株式市場の「底堅さ」と「政治の力」を印象付けた2025年
――2025年を振り返って、世界経済および金融市場の主な動き、流れは?
2025年は株式市場の「底堅さ」と「政治の力」を実感する、非常に印象的な一年だった。 市場は日経平均株価4万円近辺でスタートしたが、春先にはトランプ米大統領が掲げた関税政策への懸念から相場が大きく下振れする場面があった。しかし、この急落は結果的に一過性の「ノイズ」に過ぎず、相場は想像以上の弾力性を見せて早期に回復している。
後半の最大の転換点は、10月の自民党総裁選での高市早苗氏の新総裁選出。当初は本命視されていなかったため、市場にはポジティブなサプライズとなった。
さらに米連邦準備制度理事会(FRB)が9月に利下げを再開したことで米国株が上昇し、そこに高市政権誕生による期待感、さらにAI関連企業の株価急進が重なっていった。通常なら日米金利差縮小で円高に向かう局面だが、新政権への期待から円安基調が維持されたことも追い風となり、日経平均は5万円の大台を突破するに至った。
外部環境への警戒と政策効果による回復の「二段構え」に
――2026年の日本経済の見通しは?
2026年の日本経済は、「前半の外部環境への警戒」と「後半の政策効果による回復」という二段構えになると見ている。
前半の米国経済の減速懸念についてだが、最大の懸念材料は米国の景気にある。労働市場にほころびが見え始めており、AIによる職の代替が進むことで2026年前半には米国で雇用の減速やリセッション(景気後退)懸念が市場を揺らす可能性がある。これが日本経済にとっても一時的な重石となる。
後半の新政権と金融政策についてはこうした前半の流れの一方で、国内では高市政権による成長投資促進や、企業の資本効率改善への取り組みが続く。これらは日本株独自の追い風となる。また、日銀が追加利上げに動く可能性はあるが、政府の政策方針もあり頻繁な利上げは難しく、極端な円高進行は限定的だ。
日本企業の業績は底堅く推移すると見ている。日経平均株価の構成銘柄の増益率は、2025年度比でプラス12%程度を予想する。
電子部品・半導体、エネルギー関連、「リアル」アセットに注目
――2026年の株式市場の見通しについて、注目すべき投資テーマや投資妙味のあるセクターは?
電子部品・半導体(フィジカルAI)、エネルギー関連、「リアル」アセット(不動産・金・運輸物流)に注目している。
電子部品・半導体(フィジカルAI): AIが現実世界の物理的な動作を伴う「フィジカルAI」へと進展することで、高度な電子部品や半導体の需要がさらに拡大すると期待できる。
エネルギー関連: AIを稼働させるための莫大な電力需要に加え、日本の国策としてもエネルギー確保は最重要課題。
「リアル」アセット(不動産・金・運輸物流): AIへの置き換えが難しい「超リアル」な領域の価値が見直される。 運輸物流のような現場に加え、インフレヘッジや実物資産としての不動産、非鉄金属(金など)も重要なテーマとなる。
2026年12月に6万円を目指す展開に
――2026年の日経平均株価の高値、安値予想は?
安値予想:4万8000円(6月ごろ) 年前半は米国の労働市場悪化に伴う景気後退懸念や、過熱したAI投資への調整が入ることで、株価が押し下げられる局面がある。
高値予想:6万円(12月ごろ) 後半は、米国の景気減速を受けてFRBが利下げを積極的に進めることで「金融相場」へと移行。 割安感が出た日本株が見直され、年末に向けて上昇軌道を描く。
株価の「長期トレンド」を理解していれば慌てる必要はない
――2026年に投資家が意識すべき点、注意すべき点は?
2025年の春は、トランプ関税の影響で株価が大きく下がった。翻って2024年の夏には「令和のブラックマンデー」と呼ばれた株価急落局面もあった。
両年とも、大きな急落はあったがそれでも2025年11月末には史上最高値を更新した。相場に急落はつきものだが、それでも基本的には右肩上がりで推移し、また高値をとってくる。これが株価の長期的なトレンド、習性であると理解していれば急落に際しても慌てる必要なく投資を続けることができる。
マネックス証券
チーフ・ストラテジスト
広木 隆氏
上智大学外国語学部卒。神戸大学大学院・経済学研究科博士後期課程修了。博士(経済学)。帝京平成大学・人文社会学部経営学科教授。社会構想大学院大学・客員教授。国内銀行系投資顧問、外資系運用会社、ヘッジファンドなど様々な運用機関でファンドマネージャー等を歴任。2010年より現職。テレビ東京「モーニングサテライト」、BSテレビ東京「NIKKEI NEWS NEXT」等のレギュラーコメンテーターを務めるなどメディアへの出演も多数。
