地域金融機関は「資本性資金供給などエンゲージメント強化を」
片山さつき金融担当相が会長を務める分科会の正式名称は、「新戦略策定のための資産運用立国推進分科会」。岸田政権下で設置された新しい資本主義実現会議傘下の旧「資産運用立国推進分科会」の議論を形式上は引き継ぎつつも、前置きが示す通り、資産運用立国政策はあくまで新たな戦略を実現する手段であるとのスタンスを打ち出しています。
設置以来、分科会は足元(4月上旬)まで計3回の会合を開いています。1月の初会合では、年末に政府が策定した「地域金融力強化プラン」を取り上げ、全国の企業の成長を後押しする地域金融機関の役割について専門家らが意見を交わしました。
ある委員は「地域の上場企業では、優れた事業を行っているにもかかわらず、時価総額の小ささ等の要因から機関投資家の投資対象のスコープに入らず、バリュエーションが低いまま放置されているケースもある」と指摘。「こうした地域の上場企業について、地域金融機関が資本性資金の供給などを組み合わせてエンゲージメントを強化することによって、地域企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現するためのベストパートナーになることができるのではないかと期待している」と述べました。
3月に開かれた第2回会合では、現政権が策定した17の戦略分野を中心とした成長投資と、「資産運用立国」路線との融合を目指す方向性がさらに鮮明化。全国銀行協会の幹部が登壇し「日本の持続的成長に向けた成長投資に、投資の具体化と資金供給の両面で銀行界として貢献をしていく。そのため、投資の予見性確保や事業特性に応じた官民のリスクシェアといった環境整備が欠かせない。政府や産業界と一緒に検討させていただきたい」と述べました。
この日の会合では、新戦略を実現する上でアセットオーナーの果たすべき役割についても話題に。出席委員は、「(会合に出席した)日本政策投資銀行と産業革新投資機構は、いずれもアセットオーナーとして民間のアセットオーナーが取れないリスクを先導的に取られていると思うが、それだけだとなかなか広がりが出ない」と指摘。「アセットオーナー全体のレベルアップがすごく重要になってくるという意味では、次のターゲット、戦略としては、GPIF等の公的年金基金がどこまで前に出られるのか」だと主張しました。
加えて、「小さな年金基金や大学のファンドなどが自前ではなくて、例えばOCIOのような外部の専門家に委託するような形で、全体としての底上げをどこまでやっていくのかということによってリスクテイク力を上げないと、日本の今の成長力は上がらないだろう」と訴えました。
オルタナ未投資額「3.1兆円」資料で提示
4月2日に開かれた第3回会合では、「アセットオーナーの機能向上について」と「企業年金・個人年金改革について」の2つが議題に。公開資料によれば、当日は年金積立金管理運用独立行政法人が、オルタナティブ投資「推進」に向けた直近の体制強化などの取り組みを紹介した上、日本企業に投資するプライベートエクイティ(PE)ファンドに「期待」する事項について説明しました。
また、この日の会合ではアセットオーナープリンシプルの受入状況、公的アセットオーナーにおけるオルタナティブ投資の対応状況について集計した図表を内閣官房側が提示。オルタナティブ分野での投資確約額のうち未投資額が3.1兆円に上るGPIFで、過去9年間(2024年度まで)の累積収益率が、国内アクティブ比率でGPIFを上回る国家公務員共済組合連合会(KKR)や私学事業団を下回っている現状等を踏まえ、オルタナティブ投資の拡充余地を強調するニュアンスの説明を行ったとみられます。厚生労働省は、27年度の新システム稼働を含む企業年金における運用「見える化」の取り組みや、DBにおけるアセットオーナープリンシプルの受入状況に関する説明資料を提出しました。
分科会での議論の流れからすると、GPIFなど公的アセットオーナーに対し働きかけを一層強めていく政府の考えはすでに明確です。今後は、企業年金や保険会社といった民間セクターに対し、運用の高度化やオルタナティブ投資への圧力をどこまで強めていくかが一つの焦点となりそうです。
(※非公開の会合につき、記事中の発言内容は公開された議事録をベースにしています)
