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”霞が関文学”で読み解く金融界

“霞が関文学”で読み解く金融界⑤ 表題は「FDレポート」なのにFDを突き放す当局

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2023.08.08
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“霞が関文学”で読み解く金融界⑤ 表題は「FDレポート」なのにFDを突き放す当局

官庁で編み出される“霞が関文学”を読み解き、金融業界の現状と今後を考える本連載。今回取り上げる「作品」は、顧客本位の業務運営(FD)に観点で投資信託の販売サイドにおける課題点を整理した「リスク性商品の販売会社による顧客本位の業務運営のモニタリング結果」(6月30日公表、通称「FDレポート」)です。これまで金科玉条として絶対視されてきた「顧客本位の業務運営」(FD)をタイトルに掲げながらも、FDという概念そのものの位置づけを見直し、相対化するかのような記載ぶりが見受けられます。   (金融ジャーナリスト/霞が関文学評論家 川辺和将)

屈折した自己言及

霞が関文学の特徴のひとつに、文書全体に占める「自己言及」の配合率の高さが挙げられます。

ここでいう自己言及とは、その文書が何を目的に作成され、何が書かれており、他の文書との間でどのように位置づけられる存在であるのか、文書の中で明文的に説明されているという意味です。人文科学の分野で一時期流行した言葉づかいを借用すれば、霞が関文学における自己言及を「メタ霞が関文学」と言い換えることもできるでしょう。

文書のタイトルは、自己言及の典型的な実例といえます。当然といえば当然ですが、たとえば投信業界で注目度の高い資料の一つである「資産運用業高度化プログレスレポート」であれば、資産運用業の高度化に向けた現状・進捗の分析結果と課題認識の提示というレポートの特徴を、このタイトルが端的に示しているわけです。

今回取り上げる「FDレポート」も、本来はその名のとおり、FDの観点で販売会社が抱える課題を分析するという趣旨で作成されるものです。しかし今年のレポートの中身に目を通すと、自己言及と記載内容の間の微妙なズレや、自己言及の歪みのようなものが随所に見受けられます。

今回はメタ霞が関文学の屈折した部分に注目しながら、「FDレポート」を読み解いていきましょう。

屈折した自己言及

霞が関文学の特徴のひとつに、文書全体に占める「自己言及」の配合率の高さが挙げられます。

ここでいう自己言及とは、その文書が何を目的に作成され、何が書かれており、他の文書との間でどのように位置づけられる存在であるのか、文書の中で明文的に説明されているという意味です。人文科学の分野で一時期流行した言葉づかいを借用すれば、霞が関文学における自己言及を「メタ霞が関文学」と言い換えることもできるでしょう。

文書のタイトルは、自己言及の典型的な実例といえます。当然といえば当然ですが、たとえば投信業界で注目度の高い資料の一つである「資産運用業高度化プログレスレポート」であれば、資産運用業の高度化に向けた現状・進捗の分析結果と課題認識の提示というレポートの特徴を、このタイトルが端的に示しているわけです。

今回取り上げる「FDレポート」も、本来はその名のとおり、FDの観点で販売会社が抱える課題を分析するという趣旨で作成されるものです。しかし今年のレポートの中身に目を通すと、自己言及と記載内容の間の微妙なズレや、自己言及の歪みのようなものが随所に見受けられます。

今回はメタ霞が関文学の屈折した部分に注目しながら、「FDレポート」を読み解いていきましょう。

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著者情報

川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
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