(写真:昨年12月24日のSBIホールディングスとの資本業務提携終了が大きな注目を集めた筑邦銀行本店[福岡県久留米市]、筆者撮影)
1月29日、J.フロントリテイリング傘下のPARCOが、福岡PARCOの2027年2月末での閉店を発表。福岡県のみならず九州中に驚きが広がりました。
現在の福岡PARCO本館は、2002年の倒産を機に伊勢丹(現:三越伊勢丹ホールディングス)傘下に入った岩田屋の旧本館ビルを、2010年に改装して出店。2025年2月期の(売上高に相当する)テナント取扱高が前期比で112%となる272億7,400万円と過去最高に達していただけに、閉店発表に唐突感を覚える向きも少なくありませんでした。
岩田屋の旧本店は、戦前の1936年に開業し、今年で90年に達します。J.フロントリテイリング側は、閉店の理由を、建物老朽化に伴う解体・大型複合ビルへの再開発としています。とはいえ2010年の改装時点で既に74年が経過していたことになるため、この理由づけには違和感も残ります。
複数の現地在住者からは、『鍵は“天神ビッグバン”にあるのではないか』といった声が聞こえてきます。天神ビッグバンというのは、ローカル局のアナウンサー出身の高島宗一郎・福岡市長の下で、福岡市が2015年から主導している天神地区の都市再開発誘導事業です。天神地区は直線距離約5キロメートルに福岡空港が設置されているため、航空法に基づく建物の高さ制限があるところ、規制の特例承認や市独自の容積率緩和制度により、高層建築を認めることを中核とした政策です。
この政策は数多くの再開発をもたらしたため、建設・不動産業界にとってまたとない「神風」になりました。
福岡PARCOの福岡県道602号(渡辺通り)を挟んだ真向いには、昨年4月、西日本鉄道が本社ビルを兼ねたONE FUKUOKA BLD.(通称:ワンビル)が建てられています。ホテルやレストランを含む複合施設で、開業当初は大変な行列になったとのことで、向かいのPARCOも相応に影響を与えた可能性はあるでしょう。
昨年11月には、5年ぶりの日本一に輝いた福岡ソフトバンクホークスによる優勝の祝賀パレードが福岡の中心部で開催され、九州中から多くの人が集まりました。ここからは地方部の代表的な中核都市として、全国的な話題を提供し続けている福岡県の金融機関の動向について、ポイントを簡単に解説することにしましょう。
地区内で一人勝ちの人口動態
福岡県の面積は4,988㎢。都道府県順で29位と、決して広い方ではありません。そんな地域内で、第一次~第三次産業がいずれも相応の存在感を示しています。
個別の事項では、農林水産業関係で北九州市の合馬地区ほかでのタケノコの生産量で全国1位、製造業関係で大川地区ほかでの木製棚・戸棚・箪笥の出荷額が全国1位の模様です。これら各々を金融機関機能が、裏側で支える構図が容易に推察できます。
こうした経済活動の基盤となるのは何と言っても人口です。
2月3日に総務省が公表した25年の住民基本台帳の人口移動報告によると、福岡県は九州・沖縄地区で唯一、国内転入者が転出者を上回る転入超過となりました。超過人数も、24年の4,160人を約1,000人上回っています。九州・沖縄ブロックでは一人勝ちの状態にあると言えそうです。
福岡県の主要計数
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分類 |
都道府県 順位 |
出典 |
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人口 |
8位 |
人口推計(2024年) |
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農業産出額 |
19位 |
生産農業所得統計(2024年) |
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製造品出荷額等 |
10位 |
経済詮索-活動調査(2021年) |
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小売業年間販売額 |
8位 |
同上 |
「販売業の福岡市」と「製造業の北九州・久留米市」
そんな福岡県はかねてより、非常に多くの著名人を輩出し続けており、以下の表の対象外とした学者・スポーツ選手なども非常に多くの出身者が活躍し続けています。
分野 県内出身者・事業者[敬称略]
政治 麻生太郎(元首相)、笠浩史(元文部科学副大臣。元文部科学大臣政務官)、武田良太(元総務大臣)
経済 ベスト電器(福岡市)、トライアルホールディングス(福岡市)、ミスターマックス・ホールディングス(福岡市)、コスモス薬品(福岡市)、力の源ホールディングス(福岡市)、日本タングステン(福岡市)、マルタイ(福岡市)、ピエトロ(福岡市)、キューサイプロダクツ(福岡市)
TOTO(北九州市)、安川電機(北九州市)、ゼンリン(北九州市)
ムーンスター(久留米市)、アサヒシューズ(久留米市)、梅の花グループ(久留米市)、丸永製菓(久留米市)
麻生(飯塚市)
芸能など タモリ、小柳ルミ子、井上陽水、松田聖子、徳永英明、森口博子、樽美酒研二(ゴールデンボンバー)、浜崎あゆみ、イッセー尾形、藤吉久美子、陣内孝則、酒井法子(のりピー)、妻夫木聡、蒼井優、池松壮亮、橋本環奈、高杉真宙、今田美桜、バカリズム、吉田羊、博多華丸・大吉、吉瀬美智子、竹山隆範(カンニング)、池田エライザ、なかやまきんに君、吉住、小峠英二(バイきんぐ)、ぐんぴぃ(春とヒコーキ)、氷川きよし、IKKO
メディア 西日本新聞社、福岡県民新聞社、糸島新聞社、有明新報社、九建日報社、HUNTER
福岡放送(日本テレビ系)、RKB毎日放送(TBS系)、テレビ西日本(フジテレビ系)、九州朝日放送[テレビ朝日系]、TVQ九州[テレビ東京系]
KBCラジオ(文化放送・ニッポン放送系)、エフエム福岡(エフエム東京系)、CROSS FM(独立系)、ラブエフエム国際放送(独立系)
事業者も自ずと多くが集まり、一大都市圏を形成しているため、図表の経済欄では、県内に本社を置く知名度の高い事業者だけを優先抽出しました。電力・ガス・公共交通のみならず、他の都道府県に本社を置く事業者の子会社や(ブリヂストンのマザープラントである久留米工場など)事業者の生産・流通拠点までは載せ切れませんでしたが、“全国ネーム”が目白押しです。
ごく大まかに言えば、福岡市内では販売業や食品加工、北九州市や久留米市では製造業が多くを占めています。静岡県の静岡市と浜松市・富士市との関係と、よく似ているかもしれません。
メディア分野でも、全国的には珍しいテレビ東京系のローカルテレビ局があるなど独自色が見られます。北九州市に本社を置くCROSS FMは、23年9月に堀江貴文(ホリエモン)が株式の45%を持つ共同オーナーとなり、個性的な放送を実施しているようです。
あらゆる業態がみられる金融情勢
九州ブロック経済圏の“首都”である福岡県は、福岡市ほか拠点都市の求心力が極めて強い実情が認められます。このため、県外資本である銀行も国内22行[都市銀行4行・信託銀行4行・旧長期信用銀行2行・地方銀行8行・第二地方銀行4行]だけでなく、外国銀行3行[ハナ・SBJ・玉山]までが進出しています。
県内金融機関は5業態の37先となっており、20先に及ぶ農業協同組合の多さが特徴的です。これら農協が預け入れるJA福岡信連の昨年9月末の貯金量だけでも2兆1,673億円に及び、同時期の預金残高が8,112億円であった筑邦銀行の約2.7倍に達しています。
県内に本店を構える預貯金取扱金融機関[順不同]
業態 内訳[本店所在地]
銀行[5] 福岡[福岡市]、西日本シティ[福岡市]、筑邦[久留米市]、北九州[北九州市]、福岡中央[福岡市]
信用金庫[8] 福岡[福岡市]、福岡ひびき[北九州市]、大牟田柳川[大牟田市]、筑後[久留米市]、飯塚[飯塚市]、田川[田川市]、大川[大川市]、遠賀[遠賀郡水巻町]
信用組合[3] 福岡県庁[福岡市]、福岡県医師[福岡市]、福岡県[福岡市]
労働金庫[1] 九州労働金庫[福岡市]
農業協同組合[20] くるめ[久留米市]、たがわ[田川市]、にじ[うきは市]、ふくおか八女[八女市]、ふくおか嘉穂[飯塚市]、みい[小郡市]、みづま[久留米市]、みなみ筑後[みやま市]、むなかた[宗像市]、北九[北九州市]、柳川[柳川市]、直鞍[直方市]、福岡京築[豊前市]、福岡大城[三潴郡大木町]、福岡市[福岡市]、福岡市東部[福岡市]、筑前あさくら[朝倉市]、筑紫[筑紫野市]、粕屋[糟屋郡粕屋町]、糸島[糸島市]
近時、最も注目を集めた動向といえば、20年1月にSBIホールディングスが筑邦銀行との資本業務提携を公表した後、昨年12月24日に終了に至ったという出来事でしょう。SBIホールディングスが掲げる“第4のメガバンク”構想からの初の離脱ということもあり、全国紙、キー局でも大きく報じられました。筑邦銀行の株価自体は終値ベースで発表当日の1,638円が2月13日には1,940円まで上昇基調で推移しているので、市場からの信任は得られている模様です。
信用金庫業界では、一時は合併を予定していた筑後信用金庫と大川信用金庫が、システム統合に関するハードルの高さを理由に、11年5月に破談に至っています。
信用組合業界は、職域信用組合の福岡県庁、業域信用組合の福岡県医師、地域信用組合の福岡県が1つずつに集約されています。このうち福岡県医師信用組合は、全国でも珍しい信組情報サービス(SKC)の共同センターに加盟していない信用組合です。
県内の中心金融機関は、熊本・十八親和・福岡中央銀行とインターネット銀行のみんなの銀行とともに、全国一の総資産を誇る地方銀行グループ「ふくおかフィナンシャルグループ(以下「FFG」)を形成している福岡銀行です。単体での25年9月末の預金残高は前年比38億円増の13兆4,534億円と、首都圏の横浜・千葉銀行に続く全国3位の規模を誇っています。
FFG単位では、熊本県に本店を置く熊本銀行、長崎県の十八親和銀行を抱えたことから、福岡県のみならずこれらの地域への活性化にも本格的に向き合うことになりました。傘下のiBankマーケティングでは地域総合商社事業の一環として、エンドユーザー向けのオンラインストア“エンニチ”を20年1月から運営しています。
26年2月15日現在の出品数は、長崎の波佐見焼や熊本のオリーブオイルなど895点に及んでいます。24年度で一番アクセスが多かった月には、36万ものアクセス数があったとのことですので、すでに相応の経済効果がもたらされていると考えて差し支えないでしょう。
