finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
未来予想図

【プロが解説】化学産業における業界再編――現実味を増すエチレンクラッカーの拠点集約、次はファインケミカルか

原嶋亮介
原嶋亮介
コモンズ投信運用部シニア・アナリスト/ESGリーダー
2026.09.01
会員限定
【プロが解説】化学産業における業界再編――現実味を増すエチレンクラッカーの拠点集約、次はファインケミカルか

日本の新しい国づくりに向け“変化を始めた企業”、“変化にチャレンジする企業”を中心に、中長期的な視点で厳選した国内株式を主な投資対象とする、コモンズ投信のアクティブファンド「ザ・2020ビジョン」。その月次レポートから、アナリストによるコラムをご紹介します。
※本稿は「ザ・2020ビジョン」月次レポート(作成基準日 2026年7月31日)内『未来予想図』を転載・再編集したものです。

エチレンクラッカーの拠点集約へ競合間協議が進行、ファインケミカルでも合従連衡が選択肢に

近年、日本の化学産業において大きな構造変化の波が押し寄せています。その象徴的な動きが、エチレンクラッカー(エチレン製造設備)の拠点集約です。エチレンは合成樹脂や合成繊維、溶剤など、あらゆる化学製品の出発点となる基礎化学品ですが、日本国内のエチレン生産能力は需要の縮小と設備の老朽化が重なり、長らく過剰な状態が続いてきました。千葉地区や水島地区では、かつては考えにくかった競合他社間のクラッカー統合や設備の共同運営に向けた協議が進むなど、業界再編の動きがここ数年で一気に現実のものとなっています。

この背景には、複数の構造的な要因があります。国内の石油化学製品需要が人口減少や製造業の海外移転によって頭打ちとなっていることに加えて、中東や中国が安価な原料を武器に大規模な設備を相次いで稼働させており、コスト競争では日本の汎用品メーカーが太刀打ちすることは難しい状況となっています。さらに、カーボンニュートラルへの対応という観点からも、老朽化したクラッカーを維持し続けることのコストとリスクは年々高まっています。こうした事情が重なり、「規模の経済」を追求した設備の集約・効率化は、石油化学業界においてもはや避けられない選択となっています。

では、こうした再編の必要性は、エチレンのような汎用品領域にとどまる話かというと、そうではないと感じています。半導体材料・電子材料・医薬品中間体といった、いわゆるファインケミカルの領域においても、同様の課題が静かに進行していると考えています。フォトレジストや高純度溶剤をはじめ、いくつもの半導体製造に不可欠な素材において、日本企業は、現在も世界市場で極めて高い競争力を誇っています。しかし、この優位性が今後も自然に維持されると考えるのは楽観的すぎるでしょう。ファインケミカル領域でも、韓国・台湾・中国のメーカーが技術力を急速に高めており、一部品目では代替が現実のものとなりつつあります。また、半導体の世代交代に伴い、求められる材料の仕様も絶えず高度化しており、次世代製品への対応には継続的かつ大規模な研究開発投資が不可欠です。ところが、日本には化学メーカーの数が多く、各々の売上規模が相対的に小さく、品目によっては日本企業同士が激しく競合しているケースもあります。その場合、国策的なバックアップを受けるグローバルな競合と比較して設備投資・研究開発の規模が劣後する可能性があり、まさにそれこそが過去にエレクトロニクス・半導体が辿ってきた道であり、じわじわと競争力が侵食されていくリスクは決して小さくないと危惧しています。

こうした状況を踏まえると、ファインケミカル領域においても、合従連衡を積極的に検討すべき時期に来ているかもしれません。実際、最近ではいくつかの会社から、「日本代表になれる(グローバルに競争優位性を持つ)事業に経営資源を集中する」という声が聞かれるようになってきました。これは大変ポジティブな変化であると考えています。競合企業間も含めた研究開発の共同化、製品ポートフォリオの棲み分け、さらには事業統合によるスケールの確保――これらは、これまでの日本企業にとっては容易ではなかったかもしれませんが、日本が誇る産業の競争力を次世代に引き継ぐためにも、業界全体で大局的な議論が加速していくことを期待したいところです。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
1

関連キーワード

  • #運用会社
前の記事
【プロが解説】住宅価格高騰への処方箋――関心を集める「アフォータブル住宅」と「中古不動産」、問題に向き合う企業にも注目
2026.08.03

この連載の記事一覧

未来予想図

【プロが解説】化学産業における業界再編――現実味を増すエチレンクラッカーの拠点集約、次はファインケミカルか

2026.09.01

【プロが解説】住宅価格高騰への処方箋――関心を集める「アフォータブル住宅」と「中古不動産」、問題に向き合う企業にも注目

2026.08.03

【プロが解説】人口減のなか注目される私鉄各社の貢献――駅を起点に人を呼び込み、沿線価値を高めるまちづくり

2026.07.01

【プロが解説】資源安全保障の観点から見たサーキュラーエコノミーの価値ーー資源調達の構造をどう変えるか

2026.05.01

【プロが解説】「アンソロピック・ショック」とは?AIがSaaSを使う側に回り、揺らぐ課金モデル

2026.04.01

【プロが解説】8.5兆円の国内アパレル市場は群雄割拠、商品戦略と周辺事業が企業価値を左右する

2026.03.02

【プロが解説】2025年度 統合報告書審査を終えて― 企業価値向上に向けた評価視点と今後の課題

2026.01.20

【プロが解説】高齢化と地球温暖化・デジタル化がもたらす、フィットネス施設の環境変化

2026.01.05

【プロが解説】光電融合技術「シリコンフォトニクス」が変える未来ー2026年、光の時代が始まる

2025.11.18

【プロが解説】2026年3月のWBCはネットフリックスが独占! 高度な視聴体験を実現する、新たな通信技術活用に期待

2025.11.04

おすすめの記事

世界最大級のセカンダリー運用会社が日本進出 分散が効いたプライベートアセットをあらゆる投資家に

Finasee編集部

【新NISA対象】ブラックロックから「iシェアーズ S&P500 トップ20 ETF」「iシェアーズ ゴールド ETF」が上場! 個人投資家にとっての魅力は…

Finasee編集部

【連載】藤原延介のアセマネインサイト㉟
~米国投資信託最新事情~
株価急回復の4-6月は米ETFが15兆ドル超え! アクティブETFは2兆ドルに迫る

藤原 延介

【プロが解説】化学産業における業界再編――現実味を増すエチレンクラッカーの拠点集約、次はファインケミカルか

原嶋亮介

「よく分からないから商品選びはお任せします」を真に受けるとNGに――改正保険会社向け監督指針に見る“最善利益義務”の真意

川辺 和将

【第2回】債券ファンドは何を見て選ぶのか

八杉 哲史

「その他有価証券」に許される「売買の頻度」の目安とは?

岡本 修

著者情報

原嶋亮介
コモンズ投信運用部シニア・アナリスト/ESGリーダー
ブリヂストン、日東電工、ジャパン・リート・アドバイザーズ(J-REITのユナイテッド・アーバン投資法人の資産運用会社)の3社にて、主に経理・財務・IRに従事。2019年2月、コモンズ投信入社。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
【第2回】債券ファンドは何を見て選ぶのか
「よく分からないから商品選びはお任せします」を真に受けるとNGに――改正保険会社向け監督指針に見る“最善利益義務”の真意
【第1回】株式ファンドは何を見て選ぶのか
「支店長! 今の時代、対面の営業はネット取引ができないお客さまのためにあるのですよね? であれば、いずれこの仕事はなくなりますよね?」
ゆうちょ銀・郵便局の売れ筋で債券ファンド「ますますグロタ」がジャンプアップ、「NASDAQ100」は3ランクダウン
「その他有価証券」に許される「売買の頻度」の目安とは?
販売現場の不祥事を誰が止めるのか――保険代理店・IFAの監督に必要な「多層管理」
【運用会社ランキングVol.4】野村アセットマネジメントが2年連続トップ、3位に急浮上したのは大和アセットマネジメント/ゆうちょ銀行・郵便局編
「最大のライバルは今日の自分」顧客本位のビジネスモデルの理想を追求 case of 三菱UFJモルガン・スタンレー証券
「投信のパレット」の進化形でコンサルティングのさらなる高度化へ case of ふくおかフィナンシャルグループ
【第2回】債券ファンドは何を見て選ぶのか
ゆうちょ銀・郵便局の売れ筋で債券ファンド「ますますグロタ」がジャンプアップ、「NASDAQ100」は3ランクダウン
「その他有価証券」に許される「売買の頻度」の目安とは?
SBI証券の売れ筋は国内株「4.3ブル」に脚光、アクティブファンドの「WCM」や「世界のベスト」にも見直し
常陽銀行の売れ筋で「日経225ノーロード」がトップを堅持、「ロボティクス」がジャンプアップ
「よく分からないから商品選びはお任せします」を真に受けるとNGに――改正保険会社向け監督指針に見る“最善利益義務”の真意
テクノロジー関連の成長とテーマ型ファンドへ投資する際の注意点
「支店長! 今の時代、対面の営業はネット取引ができないお客さまのためにあるのですよね? であれば、いずれこの仕事はなくなりますよね?」
【第1回】株式ファンドは何を見て選ぶのか
顧客本位と投信ビジネスの成長を両立させるアクティブファンド活用論
佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」第20回:生活道路の「30キロ規制」が各セクターにもたらす意外な影響とは

個別商品から、経営の仕組みへ―金融庁モニタリング結果(FDレポート)が示した顧客本位の次の段階―
【第1回】株式ファンドは何を見て選ぶのか
「支店長! 今の時代、対面の営業はネット取引ができないお客さまのためにあるのですよね? であれば、いずれこの仕事はなくなりますよね?」
顧客本位と投信ビジネスの成長を両立させるアクティブファンド活用論
【第2回】債券ファンドは何を見て選ぶのか
テクノロジー関連の成長とテーマ型ファンドへ投資する際の注意点
マネックス証券で「日経半導体株」が大きくランクダウン、「オルカン」「WCM」「世界のベスト」を再評価
野村證券で「半導体」や「宇宙」などがランクダウン、安定資金流入の「のむラップ・ファンド」の上昇目立つ
日経平均が下落しても「国内株式型」に約5564億円の資金流入、新設の「テック・リーダーズ」や「構造変化日本株」が大型化=26年7月投信概況
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2026 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら