今回のIFAサーベイでは、事業者ごとの残高規模とフィー収益比率の関係など、各社がビジネス戦略を検討する上で有益な、さまざまな統計データが整理されています――が、見どころを一つ挙げろと言われれば、プラットフォーマーに対する不平不満や要望をぶつけた生の声を読むことができる「所属金融商品取引業者に対するご要望・ご意見」の項目を選ぶ人も少なくないでしょう。
特に目立つのは、IFA事業者が情報発信を行う際に必要となる、プラットフォーマーによる厳格な広告審査に対する不満や要望です。「審査に時間がかかるため、機動力を持って動きにくい」といった意見や、「広告審査の緩和」「手続きの簡素化、基準の明確化」を求める声が見られます。
ある回答社は「YouTubeに投稿するのに、撮影して、文字起こしして、スライド審査して、全て管理されており、利息、利子の違いがあると撮影のし直しがあり、撮影してからアップまで2ヶ月もかかる」と訴えます。
証券会社の立場に一定の理解を示しつつ、顧客本位の観点でプロセスの改善を求める声もあります。別のある回答社は「エンドユーザーを保護するためだろうが、免許持っていない金融のインフルエンサーはなんでも言いたい放題で高額な塾などに勧誘している。顧客本位でやっている業者でも免許持っていると発信に制限がかけられ、エンドユーザーの保護にもなっていない過剰な広告審査はやめてほしい」と切実な思いを記しています。
不満の向こうにある構造的問題
広告審査の厳格さについてはもちろん、プラットフォーマーによる理不尽な意地悪や怠慢といったように話を単純化することはできません。問題の背後には構造的な課題があります。
そもそも金融商品仲介業者(IFA)の制度体系は「所属制」を基本として設計されています。所属先の金融機関(証券会社側)は仲介業者側を指導・監督する義務を負い、仲介業者が利用者に加えた損害を賠償する責任を負うとされています。見方によっては、本来は当局が果たすべき監督機能を外部化している仕組みと言えるでしょう。
問題の根源をたどっていくと、監督の権限と責任を証券会社に押し付けざるをえない状況へと追い込んでいる、金融庁や財務局のリソース不足という課題へと行き着きます。
金融庁内では数年前、金融商品仲介業とは別に、顧客に中立的な立場から総合的なアドバイスを提供する投資助言業の新枠を設置するといった議論が一時期、盛り上がりを見せていました。
しかしその後、計画がとん挫し、今や最初から議論そのものが無かったかのように葬り去られています。庁内からは「助言業は玉石混交であり、チェック態勢は既にいっぱいっぱい。新たな業の類型を作っても監督当局として責任を取り切れない」(金融庁関係者)という声が漏れ聞こえます。
当局のリソース不足はこのように積年の課題です。今年夏には金融庁の大規模な組織改編・増強が予定されていますが、資産運用業や保険業の監督強化にウェートが置かれており、仲介業分野でのリソース不足解消の見通しは立っていません。
こうした状況を踏まえれば、プラットフォームの垣根を越え、まずは事業者間で、実効的かつ効率的な審査の在り方について横断的に議論を進めることが重要でしょう。足元では実際に、所属先の枠を越えて証券会社とIFAが協調し、審査基準の見直しなど効率化を模索する動きもあると聞きます。広告審査の問題に限らず、フィー収益比率の引き上げ、コミッション依存からの脱却についても、事業者努力に加えて制度面を含め業界全体で立ち向かうべき課題と言えそうです。
プルデンシャル生命保険でこのほど発覚した不正な金銭授受などの不祥事は業法の枠を越えアドバイザーをめぐる制度体系の議論に新たな影を投げつつあります。金融庁の組織再編のタイミングと重なったことで、金融商品仲介業者を含む幅広い業界に、規制強化に向けた機運が飛び火する可能性も否定できない状況です。
生保業界の不祥事を他山の石に
サーベイでは事業者の間でコンプライアンス部門を自立化させる動きも広がっていることがうかがえます。ただし事業者の自主的努力への依存が行き過ぎれば、仮に規制強化の流れが加速した際、小規模事業者におけるリソース不足が深刻化し、健全な競争環境を歪めることにもなりかねません。
プルデンシャル生命の不祥事がもたらす影響を別の側面から見れば、銀証保など伝統的金融界を含め各業種の事業者が「顧客に寄り添うアドバイザー」を謳う中、大切な資金を預ける上でどの業界が本当に信頼できるか、歴史の長短にかかわらず選別する機運が高まりつつあるとも言えるでしょう。IFA市場の持続的な発展を目指すうえでは、他業界の騒動を他山の石としつつ、事業者とプラットフォーマーとが率直に意見を交わし、業界の未来を真剣に議論する機会がいっそう必要になりそうです。
(連載終わり)
