生の終わりに「もっと営業成績を上げて、社内で評価されたかった」と思う人はあまりいないようです。

たとえトップの成績を上げたとしても、顧客本位でない活動であれば、社会に創出した価値はありません。自身の成長もありません。顧客本位で真摯にお客さまと向き合う提案活動を繰り返していけば、豊かな経験と着実な成長があります。自分の価値を決して落とさないでください。

顧客本位で活動している金融機関の職員は日本全国津々浦々必ずいます。そういった人々がつないできた信頼の糸が今日の対面金融を支えていると言っていいでしょう。金融機関が長らくお客さまから信頼されているのは、お客さまと接している担当者がつないできたものなのです。

ただひとつ約束してほしいことがあります。信念を貫こうとしたときに、あなたの心身に無理が生じるようであれば、パワーハラスメントが疑われます。自分を守るために、環境を変える行動をしてください。

支店長の役割

適度な目標は活動にメリハリを与え、やりがいも生まれます。ただ、目標に過大なところがないかよく確認してください。支店の顧客状況を分析して、本部とも連携をとりつつ検討する必要があります。

目標達成の方法を指南する際には「とにかくお客さまにお願いして」ではなく、仕事の目的と手段を常に共有してみてください。ただ「やれ」と言われても、その意味や価値が分からなければ、積極的に動く気持ちになりません。まずは丁寧にその活動の意義を説明し、内発的動機に働きかけてみてください。また、顧客リストをいかに有効活用するかについても指示してください。自分に営業の経験が乏しければ、詳しい職員とリストの使い方について会議するところから始めてみてください。

経営層が、常日頃から経営理念を業務に重ね合わせて繰り返し語ることは、職員のエンゲージメントを高めるはずです。お客さまに価値を提供することが仕事であるという意識が浸透すれば、現場の士気は高まるでしょう。そしてこのとき、目標に積極的な意味が見出されるようになるのです。

Q:職員「支店長! ノルマから解放されたいです!」

A: 支店長「ノルマというものはなく、あくまで目標ですよ。目標達成できるよう頑張ってください」

 

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finasee Pro 編集部

著者情報

森脇 ゆき
もりわき ゆき
フィデューシャリー・パートナーズ 代表
信用金庫の預金業務担当を経て信託銀行に勤務、個人向け資産アドバイスを担当。担当総顧客数は約2000人、不動産・相続相談を含む総合的な資産アドバイスを経験する。深く学ぶにつれて、働く意義、社会貢献、自分にとっての良い仕事とお客さまの最善の利益を追 求するため、独立を決意。2018年、フィデューシャリー・パートナーズを設立。
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