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プライベートクレジットと解約設計の整合性を問う

木村 大樹
木村 大樹
Keyaki Capital代表取締役CEO
2026.03.06
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プライベートクレジットと解約設計の整合性を問う

世の中には、多額の資産を運用する年金基金や機関投資家など、一部の限られた投資家にしかアクセスできない投資対象資産が少なくない。オルタナティブ投資(代替投資)と呼ばれる資産もその一つだ。株式や債券といった伝統的な資産クラスの代替として広く注目を集めており、近年は個人投資家にもその投資機会が創出されつつある。そんなオルタナティブ投資の「民主化」に情熱を注ぐKeyaki Capital代表・木村大樹氏が “世界の運用のプロ”の視点を個人投資家が活かすためのヒントを分かりやすく解説する。今回は、話題となっている米プライベートクレジットの解約停止問題の本質について。

価格ではなく「設計」を考える局面にある

近年、個人投資家向けにプライベートアセットへのアクセスを提供する商品が増えてきました。

機関投資家中心だった非流動資産がより広い投資家層に開かれつつあること自体は、市場の成熟という観点から見て前向きな動きと言えるでしょう。

一方で、海外では個人向けプライベートクレジットファンドにおける資金流出の増加や解約停止といった事例も報じられています。価格や信用状況の変化が議論の中心になりがちですが、今回の出来事を単なる市況の変動として捉えるだけでは十分ではありません。

むしろ、非流動資産に流動性を付与するという設計そのものが、どのような前提の上に成り立っているのかを問い直す局面にあるのではないでしょうか。

プライベートクレジットの特性

プライベートクレジットは本来、長期資金を前提とした非流動資産です。価格は日々の市場取引によって形成されるものではなく、一定期間ごとの評価に基づいて算出されます。

そのため、定期的な解約性を付与する設計を採る場合には、評価価格と資金の出入りとの間にどのような整合性を持たせるのかという問題が生じます。

通常時においては、この構造的な問題は表面化しにくいものです。評価価格と実際の換金可能価格に大きな乖離(かいり)が生じなければ、解約請求も管理可能な範囲に収まります。

しかし、市場環境が変化し、投資家心理が揺らいだ局面では、評価と流動性の前提が同時に試されることになります。

価格が正しいかどうかではない

今回の事象を、単純に「クレジットの悪化により価格が下落したから問題が起きた」と理解するのは適切ではありません。上場市場の価格が過度に反応している可能性もあれば、非上場評価が実状を反映していない可能性もあります。

重要なのは、どちらの価格が正しいかという二元論ではなく、評価価格を基準とした解約制度が整合的に設計されているかどうかです。

解約設計が機能するための条件

非流動資産に定期的な解約性を付与する設計は、一定の条件が満たされている場合にのみ安定的に機能します。

第一に、保有資産全体の換金可能性が確保されていること。

第二に、評価価格が投資家にとって合理的に受け入れられる水準であること。

第三に、解約規模が制度設計上の想定範囲に収まること。

これらの前提が揺らいだとき、この制度は急速に緊張状態に置かれることになります。

日本市場において考えるべきこと

日本で販売されたプライベートクレジットファンドにおいては、現時点で解約停止事例が広がっているわけではなさそうです。したがって、今回の動きをただちに国内市場に当てはめるのは適切ではありません。

しかし、個人投資家への非流動資産の提供が今後さらに広がるとすれば、流動性設計の前提をどこまで説明し、理解を得ているかという論点は避けて通れないでしょう。

いま求められている視点

非流動資産への投資には、本来、資産の回収期間やキャッシュフローの特性に応じた資金設計が求められます。流動性を付与する場合には、その利便性と引き換えに何が前提となっているのかを明確にする必要があります。

価格や利回りの水準に目を奪われる前に、制度設計そのものの整合性を問い直すことが、いま求められているのではないでしょうか。

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著者情報

木村 大樹
きむら たいき
Keyaki Capital代表取締役CEO
野村證券でオルタナティブ商品の営業に従事した後、ニューヨークで証券化ビジネスに携わり、サブプライム危機に直面しながら問題解決に努める。帰国後はバークレイズ証券を経て、2012年にシティグループ証券の年金ソリューション部長、2015年からはマッコーリー・インベストメント・マネジメント日本代表。2020年に個人に公開されていない世界中のプライベートアセットへの投資機会を、充実感と高揚感に満ちた投資体験として提供するKeyaki Capitalを創業。一橋大学経済学部卒。
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