――まず、最近の市場の動向について教えてください。
アート市場の動きは、経済状況や中央銀行の金融政策から大きな影響を受けます。たとえば金融緩和で市場にお金が余ると、物価上昇で価値が目減りするため、現物で持っていることが資産保全につながるという発想で、不動産ほどではなくともその何%かはアート市場に流れこむことになります。
加えて近年、日本国内の著名な実業家が相当規模の現代アート作品を購入して注目を集めたことで、誰でもある程度の資産を持つとアートを保有することが当たり前といった認識が確実に定着してきたと感じています。自身の会社で売上高が億単位になると、人生の過程として「そろそろアートにも関心を持つべきだ」といった意識を、投資的な意味でも教養的な意味でも抱くようになってきているようです。文化庁が今年公表したレポートで946億円とされる日本のアートの市場規模は、今後いっそう拡大していくと見ています。
――資産保全や投資の手段として、アート作品はどのような性質があるのでしょうか。
前提として、作品が取引される際の価格は変動していくものですが、私自身は精神を豊かにする力、すなわちアートの持つ「真の価値」は、決して変わることがないと思っています。
その上で、資産価値の変動という意味ではアートも株式と同様に、短期的、中期的、長期的な動きがあります。
