finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
永田町・霞が関ウォッチャーのひとり言

【文月つむぎ】"フィーベース信仰"に一石? IFA団体が世に問う「顧客本位の新常識」とは

文月つむぎ
文月つむぎ
2025.08.05
会員限定
【文月つむぎ】"フィーベース信仰"に一石? IFA団体が世に問う「顧客本位の新常識」とは

仲介業協会の提言が面白い

7月24日に、IFAの業界団体である日本金融商品仲介業協会(JIFA)が「『顧客本位』を極めるためのアドバイザーのベスト・プラクティス」を公表した。同協会のIFA法人会員(及び所属するアドバイザー)向けに、3部構成の下、11項目にわたりベスト・プラクティスを列記している。よく練られた文章であり、時間をかけて作成したことがうかがわれる。

IFAに限らず、リスク性金融商品の販売に携わる方々全てに参考になる内容だと思われ、以下、概要並びに筆者の注目点をご案内したい。(下線は筆者)

 

「ベスト・プラクティス」の概要

Ⅰ.アドバイザーのパーパス

 1. アドバイザーの存在意義と役割:顧客とその家族の話を聞き続け伴走する

Ⅱ.アドバイザーがアドバイスやサービスの一環として提供することが望ましいもの

 2. 継続的なレビューを伴う包括的なゴールベース・ファイナンシャルプランニングの提供

 3. 中長期分散アプローチによる資産形成・投資の実行

 4. 自社で正式承認した一貫性ある長期資産配分モデルの確保と提示

 5.「リスク許容度」だけではなく「リスクニーズ」も考慮

 6. 顧客とその家族の状況アップデートと理解を深めるために必須の継続的なレビュー

Ⅲ.利益相反の防止と牽制等

 7.  公正性、透明性のあるデューデリジェンス徹底による商品スクリーニングと選択

 8.  報酬・評価や利益相反事項の開示

 9.  運用資産残高連動のフィーベースの報酬体系や事業モデルの奨励

 10. フィーベース事業モデルでも完全には排除しきれない利益相反懸念への留意と対策

 11.  資産収益率等の数値基準による自主規律

 

斯様に「顧客との伴走」、「ゴールベース」、「中長期分散アプローチ」、「継続的レビュー」、「フィーベース」など聞き慣れた単語が並ぶ中、筆者は「リスクニーズ」、「フィーベースでも排除しきれない利益相反懸念」、「数値基準による自主規律」に注目している。

注目の新ワード①「リスクニーズ」

「リスクニーズ」について、同プラクティスでは、「中長期分散投資のリスク水準選定においては、単純な『リスク許容度』判定のみ機械的に鵜呑みにするのではなく、ゴール実現のために必要な中長期分散投資の期待リターン(『リスクニーズ』)も考慮した上で、顧客として望ましいポートフォリオの選択を支援することが望ましい」と記し、「これは、年金運用における中長期的将来の支出から逆算した資産運用のあるべき中身をマッチさせる一般的なアプローチ(『ライアビリティ・ドリブン・インベスティング』)を個々の顧客とその家族ごとに寄り添ってカスタマイズするもの」と説明している。

筆者が理解するに、「ゴール実現のための運用目標額や達成時期(将来キャッシュフロー)を踏まえ、それに(最低限のリスクで)マッチするポートフォリオを提案すべし」ということかと思う。「リスク許容度」だけを意識したポートフォリオ提案の場合、往々にして、許容範囲内で最大限のリスクをとらせて期待リターンを最大化させるといったことを考えがちであるが、リスクテイクの最適化・最小化も重要であるということだろう。これはALMにも通じる重要な指摘かと思う。

注目の新ワード②「フィーベースでも排除しきれない利益相反懸念」

「フィーベースでも排除しきれない利益相反懸念」については、「フィーベース事業モデルであっても、パフォーマンスが悪い状況等を放置する、あるいは、投資家の負担する総コストが割高であったりする状況を許容してはならない。また、継続的レビューを適正な頻度以上で実施しない、もしくは、ポートフォリオのモニタリングを怠る(リバースチャーニング)などの注意義務違反を許容してはならない」としている。

また、「コミッションベースの報酬体系については、資産形成層等への中長期分散投資などにおけるアドバイスギャップ(運用資産残高が小さいためにアドバイザーへのアクセスができずに、アドバイスをもらえないこと)を解消する手段として、フィーベースよりも有用または顧客にも有利な状況もありうるため、全否定されるべきものではない」とも記しており、「フィーベースであれば無条件にベストプラクティスというものではない」ことを強調している。

とかく、フィーベースを究極の顧客本位の報酬体系と見做しがちだが、「提供するサービスが手数料や顧客ニーズに見合っている」ことが大前提であることを改めて意識すべきという指摘だろう。

注目の新ワード③「数値基準による自主規律」

「数値基準による自主規律」については、「顧客にとって不利となる利益相反行為を牽制するために、フィーベースまたはコミッションベースのいずれの事業モデルにおいても、資産収益率(預かり資産残高に対する受け取り手数料の割合。※筆者追記)等の数値基準の上限による自主規律を意識的に設定し遂行することが望ましい」と記している。こうしたデータを使って、過度な乗り換え営業により、回転売買(チャーニング)を強いていないかを「見える化」することは、利益相反の芽を摘み取る上で有効な手段であり、IFA業界団体が自主開示に取り組む姿勢を見せたことは高く評価し得る。

このほかのデータとして、金融庁が公表を促す共通KPI(投資信託等の運用損益別顧客比率など)や契約更新率、平均契約年数、苦情発生件数などを公表することで顧客本位度や顧客信頼度を示すことも、玉石混交と言われるIFA業界の中で差別化を図る上で有益であると思われる。ぜひとも浸透・定着することを期待しているが、こうした見える化がIFA業界団体の取組みだけでは、なかなか浸透しないというのであれば、金融庁が後押しすることも検討すべきかと思う。

 

我が国において、家計の安定的な資産形成をさらに浸透・定着させるには、NISA やiDeCo等の非課税制度の普及に加え、顧客本位のアドバイスを提供する環境作りが欠かせない。口座開設や銘柄選定(の支援)、購入後のフォローアップやリバランス(支援)等をワンストップで行うアドバイザーとして、顧客本位を極めたIFAのニーズはますます高まるものと思われる。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #フィデューシャリー・デューティー
  • #IFA
前の記事
【文月つむぎ】「衆参とも少数与党」で通る法案は? 野党の「金融所得課税」に自民の「NISA拡充」でバランス取りも
2025.07.24
次の記事
【文月つむぎ】投資初心者を狙う「フィンフルエンサー」の脅威に備えよ 法規制があいまいな「グレーゾーン助言」の実態
2025.08.29

この連載の記事一覧

永田町・霞が関ウォッチャーのひとり言

速さを支える足場の築き方とは――moomoo証券の行政処分から考える「顧客本位」の土台

2026.07.02

金利ある世界で、金融機関は何を支えるのか――資産運用立国の提言と国会質疑から見える「全体設計」への転換

2026.06.17

NISAの次に問われる本丸--企業型DC・iDeCo、個人向け国債、そして資産形成助言の再設計

2026.05.28

データが映すインデックス時代のアクティブ再考ーー「安さ」だけでは、人は持ち続けない

2026.04.24

金融経済教育が定着しない本当の理由――後回しにされないための「行動に繋がる接触設計」を考える

2026.04.16

こどもNISAと「NISA貧乏」――「投資枠」ではなく「初動率」をいかに上げるか

2026.04.03

「働けば報われる」のその先へ―― 給付付き税額控除と寄附制度が開く「資本循環国家」への道

2026.02.18

プルデンシャル生命の組織に潜む歪み――彼らは「月のウサギ」を見上げなかったのか

2026.02.12

目先の配当か、未来の土壌か――国家を再設計するという選択

2026.02.04

中道改革連合「ジャパン・ファンド構想」の見過ごせないリスクと、実現に向けた論点

2026.01.29

おすすめの記事

IFA法人のパイオニア、GAIAが上場 中桐啓貴社長に聞く 
フィービジネスを日本で定着させるために

finasee Pro 編集部

速さを支える足場の築き方とは――moomoo証券の行政処分から考える「顧客本位」の土台

文月つむぎ

【連載】藤原延介のアセマネインサイト㉝
パフォーマンスと高成長を背景に新興国株式ファンドに資金流入の兆し

藤原 延介

【プロが解説】人口減のなか注目される私鉄各社の貢献――駅を起点に人を呼び込み、沿線価値を高めるまちづくり

上野 武昭

政府が「地域金融力強化プラン」をブレークダウンした都道府県別“新プラン”を策定へ

川辺 和将

ゆうちょ銀・郵便局の売れ筋で「日経225」と「NASDAQ100」が人気、貯金金利の引き上げで投信の売れ筋に変化?

finasee Pro 編集部

著者情報

文月つむぎ
ふづきつむぎ
民官双方の立場より、長らく資産運用業界をウォッチ。現在、これまでの人脈・経験を生かし、個人の安定的な資産形成に向けた政府・当局や金融機関の取組みについて幅広く情報を収集・分析、コラム執筆などを通し、意見を具申。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
2026年3月期の地銀・第二地銀「預り資産取扱い動向」を読み解く
【プロが解説】人口減のなか注目される私鉄各社の貢献――駅を起点に人を呼び込み、沿線価値を高めるまちづくり
速さを支える足場の築き方とは――moomoo証券の行政処分から考える「顧客本位」の土台
政府が「地域金融力強化プラン」をブレークダウンした都道府県別“新プラン”を策定へ
【連載】藤原延介のアセマネインサイト㉝
パフォーマンスと高成長を背景に新興国株式ファンドに資金流入の兆し
ゆうちょ銀・郵便局の売れ筋で「日経225」と「NASDAQ100」が人気、貯金金利の引き上げで投信の売れ筋に変化?
景気サイクル終盤のクレジットファンド選定
インデックス投資から始めた顧客を「思考する投資家」へ導くために ――対面営業を主体とする投信販売会社・本部投信担当者に求められる視点――
【運用会社ランキングVol.5】IFA法人からは「キャピタル」、「フィデリティ」、「アライアンス・バーンスタイン」の米系3社が盤石の高評価/IFA法人編
「国債でも減損処理しなければならないケースがある」とは?
2026年3月期の地銀・第二地銀「預り資産取扱い動向」を読み解く
仕組商品のリスクは「複雑かつ複合的」なのか?
政府が「地域金融力強化プラン」をブレークダウンした都道府県別“新プラン”を策定へ
ゆうちょ銀・郵便局の売れ筋で「日経225」と「NASDAQ100」が人気、貯金金利の引き上げで投信の売れ筋に変化?
常陽銀行の売れ筋で「日経225ノーロード」がトップに再浮上、「リスクオン」でバランスファンドより株式ファンドに軸足
【連載】藤原延介のアセマネインサイト㉝
パフォーマンスと高成長を背景に新興国株式ファンドに資金流入の兆し
福岡銀行で「半導体」人気が爆発、「日本株」や「純金」の人気は後退
SBI証券で「半導体」に強気、日米の半導体インデックスファンドが売れ筋ランクアップ
中国銀行で一極集中型の「パワーテクノロジー株式」「世界半導体関連フォーカス」が人気化
「体制」から「態勢」へ、改正保険業法に見る金融庁の着眼点の変化
2026年3月期の地銀・第二地銀「預り資産取扱い動向」を読み解く
「オルカン」「S&P500」「世界のベスト」に続くファンドは? 「スペースX」への関心で購入停止ファンドも=資金流入額上位20ファンド
顧客利益の最善を追求し、人生の質を高めることが IFA業界の発展と社会貢献につながる
信託ならではの専門性をオンラインで実現 独自のハイブリッド型チャネル戦略を推進 case of 三井住友信託銀行
「支店長! 接客について、先輩方のように自信が持てません。どうしたら自信が持てるようになりますか」
ファンドアナリスト篠田 尚子が2026年第1四半期を振り返る~投資信託の今と、これから
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【バランスファンド編】
顧客の「将来」と「今」に価値を提供し、地域に好循環を生み出すのがFFGの使命 case of 福岡銀行/ふくおかフィナンシャルグループ
佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」第19回:デジタル化の否応なしの進展が中核市の人口流出を加速させる?
福岡銀行で「半導体」人気が爆発、「日本株」や「純金」の人気は後退
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2026 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら