finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
こたえてください支店長~投信窓販における顧客本位を実現するために~

「支店長! ゴールベースアプローチをすれば、お客さま本位の提案になるということでよいですか?」

森脇 ゆき
森脇 ゆき
フィデューシャリー・パートナーズ 代表
2025.05.23
会員限定
「支店長! ゴールベースアプローチをすれば、お客さま本位の提案になるということでよいですか?」

投信販売に徹底した顧客本位の姿勢が求められる中、現場からは戸惑いや不安の声も聞かれます。若手、ベテランを問わず真のフィデューシャリー・デューティーを実現するにはどうすればいいでしょうか。これまで2000人以上のお客さまに「あなたのための」資産アドバイスを行ってきた株式会社フィデューシャリー・パートナーズの森脇ゆきさんが、皆さんのお悩みに答える連載、第19回目です。

Q:職員「ゴールベースアプローチをすれば、お客さま
本位の提案になるということでよいですか?」

A: 支店長「そうですね。当社としての自主KPIにもなっていますから、積極的に取り組んでほしいと思います」

 

森脇's Answer:

ゴールベースアプローチは手段のひとつであって、これそのものが顧客本位の業務運営の実践を意味するものではありません。この支店長の回答は自金融機関のKPIを達成することに重点を置いた回答であり、顧客本位の活動についての理解がまるでありません。

ゴールベースアプローチは万能ではない

NISAの普及は国民の資産形成にとって望ましいことです。それまで個人で投資を行っていたのは富裕層など、まとまった資金を保有している人が中心でしたが、NISAが開始されて以降、まとまった資金のない一般生活者も投資をするようになりました。自助努力で老後の年金を補完することが主たる目的ですが、このような資産形成としての投資には多くの場合“ゴール”が存在します。それは定年退職です。収入がなくなる定年退職後に取り崩すことを想定し、そのための資金を現役時代に用意しようというわけです。このように明確なゴールを設定できる資産形成としての投資を行う人には、ゴールベースアプローチは有効であると言えるでしょう。

一方、余裕資金の運用としての投資を行う富裕層の場合、その投資活動にゴールを設定することが不適当であることが少なくありません。まとまった資金が常に投資に振り向けられ、相場に応じてリバランスを行ったり、必要があれば現金化して取り崩したり、利回り部分を消費に回したり、その時の状況に合わせるという構えが基本です。さらに次の世代へ相続され、永続的に投資されることも多くあり、そこにゴールはありません。

大まかに言っても、資産形成としての投資と資産運用としての投資とでは目的が異なっており、リスクに対する捉え方も違えば、提案方法やフォローの仕方も当然違ってきます。顧客本位とは、お客さま一人ひとりに合わせて対応するという基本を思い起こしてほしいのです。私たち対面の金融機関が長らくお付き合いしている、そしてこれからも深くサポートしていくのは、ゴールベースアプローチでは必ずしも適切に対応できるわけではない、大口のお客さまも多いのではないでしょうか。

設定したゴールを過信しすぎず、顧客の現状をきちんと把握する

雇用されている労働者の多くに定年退職というものがあるという点で、ある種のゴールはあります。しかし、それ以外においてゴールを決めて投資をするという考え方は要注意です。老後資金という長期の資産形成を除けば、住宅や車の購入、進学、結婚などのお金の工面においては預貯金や融資など投資以外の方法も含めて提案することが望ましいからです。そもそも資金に余裕が多くない一般生活者が、必要資金を運用だけで増やそうと考えるのは避けるべきです。

ゴールベースアプローチが取り上げられる際に、ライフプランも同時に語られることが多いと思います。今後のライフイベントを見越しておき、必要になる資金を計画的に用意しておきましょう、といった言説をよく見聞きします。夢や目標を持つのは良いことです。しかし、人生とは本質的に何が起きるか分からないものであり、そこに細かくプランを立てるということにどれほどの意味があるのでしょう。私たちはコロナ禍を経験しました。それ以前には想像もできなかった事態であり、その渦中では数カ月先の不確実性も実感しました。その後も、世界情勢は目まぐるしく推移し、物価は上昇し、雇用情勢など私たちを取り巻く環境は大きく変化しました。社会の有り様だけでなく、個々人においても思わぬ転機が訪れるものです。そのような中で、ライフプランを組み立てて、老後にいくら必要、いくらあれば安心という議論はあてになりません。

長年多くのお客さまと接していて思うことは、お客さまの人生は実に色とりどりであり、計画通りにレールの上を進んでいく人のほうが珍しいということ。不確実な将来に不安を覚えるのは自然なことです。そこで必要なことは、ゴールを定めてそこに向かうためのガイドではなく、リスクを想定しながらそれに備え、不安を軽減するためのサポートをすることだと思います。

その上で重要なことは今のお客さまを知ることです。現状を知ることが最優先です。預貯金が少なく、不測の事態に備える資金がない人には円での預貯金を案内しつつ、インフレリスクに対抗するための資産形成としての投資の案内も必要です。お客さまの現状や価値観をよく観察し、今の生活にどれだけ重きを置くのか、将来のためにいくら残すのか確認してください。状況が変われば今の決定も当然変わるのでしっかりフォローしてください。将来のことは常に「分からない」という姿勢で話し合うことが信頼を生みます。不安をあおった金融商品の保有ではなく、常に寄り添う皆さんの存在がお客さまの安心になることを願っています。

支店長は現場に則したルールづくりに貢献を

多くの金融機関において顧客本位の業務運営指針やルールが、一般生活者の資産形成としての投資と、資産に余裕のある人の資産運用としての投資を混同したものになっていることが散見されます。現場はなんとか折り合いをつけながら、時にはお客さまに譲歩していただきながら、ルール内で活動しています。お客さま本位の活動は、お客さまが主役、接する担当者が準主役です。支店長は現状の方針やルールが現場の活動を阻害していないかを点検してみてください。支店長は現場の声を代表できる存在です。ぜひお客さまの現状を吸い上げ、本部へ提言し、お客さま本位の活動をするための基盤づくりに貢献していただきたいと思います。

Q:職員「ゴールベースアプローチをすれば、お客さま
本位の提案になるということでよいですか?」

A: 支店長「そうですね。当社としての自主KPIにもなっていますから、積極的に取り組んでほしいと思います」

 

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
1

関連キーワード

  • #フィデューシャリー・デューティー
  • #投信窓販
前の記事
「支店長! 売れ筋の投資信託を3つ覚えて売れるようになりました。全ての商品を覚える必要はありますか?」
2025.04.25
次の記事
「支店長! 一般職に投信のセールスをしろとおっしゃいますが、日常業務が忙しくてとても無理です!」
2025.06.20

この連載の記事一覧

こたえてください支店長~投信窓販における顧客本位を実現するために~

「支店長! 今の時代、対面の営業はネット取引ができないお客さまのためにあるのですよね? であれば、いずれこの仕事はなくなりますよね?」

2026.08.21

「支店長! お客さまとの雑談が大切とおっしゃいますが、何を話していいかわかりません。時間もありません!」

2026.07.17

「支店長! 接客について、先輩方のように自信が持てません。どうしたら自信が持てるようになりますか」

2026.06.19

「支店長! 研修は受けたのですが、投信をセールスできる気がしません。慣れるしかないのでしょうか?」

2026.05.22

「支店長は投信販売の経験がありませんよね? 契約を取れと簡単に言わないでください!」

2026.04.17

「支店長! お客さまから商品選びを丸投げされてしまいます!」

2026.03.19

「支店長! 私たちが投資信託を販売する目的は何ですか?」

2026.02.26

「支店長! ノルマから解放されたいです!」

2026.01.23

「支店長! 金利が上昇しているのだから預貯金や円保険で十分です! お客さまにリスクの高い投資商品を提案する必要なんてないですよね?」

2025.12.22

「支店長! お客さまへ良い提案をするためのコンサルティング能力はどうやって向上させればいいですか。何に関心を持つべきでしょう」

2025.12.03

おすすめの記事

SBI証券の売れ筋は国内株「4.3ブル」に脚光、アクティブファンドの「WCM」や「世界のベスト」にも見直し

finasee Pro 編集部

常陽銀行の売れ筋で「日経225ノーロード」がトップを堅持、「ロボティクス」がジャンプアップ

finasee Pro 編集部

福岡銀行で「国内株」人気が浮上して米国テクノロジー株は後退、第7位浮上の「グローバル・ベスト」に火が付くか?

finasee Pro 編集部

中国銀行で「パワーテクノロジー株式」が大きく後退し、「世界のベスト」や「日経225」が浮上

finasee Pro 編集部

「支店長! 今の時代、対面の営業はネット取引ができないお客さまのためにあるのですよね? であれば、いずれこの仕事はなくなりますよね?」

森脇 ゆき

著者情報

森脇 ゆき
もりわき ゆき
フィデューシャリー・パートナーズ 代表
信用金庫の預金業務担当を経て信託銀行に勤務、個人向け資産アドバイスを担当。担当総顧客数は約2000人、不動産・相続相談を含む総合的な資産アドバイスを経験する。深く学ぶにつれて、働く意義、社会貢献、自分にとっての良い仕事とお客さまの最善の利益を追 求するため、独立を決意。2018年、フィデューシャリー・パートナーズを設立。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
SBI証券の売れ筋は国内株「4.3ブル」に脚光、アクティブファンドの「WCM」や「世界のベスト」にも見直し
「支店長! 今の時代、対面の営業はネット取引ができないお客さまのためにあるのですよね? であれば、いずれこの仕事はなくなりますよね?」
野村證券で「半導体」や「宇宙」などがランクダウン、安定資金流入の「のむラップ・ファンド」の上昇目立つ
常陽銀行の売れ筋で「日経225ノーロード」がトップを堅持、「ロボティクス」がジャンプアップ
テクノロジー関連の成長とテーマ型ファンドへ投資する際の注意点
顧客本位と投信ビジネスの成長を両立させるアクティブファンド活用論
中国銀行で「パワーテクノロジー株式」が大きく後退し、「世界のベスト」や「日経225」が浮上
【第1回】株式ファンドは何を見て選ぶのか
みずほ銀行で「IGO」が人気ファンドとして定着、キャピタル社が運用するアクティブファンドがランクアップ
個別商品から、経営の仕組みへ―金融庁モニタリング結果(FDレポート)が示した顧客本位の次の段階―
「支店長! 今の時代、対面の営業はネット取引ができないお客さまのためにあるのですよね? であれば、いずれこの仕事はなくなりますよね?」
テクノロジー関連の成長とテーマ型ファンドへ投資する際の注意点
みずほ銀行で「IGO」が人気ファンドとして定着、キャピタル社が運用するアクティブファンドがランクアップ
福岡銀行で「国内株」人気が浮上して米国テクノロジー株は後退、第7位浮上の「グローバル・ベスト」に火が付くか?
三菱UFJ銀行で「日経225」人気が継続するものの「S&P500」はランク外寸前、大幅下落の「日経半導体株」は?
金融庁のバージョンアップ宣言に見る‟攻め”と‟守り”のレトリック
【第1回】株式ファンドは何を見て選ぶのか
常陽銀行の売れ筋で「日経225ノーロード」がトップを堅持、「ロボティクス」がジャンプアップ
中国銀行で「パワーテクノロジー株式」が大きく後退し、「世界のベスト」や「日経225」が浮上
個別商品から、経営の仕組みへ―金融庁モニタリング結果(FDレポート)が示した顧客本位の次の段階―
【第1回】株式ファンドは何を見て選ぶのか
佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」第20回:生活道路の「30キロ規制」が各セクターにもたらす意外な影響とは

個別商品から、経営の仕組みへ―金融庁モニタリング結果(FDレポート)が示した顧客本位の次の段階―
「売る」から「支え続ける」へ――「プログレスレポート2026」が示す資産運用サービス改革の現在地
顧客本位と投信ビジネスの成長を両立させるアクティブファンド活用論
「支店長! 今の時代、対面の営業はネット取引ができないお客さまのためにあるのですよね? であれば、いずれこの仕事はなくなりますよね?」
広島銀行の売れ筋で「ポラリス」と「世界経済インデックス」が逆転、米国株は「S&P500」より「メジャー・リーダー」
マネックス証券で「日経半導体株」が大きくランクダウン、「オルカン」「WCM」「世界のベスト」を再評価
2026年3月期の地銀・第二地銀「預り資産取扱い動向」を読み解く
野村證券で「半導体」や「宇宙」などがランクダウン、安定資金流入の「のむラップ・ファンド」の上昇目立つ
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2026 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら