Q:職員「支店長!お客さまから商品選びを丸投げされてしまいます!」
A: 支店長「それでは、今推進に力を入れている商品のニーズを確認してみてください」
森脇's Answer:
商品ラインアップのパンフレットを示し一通り説明をして、どれがいいですか、と聞けば「何でもよい」「お任せしたい」「良い商品にしてください」などというお客さまはとても多いと思います。その際に、これは好機とばかりに自金融機関にて推進している商品を中心に案内するのは、その商品が結果として良い運用成績を上げたとしても、顧客本位の対応とは言えません。あくまでもお客さまに選んでいただくことが前提です。
まずは「お客さまの状況によって良い商品というのは異なります。お客さまに最適と思われる商品を一緒に選んでいきましょう」と伝えてみてください。といっても、お客さまに投資に関する前提知識がなければ、自分に合う商品を選ぶことはできません。自分で商品を選ぶことができるための知識をしっかり伝えるのが理想ではありますが、一人のお客さまにかけられる時間は限られています。短時間でお客さまが選べるようにお手伝いをすることになるのですが、お客さまの選択肢を段階的に絞り込んでいくという方法が有効です。
選択しやすいように選択肢を絞っていく
パンフレットを一から説明するのは時間がかかりますが、自分に合った商品だけを知りたいと考えているお客さまは飽きてしまい、真剣には聞いてもらえません。担当者の労力の割には、商品選びの役には立てないことが多いでしょう。筆者はパンフレットを出す前に、アセットアロケーションを確定させるという作業をします。パンフレットは、アセットアロケーションが決定したその後の商品選びの際に使用します。
アセットアロケーションの確定は、お金を5つに区分するところから始めます。すなわち、1年以内に使うお金、数年以内に使うお金、しばらく使う予定のないお金、老後のお金、遺すお金、です。
1年以内に使うお金は普通預金、数年以内に使うお金は定期預金として確定させます。しばらく使う予定のないお金、老後資金、遺すお金が現時点で普通預金や定期預金になっている場合、お客さまの現在のアセットアロケーションは預貯金のみであるということを示し、他の商品の組み入れを検討することを提案します。遺すお金についは、投資商品で運用する場合もありますが、保険商品の優先順位が高いためここでは説明を割愛します。さて、しばらく使う予定の無いお金と老後資金について、預貯金以外の何かしらの商品を検討することになりました。
次に行うことは、株式と債券の基本的な解説です。投資信託という商品よりも前に投資の基本的知識についての話を先にするのが良いでしょう。株価は経済や企業の成長とともに上昇し、また成長がなければ横ばい、もしくは下落するものです。短期的には、成長とは関係なく乱高下しますが、長期でみれば経済成長、企業の業績に株価は収斂すると言われています。投資をすることによって得られる果実は、株式の値上がり益と配当金。外国の株式では為替の変動も加味されることを伝えます。続いて債券の説明です。債券は、100円で発行され100円で償還されることから、価格の変動は株式ほど大きなものではありません。基本的に得られる成果は金利です。外国の債券ではやはり為替の変動が加味されることも伝えます。
一般的には株式投資の方が債券投資よりもハイリスク・ハイリターンであると言われますが、たとえば日経平均株価などに連動するインデックスファンドは、価格変動の理由が明確で、理解しやすいことから初心者も始めやすい投資対象と言えます。一概に初心者には価格のブレの少ない債券投資が良いわけでないことに注意しましょう。また、老後の資産形成のため長期・積立・分散投資では、一般的に債券投資より、株式投資が優先されていることもお伝えします。
株式と債券の基本的な特徴をお伝えしたら、資産全体のアセットアロケーションの検討に進みましょう。円グラフを書き、半分に割って、それぞれに株式と債券とを書き込みます。そしてさらにそれを半分にし、国内と海外に分けます。円グラフは4分割された状態です。これは日本の公的年金積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と同様のポートフォリオであると伝えます。

続いて円グラフを3つか5つほど書き、株式が多めのものから、債券多めのものまで段階的に比率に変化をつけたものを示し、お客さまに「どのくらいがご自分に合っていると思いますか」と質問します。このように提示すれば、お客さまは自分で選ぶことができます。幸いなことに筆者は、この段階まで来てお客さまに「あなたが決めて」と言われたことはありません。こうしてアセットアロケーションが決定します。なお、このような図はその場で手書きをしながら解説するとお客さまは自分のための提案だと理解し集中して話を聞いてくれます。
次は、具体的な商品を選んでいきます(ポートフォリオの選定)。個別商品を案内する前に説明すべきことは、株式投信にはアクティブとパッシブがあること、債券投資には投信と個人向け国債があることです。それぞれの特徴を伝えましょう。商品の種別を選んでいただければ、パンフレットを出して、該当する数個の商品から選択することをお手伝いすればよい、ということになります。
このようにご案内すれば、お客さま自身に商品を選んでもらうことができます。
支店長に向けて
支店長に伝えたいのは、偏った商品の推進をしないようにしてほしいということです。一部の商品に偏った販売をする職員に対してはむしろ注意を払い、適切な案内ができているかを監督してください。顧客等の最善の利益を追求する義務が法定化された流れから考えても、偏向販売を見逃したり、増長したりするような態度は法令違反と見なされる可能性もあるでしょう。
お客さまに商品を選んでもらうためには、担当職員に十分な知識があるだけではなく、適切な説明や提案をする技能を習得していることが大切です。ロールプレイング研修などを実施して、職員の対応力向上を図ってください。適切な案内を受けて、自身で商品を選択したお客さまの購入体験は、きっと質の高いものであるはずです。


