finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート

銀行・保険会社による暗号資産解禁案、金融庁がにじませた「躊躇」を指摘する声も。その理由とは…?

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2025.11.04
会員限定
銀行・保険会社による暗号資産解禁案、金融庁がにじませた「躊躇」を指摘する声も。その理由とは…?

銀行や保険会社による暗号資産の保有に賛否分かれる――金融庁で10月22日、金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」第4回会合が開かれ、事務局を務める金融庁側が、銀行や保険会社による暗号資産の保有を条件つきで解禁する方向性を提示しました。有識者委員側からはおおむね賛同する意見が上がった一方、京都大公共政策大学院教授の岩下直行委員は「伝統的金融との統合には慎重であるべきだ」と発言しました。

現行監督指針は投資保有を禁止

銀行が暗号資産を保有することは厳密に言えば、現行法令上も完全に禁止されているわけではありません。ただ、監督指針のレベルでは、投資目的での保有が禁止され、投資行為に該当しない「必要最小限」程度に保有する場合においても、銀行の運営に重大な損害が生じないよう十分な態勢整備をすることが求めるという具合に、ハードルが高めに設定されています。

ワーキング・グループのこれまでの議論では、暗号資産に対する金融商品取引法の適用が既定路線化しています。

これを踏まえて金融庁は今回の会合で、十分なリスク管理・態勢整備を前提に、銀行・保険会社による投資目的での暗号資産保有を認める方向性を示しました。

一方、銀行本体が暗号資産を単に保有するだけでなく、発行・売買を手掛けることには、引き続き慎重な姿勢を示しました。また会合では、証券会社が暗号資産を手掛ける際のハードルを実質的に引き下げる案も浮上しました。

 

出席した有識者委員側からは、金融庁の提示した案におおむね賛同する声が聞かれました。ある委員は「海外の無登録事業者などと比べコンダクトリスクなどへの取り組みが進んでいる銀行・保険グループは、相対的に、社会からの信用度が高い。参入にあたっては、財務内容や既存の金融システムへの影響を十分に考慮した上で、一定の規制をかけつつ健全な体制整備を行ってほしい」と述べました。

 

証券会社が「防御線」に?

一方、伝統的金融とブロックチェーン技術の融合策に批判的な論客として知られる京都大学公共政策大学院教授・岩下直行委員は「暗号資産の構造的リスクを考えれば、全面的な制度統合はもっと慎重に考えた方がよいのではないか」と主張しました。

事務局案については、「証券会社を間に置いて、(伝統的金融である銀行・保険と暗号資産の)統合を進めようしている」との解釈を示し、「銀行と保険の領域については、伝統的金融に暗号資産のリスクが波及しないよう、制度上の防御線を残したまま限定的に関与させていくという非常に微妙なバランスの上に立っている」と指摘。「今回の事務局提案自体に、完全な統合への『ためらい』を感じる。包摂しながらも基本的には実際には距離を置くという、さじ加減の難しさがある」と話しました。

また、アサヒビール、アスクルなどで発生したランサムウェア事案に触れ、「こうした犯罪の背後に、匿名での身代金受け渡しを可能にした暗号資産の仕組みがあることは明らかだ」と指摘。「暗号資産は身代金の決済やテロ資金の調達の手段として、実体経済の裏側で犯罪を支える基本的な仕組みとして定着してしまっており、暗号資産が社会にもたらした負の影響の大きさは明らかだ」と述べました。その上で、「監督可能な部分だけを切り取って綺麗な箱庭を整備しようとしても、制度的に整備された交換業が結果として、資金洗浄など不正行為の入口・出口として利用されてしまうリスクがある」と訴えました。

 

証券会社による暗号資産取引のハードル引き下げについても、「証券市場は本来、企業の成長や社会的価値の創出を資本の力で支えるという理念的な基盤があったはずだ。大手証券会社や取引所のIR資料、テレビの広告などを見ても、『社会に資する投資』『持続的成長への貢献』といった言葉が繰り返し強調されてきた。はたして証券業界はこうした理念を保ったまま、分散型の新しい暗号資産を、自分たちのビジネスの中に統合していけるのか」と疑義を呈しました。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #法律・制度

おすすめの記事

IBMから画商に転身して抱いた"違和感"の正体とアート市場の「リアル」

川辺 和将

成長と財源の両立に具体策はあるか?野党「NISA再強化提言」に見る多党制時代の“建設的議論”のあり方

文月つむぎ

2025年の新規設定額トップは伝統的な株式・債券のバランスファンド、新しい投資アイデアを提案する新ファンドも続々 =25年11月新規設定ファンド

finasee Pro 編集部

米国経済 Deep Insight 第14回
年末商戦の出足が示す米国消費の持続力

窪谷 浩

⑫自社株評価から考える相続対策の本質

木下 勇人

著者情報

川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
“霞が関文学”で読み解く金融界⑤ 表題は「FDレポート」なのにFDを突き放す当局
IBMから画商に転身して抱いた"違和感"の正体とアート市場の「リアル」
2025年の新規設定額トップは伝統的な株式・債券のバランスファンド、新しい投資アイデアを提案する新ファンドも続々 =25年11月新規設定ファンド
経営、本部、販売現場が価値観を共有し「真のコンサルティング営業」の実践へ case of ちゅうぎんフィナンシャルグループ/中国銀行
「AI以外はほぼリセッションに近い」米国経済はAIバブルか? ―強さと弱点から見通す2026年“変わりゆく”世界経済と投資環境
【文月つむぎ】日証協の「個人投資家意識調査」を熟読すべし 新規投資家層の早期失望に備えよ
マン・グループの洞察シリーズ⑫
金に投資する意味とは何か
10年国債利回り2%接近でみずほ銀行の売れ筋に単位型ファンド、利回りニーズをとらえた人気ファンドとは?
三菱UFJ銀行の売れ筋は「日経225」に人気集中、「純金」に代わって「オルカン」人気が復調
米国経済 Deep Insight 第14回
年末商戦の出足が示す米国消費の持続力
“霞が関文学”で読み解く金融界⑤ 表題は「FDレポート」なのにFDを突き放す当局
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【アクティブファンド編】
10年国債利回り2%接近でみずほ銀行の売れ筋に単位型ファンド、利回りニーズをとらえた人気ファンドとは?
「AI以外はほぼリセッションに近い」米国経済はAIバブルか? ―強さと弱点から見通す2026年“変わりゆく”世界経済と投資環境
利益相反リスクを内包する日本の「総合証券モデル」「顧客本位」の下で求められる「顧客は誰か」という定義
「遵守か説明か」から「遵守か合併か」に――2026年の地銀政策はどこへ?金融審「地域金融力WG報告書案」を深読み
【運用会社ランキングVol.5】IFA法人からは「キャピタル」、「フィデリティ」、「アライアンス・バーンスタイン」の米系3社が盤石の高評価/IFA法人編
2025年の新規設定額トップは伝統的な株式・債券のバランスファンド、新しい投資アイデアを提案する新ファンドも続々 =25年11月新規設定ファンド
三菱UFJ銀行の売れ筋は「日経225」に人気集中、「純金」に代わって「オルカン」人気が復調
経営、本部、販売現場が価値観を共有し「真のコンサルティング営業」の実践へ case of ちゅうぎんフィナンシャルグループ/中国銀行
経営、本部、販売現場が価値観を共有し「真のコンサルティング営業」の実践へ case of ちゅうぎんフィナンシャルグループ/中国銀行
【金融風土記】東日本大震災からまもなく15年、福島の金融勢力図を読む
「中途半端は許されない」不退転の覚悟で挑むリテール分野への新たなるチャレンジ case of 三菱UFJフィナンシャル・グループ
【プロはこう見る!投資信託の動向】
NISAに必要か?「毎月分配型」「債券メイン」ファンド、「特定の年齢層対象の制度」
新たな商品・制度の導入は、投資家のリスク許容度・理解度が鍵
【運用会社ランキングVol.1】販売会社が運用会社に求めるものは、運用力か人的支援か? 2025年の評価を発表!
“霞が関文学”で読み解く金融界⑤ 表題は「FDレポート」なのにFDを突き放す当局
長野市vs松本市"不仲説"を乗り越え統合の八十二銀・長野銀が、「もう取引しない」と立腹の取引先と雪解けに至るまで
【運用会社ランキングVol.4】野村アセットマネジメントが2年連続トップ、3位に急浮上したのは大和アセットマネジメント/ゆうちょ銀行・郵便局編
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【アクティブファンド編】
「遵守か説明か」から「遵守か合併か」に――2026年の地銀政策はどこへ?金融審「地域金融力WG報告書案」を深読み
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら