日本証券業協会は5月27日の理事会で7月にスタートする新役員体制案を取りまとめました。療養中の日比野隆司会長は続投。11年間にわたり常任理事を務めた岳野万里夫副会長は退任し、後任に前金融庁企画市場局長の油布志行氏が就任します。新任の役員候補には、金融経済教育推進機構(J-FLEC)の創設に携わったキーパーソンらが名を連ねました。
理事会後に開かれた記者会見で、岳野副会長は、初期がんの治療のため療養中の日比野会長の病状に言及。「足元、根治に向けた治療は終盤に入ってきており、治療は順調に進んでいると伺っている。新事務年度の最初の記者会見に出席できるよう回復に努めるとのメッセージをお預かりしている」と説明しました。
新役員体制案では、常任監事としてJ-FLECの島村昌征・教育企画部長を新任。島村氏は元日証協常務執行役で、岳野氏は「立ち上げの際に協会側の代表としてチームを連れて2年間、J-FLECで頑張ってきた」と評価しています。
大半の役員は再任となり、一部新任のメンバーも基本的に業界内のローテーション通りの動きにとどまる見通しです。
ただ、金融・証券教育支援委員会公益委員に就く日本IBM特別顧問の高口博英氏(元日本銀行理事)については、委員の席自体を規定の限度枠内で増やして新任する形です。岳野副会長は「元日銀理事として、J-FLEC創設時の取りまとめに大変活躍された方。J-FLECを応援する立場で議論に参加いただこうと、定数に空きがあったので、どなたかの交代ではなく、純粋に1人追加という形での新任となった」と説明しました。
岳野副会長は自身の退任にあたり「副会長として会長を支え、職員の皆さんと一緒に協会のミッションである証券業の健全な発展と投資者保護に向けて一生懸命、職責を果たすよう努力してきた」と述懐。後任に対しては、「引き続き証券業協会あるいは証券業の果たす役割、最終的には国民経済の健全な発展と投資者保護の目的に向けて、持ち場持ち場でそれぞれのミッションを果たして頑張っていただきたい。松尾副会長と連携して、日比野会長を支えていってほしい」とエールを送りました。
"銀証の壁"更なる緩和は「慎重な対応が必要では」
岸田文雄元首相が率いる資産運用立国議員連盟は今月取りまとめた提言に、「銀証ファイアーウォール規制等の見直し」を盛り込んでいました。協会としてのスタンスを問われた松尾元信副会長は、資産運用立国議連の提言が適切な顧客情報管理や不適切行為に対する厳格なペナルティーを前提としている点を強調。その上で、次のように述べました。
「少し前の大手金融グループに対する処分事例では、顧客の意向に反してグループ会社間で顧客の非公開情報が授受された事案がベースになっているという面もある。欧米では不正行為に対して強い経営責任の追及、極めて重い金銭的制裁など、厳格な罰則が科されるなどの面もある。こうした点も踏まえて慎重に対応していく必要があるのではないか」
「銀証ファイアーウォール規制については2022年に抜本的に緩和され、大企業についてはオプトアウトしない限り、グループ内での情報共有が原則として自由化されていることを議論の前提として確認しておく必要があるのではないか」
また、政府は米アンソロピック社が開発した新型AI「ミュトス」を悪用したサイバー攻撃に対処するための作業部会を5月に設置。日証協や全国銀行協会など主要業界団体が参画しています。松尾副会長は「従来は脆弱性が発見されても攻撃が実際に行われるまでのリードタイムがある程度あったが、そうした時間的猶予が非常に短くなることで、これまでのような予防策や改善策がどこまで有効かが問題になってくる」と指摘。「証券を含めた金融システムは経済活動を支える重要な社会インフラであり、作業部会の議論に参画しながら会員と一体となって危険性に対処していきたい。情報を迅速に共有する。改善策が色々なところから出ることになるので、迅速にそれを検証しながら採用していくところもポイントになる」と述べました。
