個人投資家が“企業改革”の担い手になる──そんな新しい投資のかたちを提示しているのが「マネックス・アクティビスト・ファンド(MAF/まふ)」だ。2020年6月に運用を開始して以来、個人投資家と企業との“対話”をコンセプトに、日本企業の価値向上を実現してきた。
7月8日、MAF設立5周年を記念したトークセッションが都内で開催された。マネックスグループ会長で、MAFについても自ら「魂を込めて運用に関わっている」という松本大が登壇した。

個人の「声」が企業を動かす
アクティビスト投資は一般的に、機関投資家が主導するハイレベルな運用手法とされる。一方でMAFは、アクティビスト(物言う株主)型の投資信託でありながら、個人投資家が参画できる珍しいファンドだ。専用フォームを通じて個人投資家の意見を集め、それを企業とのエンゲージメント(対話)に反映している。企業価値の向上を目指して経営陣との対話を重ねながら、長期的なリターンを追求するスタイルは、他のファンドにはない特徴といえる。
つまり、投資家は「ただお金を預ける」だけではなく、「企業の未来に声を届ける」当事者にもなれるのだ。これは、投資とアクティビズムの新しいかたちとも言えるだろう。
現在の組み入れ銘柄はTBSホールディングス、IHI、しまむら、東宝など厳選された20社。単なる株式保有ではなく、企業に対して具体的な提案や対話を通じて、経営の質や資本効率を高めることに注力してきた。
MAFの運用方針の根底にあるのは、禅の言葉「啐啄同時(そったくどうじ)」。ヒナが殻の内側から突くとき、親鳥も外から殻をつつく──変化のタイミングを逃さず、企業の自発的な成長に対して外部からそっと後押しするという姿勢だ。
企業に一方的な要求を突きつけるのではなく、共に未来をつくるパートナーとして接する。それが、MAFが掲げるアクティビズムのスタイルだ。この5年間で、ファンドの提案をきっかけにガバナンス改善や株主還元の強化に踏み切った日本企業もある。その結果、株価が上昇して企業価値が高まったケースも多い。
「我々のチームは、運用がとても上手。圧倒的にいい」
MAFのパフォーマンスについて、松本氏はこう自負する。「我々のチームは、運用がとても上手なんです。この世界では圧倒的にいいので」
実際、現在の基準価額は5年前の設定時から2.1倍に上昇し、TOPIXやS&P500を上回るパフォーマンスをみせている。また、過去1年のシャープレシオ(ファンドがリスクに見合った収益を上げているのかを評価する指標)でも、MAFは国内株式ファンド全体の2位となっている。
MAFが掲げる“対話の投資”が現実の資本市場にインパクトを与えつつあることを示している。
コストは高め──それでもなお選ばれる理由
MAFの信託報酬は年率2.2%。加えて成功報酬も発生するため、S&P500やオールカントリー(全世界株式)などの低コストなインデックスファンドと比べると、コストがかかる面は否めない。さらに、少数銘柄に集中投資する設計上、基準価額の変動も大きくなる可能性がある。MAFは、いわば“高リスク・高エンゲージメント型”のファンドだ。
それでも多くの投資家がこのファンドに魅力を感じて順調な資金流入が続いているのは、コストを上回るリターンへの期待に加え、個人による投資が「社会を変える力」になり得るという手応えを感じられるからだろう。投資の“意義”を重視し、日本の成長を後押ししたい方にとって、MAFはこれからも有望な選択肢の一つになりえる。