横浜銀行などを傘下に抱える銀行持株会社、コンコルディア・フィナンシャルグループは2025年に「横浜フィナンシャルグループ」へと社名変更し、地域密着の姿勢をより明確にした。
2025年度からは新たに始まった中期経営計画のもと、さまざまな改革に取り組んできたが、中でも横浜銀行の預り資産業務の在り方は従来と大きく変わりつつある。
これまで何を変革し、今後はどこに向かうのか、2人のキーパーソンの話をもとに明らかにしたい。
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“ 地銀の雄”として、預り資産業務においても先進的な施策を次々に打ち出してきた横浜銀行。そんな同行の営業スタイルが今、急速に変わりつつあり、大きな転換点を迎えようとしている。その契機となったのが、2025年12月にポートフォリオ提案サービス「Goal Design Lab( ゴール・デザイン・ラボ)」を導入し、同サービスを用いたゴールベース・アプローチの手法を取り入れたことだ。
顧客のライフプランを踏まえ、適切なポートフォリオを提示
2025年4月に同行営業戦略部の部長に就任した隅達也氏は、「預り資産営業の在り方を、根本から変えていきたいという想いがそもそもの始まりでした」と話す。その背景にあったのは、強い危機感だった。「顧客本位の業務運営」が問われるようになって以降、横浜銀行でも残高重視の業績評価体系に変更するなどストックビジネスの確立を目指してきたが、「営業活動が変容しつつある手応えを感じながらも、残高は伸び悩み、依然として改善余地が高いと感じていたことも否めません」と隅氏。「いわゆる『商品売り』的な手法も一部で続いていて、このままではサステナブルではないと感じていました。2025年度からちょうど新たな中期経営計画が始まったこともあり、この機会に変わらなければならないと考えたのです」
販売現場の人員が若返っている点も、改革の後押しになったという。「自分のやっていることが、本当にお客さまのためになっているのか。そんな疑問を持つ行員が、若手を中心に一部いたことも事実です。やはり成果が先にあるのではなく、あくまでお客さまに喜んでいただいた結果として、成果は後からついてくる。エンゲージメントという観点からも、そんな形への変革が必須だったと言えるでしょう」(隅氏)
同じく営業戦略部の金融資産コンサルティング室で室長を務める池野裕昭氏も、「外部環境が急激に変化した点も大きかったと考えております」と話す。かつてのゼロ金利・マイナス金利の環境下では、多くの銀行が預り資産業務に収益を期待せざるを得ず、短期的なフロー収益を追い求める傾向にあったのも事実。しかし、「金利のある世界」へと回帰した今、「預金の重要性が高まっている中で、預金と預り資産をそれぞれ単体かつ対立的に捉えるのではなく、一体となってどちらも増やす、つまりはお客さまの総資産を増やすという考え方へと切り替えていく必要があったのです」と池野氏は続ける。それがまさにストックビジネスへのシフトであり、そのための手段がゴールベース・アプローチだったわけだ。
もっとも、ゴールベース・アプローチに決まった定義はなく、その考え方やスタイルも販売会社によってまちまちだ。では、横浜銀行ではどんな形を目指してきたのか。「まずはお客さまのご資産を、他行さん、他社さんの分も含めてしっかり把握し、ご意向などをヒアリングしながらライフプランを一緒に考えていくところから始めます」と隅氏。「Goal Design Labにはそのための各種シミュレーション機能がそろっていて、ライフプランに沿ったイベントを複数、設定できます。そうしたイベントに基づくゴールを実現するためのソリューションが資産運用であるなら、お客さま一人ひとりに最も適したポートフォリオを提示し、具体的な商品の提案もできる。そうした一連の流れをシームレスにツールの中で完結できるのがGoal Design Labで、当行のゴールベース・アプローチの軸になっています」
例えば、顧客の現在の収支と金融資産が、将来のライフイベントを踏まえてどう推移していくのかをシミュレーションする。そのうえで、インフレ率なども加味して資産の寿命を延ばすためにはどのくらいの金額を、どのくらいの時間をかけて運用し、取り崩していくべきかを決める。そこから逆算して最も適切なポートフォリオを選択し、投資信託の組み合わせを選ぶという流れになるわけだ。
もちろん、ゴールの設定、提案で終わりではなく、ゴールを達成するまでの進捗も示すことができる。販売担当者はそれに基づいて顧客を定期的にフォローし、必要があれば商品のリバランスを行う。併せてライフプランに変更がないかもヒアリングし、時にはゴールを設定し直すこともある。フォローの頻度自体も、四半期に1回や半年に1回など、年1回以上であれば顧客に応じて自由に設定でき、たとえ販売担当者が異動したとしても、適切に引き継げる仕組みも備わっているという。
出口は資産運用だけではない、多様な提案を可能にするツール
さらにもう1つ、このGoal Design Labの大きな特徴は、出口となるソリューションが資産運用に限られていない点にもある。「ゴールベース・アプローチに用いるツールというと、ファンドラップや特定の投資信託に紐づいているものが多いものの、それは私たちが目指す姿とは異なっていました」と池野氏。「まずはお客さまとそのご家族をしっかり理解し、収支や全てのご資産、ライフイベントなどを把握したうえで一緒に課題を解決していく。そのためのソリューションが資産運用ではないケースも当然あり、保険であったり遺言信託であったり、税理士などの外部の専門家の紹介であったりもするわけです。だからこそ最も重視したのは、ライフプランニングを起点にお客さまの人生に寄り添いながら、多様なソリューションの提案ができるという点でした」
そこで既存のツールを採用するのではなく、フィンテック企業のMILIZEと共同で開発するという選択をし、Goal Design Labが誕生することになる。「お客さまに直接お見せするもので、当行の営業担当者にとっても営業スタイルを変えるための重要なツールなわけですから、たとえ時間はかかっても、その機能には徹底的にこだわる必要がありました」と隅氏も強調する。結果として、当初は2025年10月スタートの予定が12月にまでずれ込むことになったそうだが、それも妥協することなく、理想を追求したからなのだろう。
2026年1月には、横浜銀行を傘下に抱える横浜フィナンシャルグループがMILIZEの株式を取得し、同社を持分法適用関連会社とした。関係はより密になったわけで、現場の声なども取り入れながら、Goal Design Labはさらに進化を続けていくことになるはずだ。

