Q:職員「支店長! 接客について、先輩方のように自信が持てません。どうしたら自信が持てるようになりますか」
A: 支店長「私も自信なんてありませんよ。常に手探りでお客さまと向き合っています」
森脇's Answer:
この質問は、金融機関に勤務していた際に若手職員からよく聞かれましたし、また筆者自身もことあるごとに先輩たちに質問をしてきました。颯爽と仕事をこなしている先輩方に「どうすれば自信が持てますか」と聞くと、たいてい「大丈夫、慣れますよ。あなたなら大丈夫です。」と言ってくれました。そのことに励まされ、その言葉が聞きたくて、同じ質問を繰り返していたのかもしれません。
しかし、ある先輩の言葉が胸に刺さりました。筆者の質問に「私も自信なんてありませんよ。常に手探り状態でお客さまと向き合っています」との答えが返ってきたのです。いつも自信満々に仕事をしていると思っていた先輩だったので、耳を疑い、思わず聞き返してしまいました。そしてその先輩は、自信を持つための秘訣を教えてくれました。それは「毎朝鏡に向かって“私は役者”と言い聞かせて、気持ちのスイッチを日常モードから仕事モードに切り替えている」というのです。先輩が陰ながら工夫をしつつ仕事に向き合っていることを知りました。それから筆者も、始業前に職場の鏡を見て笑顔を作り「私は金融のプロ。今日も笑顔!」と心で唱えて毎日の仕事に臨むようになったのです。
お客さまには職員の事情は分からない
だからこそ、常にプロの接客を
毎日の仕事では、疲れている日もあれば、仕事に集中できず、気分の乗らない日もあります。しかし、お客さまにとってみれば金融機関の職員と接触するのは、年に1回あるいは数年に1回の出来事かもしれません。普段は接客態度が優秀であっても、たまたま不親切な接客をしたお客さまが滅多に金融機関の職員と接触をしないのであれば、そのたった1回の接客によって自金融機関全体の印象が悪くなってしまう可能性があります。
お客さまが金融機関に用事があるときというのは、人生の大きな出来事に臨んでいるときであることが少なくありません。例えば、就職、退職、結婚、離婚、車や住宅購入、相続など。そこには、喜びもあれば悲しみもあります。また、紛失や盗難など、困った状況に直面していることも多いでしょう。そのような一大事に向き合っているお客さまにとって、金融機関職員の個人的な理由は関係ありません。私たち金融機関職員は、個人的な気分の変調を見せることなく、きちんとしたサービスを提供できるようにしたいものです。それこそが金融のプロフェッショナルとしてのあるべき姿だと思います。
自分を金融のプロだと言うことは簡単なことではありません。知識も経験も必要です。お客さまの方が人生経験も豊富で、また金融知識に詳しいことも多々あるものです。それでも、金融機関に所属する者としてお客さまに接すれば、「プロ」として見られるのです。私たちは、そのことを自覚してこの仕事に臨まなければなりません。
といっても、自分一人ですべてを抱え込む必要はありません。幸いなことに私たちはチームで仕事をしています。職場の仲間と協力し合って、お客さまにサービスを提供していることを忘れないでください。
自身の身だしなみや振る舞いが、信頼を得る手段に
自信を持つためには、身だしなみやマナーも大切です。筆者は当初、安価なスーツを着用し、100円ショップのボールペンを使用していました。あるとき家族から「そのボールペンではダメ」と指摘され、品質の良い高級なボールペンをプレゼントされました。それに合わせるように、スーツも買い替えました。靴や小物類にも気を使いました。それはおしゃれを重視してブランドもので身を固めるということではありません。デザインはシンプルなものにして、上質な素材や体に合ったものを選ぶこと、そしてシワや汚れがなく、いつでも清潔を保つことが大切です。金融機関職員は悲しみごとも多く扱う職業ですので、ネイルも自然な一色にし、デコレーションは不要です。髪や顔を触った手でお客さまの通帳や印鑑を触るのは不潔だと感じるお客さまも一定数いますから、振る舞いにも気をつけましょう。
シワのあるシャツを着て鏡の前で「私はプロ!」というよりも、お客さまと接するにふさわしい身だしなみで「私はプロ!」というほうが仕事モードへの切り替えの儀式もスムーズになるはずです。
筆者はそのようなことを実践していたところ、担当していた80歳代のお客さまからこのようなお言葉をいただきました。「森脇さんの身だしなみは毎度とても好感を持てて安心しますし、そういうところを信頼しています。今まで多くの金融機関と取引してきましたが、こんなことを言うのは初めてです」
顧客本位の活動では、お客さまのための提案をすることが求められますが、そのためにはお客さまの情報が必要です。精度の高い情報を引き出すのに必要なのは信頼です。信頼を獲得するためには、知識や経験などが重要であることは言うまでもありませんが、筆者の研修では「お客さま起点の提案が信頼を得られる要素」と伝えています。そして、身だしなみもまたその手段の一つと言えるのです。
「等身大の支店長」を伝える体験談が
職員の成長の一助に
自信がないという人の自信がつくまで待っていては、いくら時間があっても足りませんし、成長の機会を失うことにもなりかねません。そのような職員には以下の3つを同時に行ってください。一つ目は経験させる機会を与えること。二つ目は、一歩を踏み出す勇気を授けること。三つ目は成長の伴走、サポートをすることです。
自信がない職員への語りかけはさまざまかと思いますし、何が正解かは職員ごとに違うでしょう。特にここで言及したいのは、自身の能力や成果を控えめに評価する傾向のある人が一定数いるということです。(筆者の経験では、女性の方が男性よりその傾向がやや強いように感じます)。ある職員は他の職員に比べて自信がないために頼りなく見えるが、実は十分な能力を持っている可能性があるということです。そのようなことにも気を配ってもらえればと思います。
支店長自身も、初めての仕事では右も左もわからないという経験をしてきたでしょうし、自信が持てなかったという経験もあったかもしれません。若手職員にとってみたら、支店長がどのような苦労をしてきたかなど想像もつかないものです。ですから、そのような実体験を聞けば、等身大の支店長が見えてきて、親近感が沸くでしょう。自信を持って仕事ができるようになるまで一足飛びにたどり着けるわけではないことに気づき、焦りが軽減することにつながります。ぜひ自身の経験を語ってみてください。

