「次に来る株式ファンドはどれですか」――。投信ビジネスに長く関わっていると、行内はもちろん、行外のさまざまな方から質問を受ける。新たな取扱ファンドを検討する際には、運用会社からは過去の好パフォーマンスや、有望な投資テーマについて多くの説明を受ける。もちろん、しっかりとリターンが期待できる商品を選びたい。しかし、将来もっとも値上がりするファンドが、もっとも顧客に選ばれるわけではない。では、株式ファンドは何を見て選べばよいのだろうか。第1回は、株式ファンドの選定の判断軸について整理したい。
資金流入ランキングから何が分かるか
図表1は、2026年6月基準の直近6カ月について、同一シリーズの決算コースや分配コース、為替ヘッジコースなどを統合し、主要公募投信のアクティブ株式ファンドを順位付けしたものである。
上位には、「インベスコ 世界厳選株式〈世界のベスト〉」「フィデリティ・グロース・オポチュニティ」「WCM 世界成長株厳選〈ネクスト・ジェネレーション〉」といった世界株式ファンドが並ぶ。一方で、「素材革命」「フィジカルAI」「世界半導体株投資」「電力革命」「宇宙関連株式」など、テーマ型も10位以内に数多く入っている。
資金流入が多いことは、多くの投資家がその運用戦略に期待していることを示す重要な情報である。また、同一シリーズを統合して比較することで、実際にどの運用戦略へ資金が集まっているのかが見えやすくなる。
ただし、ランキングは販売動向を表すものであり、将来の運用成果を保証するものではない。また、売れているファンドと、今後も売れ続けるファンドは必ずしも同じではない。資金流入には、過去の運用実績だけでなく、相場環境や販売会社の提案方針、新商品の話題性、分配実績なども影響する。ランキングは「答え」ではなく、「なぜ資金が集まっているのか」を考えるための出発点として活用したい。
期待リターンの源泉を見る
筆者が運用会社から商品の提案を受けたとき、まず説明を求めるのは、「このファンドは、何%程度のリターンが期待できるのか」ということである。アクティブファンドであれば、オール・カントリーやS&P500といった代表的なインデックスファンドを、どの程度上回るリターンが期待できるのかについて質問する。もちろん、将来のリターンを正確に予測することはできない。大切なのは、数字を断定することではなく、その水準を期待する合理的な根拠があるかどうかである。
成長企業を選別するのか。割安な企業の株価修正を狙うのか。配当や自社株買いなど、株主還元の積み上がりに期待するのか。あるいは、技術革新や社会構造の変化から利益を得る企業へ投資するのか。何%上昇するかを当てることではなく、なぜそのリターンが生まれるのか、その源泉を確認する必要がある。
過去の実績に再現性はあるか
次に見るのは再現性である。過去の運用成績が良かったとしても、その理由を確認しなければならない。どのような企業を選んだ結果、そのリターンが生まれたのか、運用哲学は一貫しているか、銘柄選定の基準は明確か、運用チームは安定しているか、特定のファンドマネジャーに依存していないか、過去の成功が偶然ではなく、今後も続く仕組みに基づいているかを見る必要がある。高リターンによる高分配実績があっても、その再現性を見極めることが重要だ。
運用会社の資料では、シミュレーションを含め長期の累積リターンを示すチャートがよく使われる。しかし、チャート初期のわずかな差でも、複利効果によって後半には大きな差に見えやすい。右肩上がりの累積チャートだけで判断せず、年ごとのリターンや下落局面での値動きも確認したい。
リスクを見るうえでは最大ドローダウンの大きさだけでなく、下落後に基準価額が回復するまでの期間も重要である。下落率が同じでも、短期間で回復するファンドと、何年も低迷するファンドでは、お客さまの保有のしやすさが大きく異なるからだ。チャート上の2年は短いが、値下がり時に耐える2年間の体感は長い。
テーマ型ファンドは、注目が集まるほど対象企業のバリュエーションが高まっており、販売が始まった時には割高な局面で投資することになりかねない。テーマの成長性だけでなく、バリュエーションに見合う利益成長が期待できるか、さらにその成長テーマが一過性ではなく継続するのかも見極める必要がある。
新商品こそ比較が必要になる
新規設定ファンドには、国内での運用実績がないが、類似の戦略が海外で先に運用されているケースもある。
その場合には、ブルームバーグや米国モーニングスターなどを使い、海外ファンドや類似戦略の実績、組入銘柄、リスク特性を確認することができる。国内にトラックレコードがないからといって、調べる材料がないとは限らない。
運用会社の提案資料には、当然ながら商品の良い面が中心に書かれている。だからこそ、販売会社が自ら既存商品や競合商品と比較することが重要になる。
類似戦略がなくバックテスト(シミュレーション)のみの場合など十分な比較が難しければ、こちらが比較したいファンドを指定し、運用会社に比較資料を作成してもらえばよい。どの商品と比較するかを自ら決め、優位な局面だけでなく、劣後する局面まで確認する。こうした作業もデューデリジェンスの一部である。
お客さまが保有し続けられるか
最後に問われるのは、お客さまが「なるほど」と思えるかどうかだ。
ここでいう「なるほど」とは、単にストーリーが分かりやすいということではない。運用哲学、企業分析、技術革新、社会構造の変化などが、将来の企業利益や株価の上昇につながる道筋に、合理的な根拠があることである。
どれだけ良いファンドでも、お客さまが保有し続けなければリターンを提供することはできない。短期的な値下がりで不安になり、最も悪い局面で売却してしまったり、やっと基準価額が戻ったところで「やれやれ売り」をしてしまえば、優れた運用戦略も十分な成果にはつながらない。
そのため、商品選定では期待リターンだけでなく、値動きの特徴や苦戦する局面を営業担当者がお客さまに説明できるか、お客さまが納得して保有を続けられるかまで考える必要がある。
もちろん、すべての資金をアクティブファンドやテーマ型で運用する必要はない。長期積立やNISA、老後資金の中核には、低コストのインデックスファンドが適している場合も多い。その一方で、資産の一部について、運用哲学や構造変化に期待し、アクティブファンドやテーマ型へ投資することも合理的な選択である。重要なのは、資金の性格と役割に合わせて商品を選ぶことだ。
商品選定とは、過去を評価することではなく、未来を見極めることである。
そのためには、期待リターンやリスクなどの定量面だけではなく、運用哲学や再現性、説明可能性、お客さまが長期保有できるかどうかといった定性面まで含めて総合的に判断しなければならない。
図表2は、その考え方を「商品選定ダッシュボード」として整理したものである。本連載では、このような判断軸を用いて、販売会社に求められる「投信選定力」を考えていきたい。
※本稿における意見や見解は、筆者個人の経験と考察に基づくものであり、所属する組織の見解や方針を示すものではありません。
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