山口FG、ホテル業者との合弁会社で温泉地区を再生
地方の再開発に向けた主な取組事例の一つとして地銀協が取り上げたのが、山口フィナンシャルグループによる長門湯本温泉の再生プロジェクトです。
長門市によると、およそ室町時代に寺の住職が座禅中に住吉大明神からのお告げによって発見したという霊験あらたかな伝説を持つ長門湯本温泉は、江戸時代には藩の接待どころが置かれ、藩主もたびたび入湯に訪れたという歴史を持ちます。
昭和の中頃、温泉地区内の旅館で旅館協同組合が設立され、高度経済成長かに旅館が大型化。バブル崩壊後には団体観光客は減少し、1997年のNHK大河ドラマ「毛利元就」放映による一時的なブーム期を例外として、来訪者の減少傾向が続いていました。年間宿泊客数は1983年(39万人)にピークをつけましたが、2010年代にはすでに20万人を切っています。
山口FGは温泉地区一帯の再活性化を促すため、大規模リノベーションを実施。ホテル業者と共同出資した合弁会社により老舗旅館「六角堂」の事業を承継し、2025年3月に「SOIL Nagatoyumoto」としてリニューアルオープンしました。
山口FGは地域再生に関連して、出融資等のファイナンスだけでなく承継事業者の選定、合弁会社への経営参画、補助金申請支援、広告宣伝支援、イベント企画·開催など、多面的に支援を実施したといいます。
愛媛銀行は高度化会社で販路拡大支援
第二地銀協は会合で、「地域金融力」の取組事例として、愛媛銀行による、銀行業高度化等会社の活用を通じた販路拡大支援のケースを紹介しました。
同行は県産品の販路拡大を目的として、銀行業高度化等会社の認可制度を活用し、地元の金融機関·印刷会社·放送局と共同出資し地域商社を設立。運営するネットショップ「22-Ehime」では、地元産品を全国へ販売しています。カタログギフトは第4弾を販売中で、デジタル支店「HandyBank支店」専用定期の特典や株主優待にも活用しているといいます。
また、愛媛県内中核企業とスタートアップ企業とのオープンイノベーションにより新規事業の創出を目指す伴走支援を実施。2020年から「ひろぎん新規事業創出プログラム」開催しており、2025年度までに延べ20社の県内を代表する企業が参加し、様々な協業案を創出しています。
届出制への移行、「一定業務」の追加の要望も
ワーキンググループにおけるこれまでの議論では、地銀再編を後押しする資金交付制度の延長・拡充が焦点化しつつありますが、愛媛銀行などが既に活用している銀行業高度化等会社に関する規制緩和も俎上に載せられています。
銀行業高度化等会社をめぐっては、すでに2021年の銀行法改正で規制緩和を実施。高度化会社のうち「一定の高度化等業務」を行う事業者について認定基準が引き下げられ、非上場の地域活性化事業会社に対する議決権100%の出資が解禁されました。
しかしこの「一定の高度化等業務」の範囲はあらかじめ限定されています(フィンテック、自行アプリやITシステムの販売、登録型人材派遣、障碍者雇用促進法に係る特別子会社、地域商社、データ分析・マーケティング・広告、ATM保守点検、成年後見制度に関する業務)。地域課題が多様化・複雑化する中で、既存の枠組みにとらわれず、銀行の知見やリソースを地域再生に十分活用できるよう、更なる規制緩和を求める声が上がっているのです。
今回の会合で、全国信用金庫協会は「一定の高度化等業務」の中に、再エネ電力事業、観光・旅行業を追加することや、地域商社について一定の在庫保有を許容することを要望。第二地銀協も、認可制から届出制への移行による使い勝手の向上を要望しました。
第1回会合では有識者委員側から、「1つの金融機関が新しい業務に費やすリソースには限界があり、統合が進むことで高度化等会社がうまくいく確度も高まっていくのではないか」と、地銀再編と規制緩和を関連づけるような発言も上がっていました。全国の金融機関と地域経済がウィンウィンの関係を築いて互いの持続的成長力を高め合う環境が整備されるよう、建設的な議論が期待されます。