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FPパートナーへの業務改善命令は"FDレポートの保険版"?金融庁が処分にこめた3つのメッセージ

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2025.08.13
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FPパートナーへの業務改善命令は"FDレポートの保険版"?金融庁が処分にこめた3つのメッセージ

生命保険代理店大手のFPパートナーに対し、金融庁が8月6日に業務改善命令を発出したことは、ビッグモーター事件への対応を含め当局が損害保険業界の健全化にリソースを集中させてきた時代に、一区切りが付けられたことを業界内外に印象づけました。金融庁の指摘や幹部発言を踏まえ、当局のメッセージを読み解いていきます。

金融庁によると、FPパートナーは複数の保険会社が手掛ける商品からあらかじめ推奨商品として選定していましたが、保険募集人が顧客の意向を把握しているか確認する態勢を整備せず、広告費など保険会社から受けた便宜供与に応じて推奨商品を選定していたといいます。当局の検査では、収入保障だけを希望する顧客に変額保険を提案するなど、不適切な推奨を行っている事例も確認され、「合理的な理由なく特定の保険会社を偏重して推奨していることが強く疑われる」と指摘しています。

 

同社は業務改善命令について「厳粛に受け止め、全社をあげて改善・再発防止に取り組み、これまで以上に強固な法令遵守態勢の構築と誠実かつ公正な情報開示に取り組むことで、信頼回復に取り組んでいく」とコメントを公表しています。

 

①生保でも"成果連動型報酬"が商品提案に影響

本部側の商品選定に関する問題に加え、金融庁が注目したのが、保険募集人による不適切な営業活動です。

金融庁の調べでは、FPパートナーでは大半の保険募集人に対し成果連動型の報酬体系を適用しながらも、1契約者が有効な生命保険契約を10件以上保有していたり、年収等の水準に比して多額な保険料を支払っていたりといった多件数・多額契約について、モニタリング態勢を構築していなかったといいます。短期間での乗換、解約を繰り返す保険募集人が複数存在していながら、こうした実態を検知できていなかったとも指摘しています。

 

金融庁は6月に公表されたFDレポート(正式名称は「リスク性金融商品の販売・組成会社による顧客本位の業務運営に関するモニタリング結果」)の中で、金融機関の業績評価体系が従業員の販売姿勢に与える影響についての調査報告をまとめています。個別商品ごとの収益やフローを重視する評価体系を採用している金融機関は、そうでない金融機関に比べ、相対的に手数料が高い金融商品を多く販売している傾向があるといった分析結果を示していました。

FDレポートは、主に外国株式や投資信託、ファンドラップ、仕組債にフォーカスを当てています。外貨建て一時払保険の提案に関する課題に言及しているものの、保険商品全般についての問題点に切り込んでいるわけではありませんでした。その意味で今回の処分は、成果連動型の問題点を指摘したFDレポートの”保険版”の位置づけであるとも解釈できます。

 

②「経営層が分かっていたか確認していない」の意味

不適切な営業行為に対して金融庁が行政処分を出す場合、経営層がどの程度、意図的に関与していたかが一つの焦点になります。

今回の当局側の公表文には、問題への関与についての直接的な言及はみられません。保険募集人による不適切な推奨の事例が認められたことと、不適切な推奨が行われていないかをチェックする管理態勢に不備があったことの2点は明確に指摘しながらも、両者を結びつけるような事実の有無には言及していないのです。

金融庁が同社の経営陣側に”悪意”があったと見ているのか、報道陣から質問が飛んだ際、当局幹部はこのように回答しました。「本件で私たちが確認しているのは、あくまでリスクを十分認識していないというところであり、実態として分かった上でやっていたかどうかまでの事実関係を確認しているわけではない」――。

 

この回答は、一見、質問をはぐらかしているようにも思えます。しかし、むしろここに重大なメッセージを読み取ることができます。経営陣が具体的な案件を把握していたか「確認していない」と開き直って見せることによって、「私たちは経営陣が問題を知っていたかどうかに関係なく、必要であれば処分に踏み切る」という姿勢を打ち出しているのです。

仮に何らかの問題が明るみに出た場合、「報告が上がっていなかった」「現場が暴走したせいだ」といった言い回しで責任回避に走ることのないよう、各金融機関の経営層をけん制する狙いが窺えます。

 

③保険業界の"常識"に挑む新布陣の覚悟

訪問型保険代理店の業界最大手において、顧客のニーズよりも保険会社との関係性を重視する営業活動が行われていたことについて、当局は「乗合代理店ひいては生命保険業界における比較推奨販売に対する信頼性を著しく損なう」と危機感を示しています。

生保会社と代理店の関係性については、これまでも度を超えた便宜供与などがたびたび問題視され、健全化に向けた環境整備が官民双方で進められてきた経緯があります。ただ、保険会社が代理店の取り分を一方的に決定できるとして批判も根強い「代理店手数料ポイント制度」などを背景として、依然としていびつな力関係が解消されていないとの指摘があることは、業界内ではほとんど常識となっています。

7月に発足した金融庁の新体制では、幹部名簿に保険監督業務の経験者が多く名を連ねています。岸田前政権下にスタートした「資産運用立国」政策への対応に主要リソースを集中させてきた布陣を見直して、生損両面で保険業界の"常識"に挑み、必要であれば行政処分の実施を躊躇しない姿勢を、今回の処分を通じて改めて見せつけた形です。

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著者情報

川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
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