光電融合技術「シリコンフォトニクス」搭載製品がついに登場、2026年は次世代半導体の覇権を占う重要な年に
近年、AIやクラウドサービスの急速な普及により、データセンターや高性能コンピュータ(HPC)における演算負荷が爆発的に増加しています。従来の電気配線では、伝送遅延や消費電力の増大、発熱による性能低下が深刻な課題となっており、これが技術革新の必要性を生んでいます。そこで注目されているのが「光電融合技術」です。これは、電気信号と光信号を同一回路内で融合させ、効率的に処理する技術であり、信号伝送の高速化と省電力化を同時に実現できる可能性を秘めています。
光電融合の中核技術である「シリコンフォトニクス」は、シリコン半導体技術を用いて光回路を作り込む手法です。アメリカではIntelやIBM、NVIDIAなどが先行して開発を進め、2026年には光パッケージ技術を採用した製品が登場する見込みです。また、AMDも専業スタートアップを買収し、開発競争が激化しています。NTTも「IOWN」構想(注)のもとで独自技術「メンブレンフォトニクス(光と電子の両方を効率的に扱うために設計された薄膜技術)」による差別化を図っています。
一方で、実用化にはまだ多くの課題があります。光と電気の両方を扱うため製造コストが高く、熱管理や標準化、量産体制の確立といった課題が残ります。業界全体で互換性を確保する標準化が進まなければ、コスト低減や普及のスピードも限定的になることが考えられます。また、日本企業が市場で優位に立つには、国際連携やエコシステム構築が不可欠です。
光電融合技術は、まずはデータセンター向けから普及が始まり、2030年代にはCPUやGPU内部にも光通信が組み込まれる見通しです。市場規模は2035年に約2兆円規模、2050年には3兆円規模に達するとも言われており、データセンターやAI、通信インフラなど幅広い分野での採用が期待されています。光電融合は、電気の限界を超えた“光の時代”への転換点を象徴する技術です。AI時代の情報爆発を支える基盤として、2026年は実用化元年となる可能性があり、各国企業の技術競争が次世代半導体の覇権を占う重要な年になりそうです。
(注):「IOWN (Innovative Optical and Wireless Network)」構想とは、光を中心とした革新的な技術を活用したワイヤレスのネットワーク技術構想のこと。情報通信システムを変革し、現状のICT技術の限界を超えた、新しい情報通信基盤の実現を目指している。

