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笛吹けど踊らぬ“あの話”がついに動き出す?「高市一強」時代に金融庁が攻勢に出る5領域とは

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2026.02.16
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笛吹けど踊らぬ“あの話”がついに動き出す?「高市一強」時代に金融庁が攻勢に出る5領域とは

衆院選で自民党が単独で3分の2超を獲得し、高市早苗首相は強固な政権基盤を築きました。野党が国会で劣勢となるだけでなく自民党内でも官邸に逆らう動きが封じられる「1強」時代の到来は、金融庁の政策運営にも大きな影響を及ぼすことになりそうです。笛吹けど踊らずの停滞状態が続いてきたあの議論も、ここに来てついに動き出すかもしれません。筆者が注目する5つのポイントを解説します。

地銀再編の機運が再燃?

金融庁は昨年12月に策定した「地域金融力強化プラン」で、金融機能強化法の改正によって、地銀再編のインセンティブとなっている資金交付制度を延長・拡充する方向性を打ち出しました。

あわせてプランでは、全国の金融機関に対し、銀行の本業である融資だけではなく、DX、M&A、事業承継の支援や人材紹介など多方面から総合的に地域企業を支えるよう求めています。

 

一見すると、地域金融機関の存在意義を前向きに強調しているようにもみえますが、従前からリソース面の課題を抱える地域金融機関にとって、これでもかとプランに盛り込まれた「期待される役割」の数々はプレッシャーに他なりません。「政府が求める『地域金融力』の発揮に対応する余裕がないなら、他行との合併を含めて対策を考えよ」と強引に迫るニュアンスをにじませています。

 

プラン策定に至る議論の過程では、「地銀再編を強引に進めようとすれば各地の選出議員による横槍が入るだろうが、今の金融庁にそれをはねのける力はない」(当局OB)と、プランの実効性を疑問視する声も聞こえていました。しかし、高市早苗首相の下でいっそう求心力を高める片山さつき財務相兼金融担当相が「一強」のアドバンテージを利用し、プランの成果を政権の実績に結び付ける思惑をもって、地銀再編への働きかけを強める可能性は否定できないでしょう。

 

生保業界に攻勢強めるか

保険分野もまた、族議員の影響力が大きい業界として知られます。一強時代には、金融庁内で長年蓄積されてきた「鬱憤」を推進力としつつ、規制強化の動きがいっそう加速するかもしれません。

損害保険については、ビッグモーターでの不正請求問題など不祥事案を契機として、代理店と保険会社の関係性の健全化を含めてここ数年間で集中的に議論が進み、生保側を含めた法律や監督指針の改正に至り、既に騒動の余波は一段落しています。

しかし足元ではプルデンシャル生命での不適切な金銭授受事案が注目を集め、国内系でも不祥事が相次いで露見しています。金融庁は今夏の大規模な組織改編で、「資産運用・保険監督局」の創設を予定。庁内からは、「これまで保険業界については透明性の向上など働きかけてきたが、他業界に比べて抵抗が大きく、忸怩たる思いをつのらせる幹部は少なくない」(金融庁中堅職員)といった声も聞こえます。損害保険の規制強化の機運が生保側に本格的に飛び火するのは、これからかもしれません。

 

「プリンシプルベース」の反動加速

他の業界にとってもプルデンシャル生命の騒動は対岸の火事ではなく、横断的なルール強化を警戒する必要がありそうです。

当局は一時期、罰則規定などのルールに依存することなく、おおまかな行動規範(プリンシプル)を示して事業者の自主性を尊重する「プリンシプルベース行政」の比重を高めていました。

しかし数年前、複雑な仕組債の不適切な販売の問題が注目を集めて以来、プリンシプル一辺倒ではなくルール「ベストミックス」の考え方への回帰が見受けられます。この反動的な流れを象徴しているのが、「顧客本位の業務運営に関する原則」(FD原則)の一項目を金融サービス提供法内のルールに移行して生まれた「最善利益勘案義務」の創設です。

高市政権が次に選挙の季節を迎えるまでには数年単位の猶予があり、強固な政権基盤を維持しているうちにFD原則の再改定に向けた議論が始まれば、保険業界での一連の不祥事を踏まえ、業界横断的な規制強化の議論にまたしても結び付く可能性が否めないところです。年金、保険会社などアセットオーナー向けに策定した現行プリンシプルについても、露骨なルール移行は考えにくいものの、リスク水準の引き上げや国内投資促進への間接的な働きかけを強めるかもしれません。

 

金融データ連携、サービス仲介業法見直しも前進の兆し

昨年、政府のデジタル行財政改革会議では、金融分野のデータの連携が議題に上りました。銀行口座やクレジットカード、電子マネー、証券、保険、年金などのデータを連携して一つのアプリやサービスに集約することで、一人一人が自らの状況を簡単に把握できる仕組みを作る構想が持ち上がったのです。

この壮大な構想を実現するためには、保険業界を含め各業界、そして個人情報保護委員会など関係機関の理解を得る必要があり、当時の議論はやや現実味を欠いていましたが、今の官邸が本腰を入れれば潮流が変わるかもしれません。銀行が他の事業者とのデータ連携を容易にするオープンAPIの取り組みについても、現在の努力義務より強制力のあるルールへと作り替える検討も前進する可能性が強まりました。

 

金融サービス仲介業については、登録を受けた事業者が取り扱うことができる保険商品の選択肢が少なすぎるといった制約を背景に、制度の利用は低迷しています。仮に金融庁が、一部事業者の不祥事を足掛かりとして生保業界全体に対する発言力を高める状況となれば、対象商品の範囲拡大に一歩近づくかもしれません。

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著者情報

川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
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