Q:職員「支店長! 今の時代、対面の営業はネット取引ができないお客さまのためにあるのですよね? であれば、いずれこの仕事はなくなりますよね?」
A: 支店長「対面でしか提供できない価値がありますから、今後もずっと続いていくと思いますよ。この仕事はお客さまに感動をお届けする、いわばエンターテインメントだと思っています。」
森脇's Answer:
このような問いは、対面での営業活動に価値を感じていないからこそ出てくるものだと思います。ネット取引と同じような対応しかせず、お客さまに金融商品をただ販売することが仕事だと思っていれば、その価値を実感できないのは当然です。
対面金融機関の営業の仕事とは何かと問われたとき、「目先の利益を手放して、あなたのための情報を提供すること」であると筆者は答えています。
対面営業の使命は「あなたのための情報提供」
ここでいう情報提供とは、主に二つのことを指します。一つは、金融商品という手段を提示することです。筆者はそれを「お客さまに毎日CMをする」などと表現しています。多くの国民がお金に関する心配や悩みを抱えているにも関わらず、それに対処するための金融手段にアクセスしていない人はいまだに大勢います。さまざまな手段があると知った上で、あえて金融商品を利用しないのならば良いのですが、実際には手段があること自体を知らない人が少なくありません。日本では成人のほとんどが金融機関に口座を保有しています。私たち対面金融に携わる者は、金融商品の正しい使い方を広めて、国民の生活をより豊かにしていくお手伝いをすることが使命だと、筆者は考えています。
もう一つの情報提供とは、目の前のお客さまに合う情報を伝えることです。現代では、各種のメディアから無料で入手できる数多の情報があります。特に投資や金融商品に関する情報は玉石混淆の状態であふれかえっており、適切に取捨選択することは難しいと言わざるを得ません。お客さまは自分で調べたり、たまたま見聞きしたりした情報を持っていますが、それらは不十分であったり、偏っていたり、断片的であったりするものです。ときには、自分に必要のない情報に心を乱されたりする場合もあります。そこで私たちは、お客さまから話を聞いて、お客さまが何をどのように理解しているのかを把握し、欠落している情報を補完したり、偏りを直したりします。その際、お客さまの理解度に合わせて説明の仕方を工夫するのです。ここに、対面接客の果たすべき役割があるのです。
成績や評価……目先の利益を手放す
例えば、1000万円の金融商品の販売が成約しそうでも、お客さまの状況を勘案して資産全体でよりよい選択肢を提示できる可能性があるのであれば、それを模索して提案しましょう。そうすることによって、当日の契約には至らないかもしれませんが、後々により大きな成果となる可能性は十分にあります。
実際に筆者の経験では、自分の成績や評価につながらない対応が、後の成果につながったことが数多くあります。例えば、インターネットバンキングでの投信購入は担当者や店の成績にならない仕組みであった(そのため面談への誘導が行われていた)にもかかわらず、筆者はお客さまのご希望があればネットでの投信購入取引のサポートをしていました。「森脇さんだけが希望を聞いてくれた」との評価をいただいたお客さまから、その後の大きな取引を契約いただき、残高増にもつながりました。また、他行や証券会社との取引状況も聞いていたため、自金融機関より他が有利な場合はその旨をお伝えしていました。このように接しているとお客さまは筆者を信頼して、何でもまず一番に相談をしてくれるようになります。そして、他行の方が手数料や条件が有利であっても、筆者との取引を優先してくれるようになります。
お客さまはただ安くて有利なものを選択したいのではなく、納得して選択したいと考えているのです。
お客さまに最高のサプライズを
上記のように活動していると、多くのお客さまが驚きの反応を示します。「長年多くの銀行と取引してきたけれど、今日初めて投資信託を理解しました。目からウロコです」「森脇さんから説明してもらうと腹落ちする」「自分の人生で最後の銀行の担当者になってほしい」「こんな銀行員には会ったことがない」これらは筆者が実際に受け取ったお客さまの声です。
他行では得られない驚きや感動が生じれば、そこに信頼が生まれます。信頼されれば積極的な自己開示を得ることができ、さらに幅広い提案をする機会ができます。自金融機関をメインバンクに切り替え、家族取引も開始してくれます。お願いセールスは一切不要で、成果が上がり続けるのです。
お客さまからの信頼に応えるため、学習や情報収集を継続して日々研鑽に努め、一人ひとりとの面談に常に最善を尽くします。筆者はよく歌舞伎など舞台を観に行っていたのですが、役者さんの演技を観ながら自分に重ねていました。その日接客したお客さまに最高の体験を提供する、接客はエンターテインメント、と自分に言い聞かせながら毎日の仕事に臨んできました。
金融の仕事は面白い! 仕事の楽しさを職員に伝えて
金融の仕事は、お客さまの人生に寄り添い、未来へとつないでいくものです。直接お客さまと接して、その役に立ち、喜んでもらうことはとても面白いものだと筆者は実感してきました。インターネットが普及して非対面であらゆることが完結する昨今、対面の価値は今までになく高まっています。
私が尊敬する先輩のエピソードを紹介します。昔から楽しそうに仕事をする先輩で、憧れの存在でした。支店長を経て今は役員になっていますが、後輩や部下が「仕事がつまらない、辞めたい」と相談してくるといつも「金融の仕事は本来とても面白いものだから、面白いと感じるようになるまではやってみて、それから辞めればいいよ」と伝えているそうです。そのように伝えて辞めた部下はいないと話してくれました。支店長には、職員にこの仕事の価値を伝え、成長を促し、自金融機関の信頼の歴史をつなぐことを願っています。

