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「動画を上げるぞ」「マスコミに流すぞ」に毅然と対応できる?――日証協の新カスハラ対策マニュアルの中身とは

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2025.10.22
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「動画を上げるぞ」「マスコミに流すぞ」に毅然と対応できる?――日証協の新カスハラ対策マニュアルの中身とは

「貯蓄から投資へ」の流れが強まり投資の裾野が広がる一方、金融機関にとって頭が痛いのが、後を絶たない、理不尽なクレームを含むカスタマーハラスメントの問題です。日本証券業協会は10月の定例会長会見で新たなカスハラ対策について公表。証券会社に特有の迷惑行為を9つに分類したうえで、それぞれ具体的な対応方針を示しました。

25年4月に東京都でカスハラ防止条例が施行されるなど、カスハラ対策に向けた機運が社会全体で高まっています。

証券業界ではもともと、ネットチャネルを中心とする事業者の間で、先行的にカスハラ対策について協議が行われていましたが、対面・非対面に関わらず業界全体の課題として取り組もうと、日証協は今年2月、カスタマーハラスメント対応検討会(主査:野村証券)を設置。「証券業界におけるカスタマーハラスメント対策共通マニュアル」を作成し、このたび公表しました。

 

ガイドラインは、カスハラを「お客様等からのクレームや要望のうち、要求内容の妥当性に照らして、その実現手段や態様が社会通念上不相応であり、従業員の就業環境を害する行為」と定義。証券業界でよくある迷惑行為の類型として、以下の9つを挙げています。

 

(1)「お前のせいで損をした」「責任を取れ」など暴言型

(2)「名前は覚えた」など威迫・脅迫型

(3)閉店時間を過ぎても帰らないなどの長時間拘束型

(4)短時間のうちに同じ内容のクレームを繰り返すなどのリピート型

(5)「マスコミに流す」「SNSで炎上させる」などの権威型

(6)投資の失敗を理由に補償を迫るなどの要求型

(7)食事やプライベートでの接触を求めるなどのセクハラ型

(8)SNS等での誹謗中傷型

(9)カウンターを叩く、資料を投げつけるなどの暴力型

 

こうした類型に当てはまる迷惑行為を受けた場合にどのような対応を取るべきか、ガイドラインではそれぞれ具体的に記載されています。おおまかに整理すれば、状況に応じて「記録・報告」、「切電(対面であれば退去命令)」、「警察への相談・通報」の3つを使い分けることが基本とされています。

 

たとえば電話対応で侮辱的発言を繰り返し受けた場合には「これ以上の対応はできませんので失礼します」と電話を切るといった対応を促しています。また、対面の長時間拘束型であれば、「本日は○○分程度でのご案内となります」と事前に時間を明示した上で、堂々めぐりに陥ったら「これ以上のご対応は致しかねます。お引き取りください」と伝え、それでも応じない場合には警察への通報を警告するという対応例を示しています。

 

マニュアルは直接的に現場業務に強制力を持つわけではなく、各社が自社マニュアルの作成・改善の際に参考資料として活用することが想定されています。

 

また、この日の会見では証券口座乗っ取り事案を受けて施行した改正ガイドラインについても説明。改正ガイドラインは、フィッシングに耐性のある多要素認証の実装必須化、認証失敗時のアカウントロックなどの方向性を示し、26年6月末までの対応を各社に求めています。協会幹部は「例えば地場証券のように、対面営業が中心でありリスクが異なる会社も存在するので、原則として2026年6月までし、実施にあたっては会社の実情に応じたきめ細かな対応が必要になると、協会でも考えている」と述べました。

 

新たな政権に求めるものを問われ、日比野隆司会長は「どういった政権の枠組みになるにせよ、マクロ的には、適切な物価対策や実質賃金の上昇に向けた取り組みを通じて、持続的で健全な経済成長を実現すべく政権運営をしていただきたい。協会として特に申し上げなければいけないのは、今、『貯蓄から投資へ』がようやく動き出し、加速局面に入ろうとしているということだ。資産運用立国とも言われるが、資産形成を支える環境整備、リスクマネーが新しい産業に向かっていく良い循環を作るべく、動き出した取り組みをしっかりと継続していただきたい」と述べました。

 

政権の在り方が変わった後も、岸田政権が作り出した投資促進策の継続を期待する協会の立場を、改めて明確に示した格好です。

一方で、穿った見方をするなら、「資産運用立国とも言われる…」という協会長の微妙な言い回しからは、「立国」をスローガンとして打ち出した岸田文雄氏やその周辺が影響力を保ってきた勢力図に変化が生じる可能性を否定できないとの認識もうかがえます。

 

(※会長会見は高市氏の首相就任が確実になる前に行われました)

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著者情報

川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
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