屈折した自己言及
霞が関文学の特徴のひとつに、文書全体に占める「自己言及」の配合率の高さが挙げられます。
ここでいう自己言及とは、その文書が何を目的に作成され、何が書かれており、他の文書との間でどのように位置づけられる存在であるのか、文書の中で明文的に説明されているという意味です。人文科学の分野で一時期流行した言葉づかいを借用すれば、霞が関文学における自己言及を「メタ霞が関文学」と言い換えることもできるでしょう。
文書のタイトルは、自己言及の典型的な実例といえます。当然といえば当然ですが、たとえば投信業界で注目度の高い資料の一つである「資産運用業高度化プログレスレポート」であれば、資産運用業の高度化に向けた現状・進捗の分析結果と課題認識の提示というレポートの特徴を、このタイトルが端的に示しているわけです。
今回取り上げる「FDレポート」も、本来はその名のとおり、FDの観点で販売会社が抱える課題を分析するという趣旨で作成されるものです。しかし今年のレポートの中身に目を通すと、自己言及と記載内容の間の微妙なズレや、自己言及の歪みのようなものが随所に見受けられます。
今回はメタ霞が関文学の屈折した部分に注目しながら、「FDレポート」を読み解いていきましょう。