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【新連載】プロダクトガバナンス実践ガイド~製販情報連携の背景と事例
①プロダクトガバナンスが注目される背景と製販情報連携の重要性

宮崎忠夫
宮崎忠夫
三井住友DSアセットマネジメント商品・アドミニストレーション部門プロダクトガバナンス担当
2025.11.05
会員限定
【新連載】プロダクトガバナンス実践ガイド~製販情報連携の背景と事例<br />①プロダクトガバナンスが注目される背景と製販情報連携の重要性

 

1. はじめに

皆様、こんにちは。三井住友DSアセットマネジメント株式会社の宮崎忠夫と申します。新卒入行した銀行では為替や外貨資金・円資金の市場業務を担当、運用会社では主に投資信託の組成・マーケティング等の業務に携わってきました。現在、プロダクトガバナンス担当として関連各部と協同で業務を遂行する一方、投資信託協会「プロダクトガバナンスの実効性確保に向けた検討部会」の部会長を務めています。

本連載では、プロダクトガバナンスと製販情報連携の重要性について、3回にわたり詳しく解説していきます。第1回目となる今回は、プロダクトガバナンスが注目される背景と製販情報連携の重要性についてお話しします。

 

2. プロダクトガバナンスが注目される背景 

資産運用立国実現プラン  ~成長と分配の好循環を目指す~

日本政府は、家計の資金が投資に向かい、企業価値向上の恩恵が家計に還元されることで、更なる投資や消費につながる「成長と分配の好循環」の実現を目指し、インベストメントチェーンを構成する各主体に対する取組を進めています。2022年には「資産所得倍増プラン」が策定され、家計の安定的な資産形成を支援するため、NISAの抜本的拡充・恒久化や金融リテラシーの向上が進められました。また、企業の持続的な成長や金融・資本市場の機能向上に向けて、コーポレートガバナンス改革等の取組も進められました。そして、2023年12月に資産運用業とアセットオーナーシップの改革を図るべく「資産運用立国実現プラン」が策定されました。

 

資産運用業・アセットオーナーシップ改革  ~残されたピース~

資産運用立国実現プランの中で、資産運用業とアセットオーナーシップの改革は、インベストメントチェーンの「残されたピース」として位置づけられています。これまでの取り組みで、家計の安定的な資産形成に向けた支援や企業の持続的成長の促進が進められてきました。今般、両者をつなぐ「運用」を担う資産運用業の改革も進めていこうというものです。

2024年1月のNISA改革における投資枠の大幅な拡大、非課税期間の無期限化等により、利用口座数は大幅増加、株高等市場環境にも助けられ運用を担う家計の運用資産は大幅に増加しています。また投資される側の企業に対しては今年「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム2025」を公表し改革を継続し、投資先として魅力を高めることを後押ししています。

家計金融資産の運用を担う資産運用業が、顧客にとってより良い金融商品を提供できるようになれば、これらの動きと相乗効果が期待できると考えられています。

 
 
 

顧客の最善の利益に適った商品提供を確保するための枠組み=プロダクトガバナンスの実践

顧客の最善の利益に適った商品提供を確保するために必要なことが「プロダクトガバナンスの実践」だと2024年の金融審議会市場制度ワーキング・グループ報告書において指摘されています。「改革」の内容として謳われたため、従来の運用会社は「プロダクトガバナンス」が全くできていないと誤認されるケースが多々あると感じています。

「プロダクトガバナンス」の定義が「顧客に良質な金融商品・サービスを提供するために、金融商品やサービスの組成から運用、販売に至るまでの全プロセスにおいて、適切な運営・モニタリング・品質管理を行う体制のこと」と定義すると、非常に重要なことであることは間違いない一方、実際に全くできていないことは一般的にあり得ないのではないかと思います。従来から存在している「顧客本位の業務運営に関する原則」を多くの運用会社は採択しており、「顧客本位」の業務運営がある程度は浸透していると考えられるからです。

 

3. 製販情報連携の重要性

顧客本位の業務運営に関する原則に補充原則を追加

2024年に組成会社(運用会社)に求められる対応として、顧客本位の業務運営に関する原則に「プロダクトガバナンスに関する補充原則」が追加されました。前述の通り運用会社にもある程度趣旨は浸透しているなか、なぜわざわざ追加されたのでしょうか?私は二点理由があると思っています。一点目は、従来金融行政の中で販売会社と比較すると資産運用業があまり注目されて来なかったからだと思っています。スポットを当てることで、趣旨がより明確化されました。二点目は、商品が投資信託に限らないことを示すためです。「組成会社」という文言が使用されている通り、仕組債や保険等あらゆる金融資産が対象であることが表現されていると思います。

製販全体での取組の重要性

今回の補充原則で、従来の原則では触れられていない点が、補充原則3と補充原則4に記載されている「組成会社・販売会社間の情報連携」です。従来の運用会社と販売会社の関係だと、商品組成時・新規と取扱い時等は、運用会社から販売会社に対して、各種商品説明資料や研修資料を提供、販売員のみなさまに勉強会を開催しています。また相場急変時等も同様のことを実践しています。一方販売会社から運用会社に対しては、一般的に販売情報が提供されるケースは少ないと考えられます。

販売会社のデータ作成の負荷が大きい一方で、実際にどのように活用していくかは走りながら考えていくことが多いと思いますが、まずは「製販全体」で新たに取り組みが開始されることが重要だと思います。

 
 

4. まとめ

プロダクトガバナンスは、顧客の最善の利益を確保するための枠組みとして重要な役割を果たします。製販間の情報連携を強化することで、顧客にとって最適な金融商品を提供し、信頼を醸成することが期待されています。

次回の連載では、具体的な情報連携の枠組みとその実務について詳しく解説します。第1回目の内容が、皆様の理解の一助となれば幸いです。

 

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著者情報

宮崎忠夫
みやざきただお
三井住友DSアセットマネジメント商品・アドミニストレーション部門プロダクトガバナンス担当
1990年太陽神戸三井銀行(現三井住友銀行)入行、為替資金部、市場運用部等を歴任。2001年三井住友銀行、市場営業統括部、市場資金部等を歴任。為替、外貨資金、円資金、起債、市場企画と市場部門において幅広い業務に携わる。 2007年大和住銀投信投資顧問(現三井住友DSアセットマネジメント)、DC・VA推進室、投信サービス部長、商品第一部長兼再委託室長等を歴任。2019年三井住友DSアセットマネジメント、商品戦略(企画)部長。運用会社では主に投資信託の組成・マーケティング等の業務に携わる。現在、プロダクトガバナンス担当として関連各部と協同で業務を遂行。2024年投資信託協会「プロダクトガバナンスの実効性確保に向けた検討部会」の部会長。
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