finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート

曲がり角のIFAビジネス(3)「我々は“一支店”ではない!」――プラットフォーマーと最適な協力関係を築くには?コンプラ自立化の広がりと広告審査の壁

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2026.01.30
会員限定
曲がり角のIFAビジネス(3)「我々は“一支店”ではない!」――プラットフォーマーと最適な協力関係を築くには?コンプラ自立化の広がりと広告審査の壁

インフルエンサーたちは無免許で言いたい放題なのに、審査を受ける必要があるIFAは動画公開まで数カ月……私たちはプラットフォーマーに「支店扱い」されているのでは?……IFA事業者にとって所属先である証券会社の協力はビジネス上の生命線ですが、信頼関係を構築・維持する上では、さまざまな悩みや不満の声も聞こえてきます。全国のIFA法人の状況を調査した「IFAエグゼクティブ・サーベイ2025」に寄せられた生の意見を踏まえ、広告審査の厳格さの背景にある構造的問題とともに、業界の持続的な発展に向けた論点を整理します。

今回のIFAサーベイでは、事業者ごとの残高規模とフィー収益比率の関係など、各社がビジネス戦略を検討する上で有益な、さまざまな統計データが整理されています――が、見どころを一つ挙げろと言われれば、プラットフォーマーに対する不平不満や要望をぶつけた生の声を読むことができる「所属金融商品取引業者に対するご要望・ご意見」の項目を選ぶ人も少なくないでしょう。

 

特に目立つのは、IFA事業者が情報発信を行う際に必要となる、プラットフォーマーによる厳格な広告審査に対する不満や要望です。「審査に時間がかかるため、機動力を持って動きにくい」といった意見や、「広告審査の緩和」「手続きの簡素化、基準の明確化」を求める声が見られます。

ある回答社は「YouTubeに投稿するのに、撮影して、文字起こしして、スライド審査して、全て管理されており、利息、利子の違いがあると撮影のし直しがあり、撮影してからアップまで2ヶ月もかかる」と訴えます。

証券会社の立場に一定の理解を示しつつ、顧客本位の観点でプロセスの改善を求める声もあります。別のある回答社は「エンドユーザーを保護するためだろうが、免許持っていない金融のインフルエンサーはなんでも言いたい放題で高額な塾などに勧誘している。顧客本位でやっている業者でも免許持っていると発信に制限がかけられ、エンドユーザーの保護にもなっていない過剰な広告審査はやめてほしい」と切実な思いを記しています。

 

不満の向こうにある構造的問題

広告審査の厳格さについてはもちろん、プラットフォーマーによる理不尽な意地悪や怠慢といったように話を単純化することはできません。問題の背後には構造的な課題があります。

そもそも金融商品仲介業者(IFA)の制度体系は「所属制」を基本として設計されています。所属先の金融機関(証券会社側)は仲介業者側を指導・監督する義務を負い、仲介業者が利用者に加えた損害を賠償する責任を負うとされています。見方によっては、本来は当局が果たすべき監督機能を外部化している仕組みと言えるでしょう。

問題の根源をたどっていくと、監督の権限と責任を証券会社に押し付けざるをえない状況へと追い込んでいる、金融庁や財務局のリソース不足という課題へと行き着きます。

 

 

金融庁内では数年前、金融商品仲介業とは別に、顧客に中立的な立場から総合的なアドバイスを提供する投資助言業の新枠を設置するといった議論が一時期、盛り上がりを見せていました。

しかしその後、計画がとん挫し、今や最初から議論そのものが無かったかのように葬り去られています。庁内からは「助言業は玉石混交であり、チェック態勢は既にいっぱいっぱい。新たな業の類型を作っても監督当局として責任を取り切れない」(金融庁関係者)という声が漏れ聞こえます。

 

当局のリソース不足はこのように積年の課題です。今年夏には金融庁の大規模な組織改編・増強が予定されていますが、資産運用業や保険業の監督強化にウェートが置かれており、仲介業分野でのリソース不足解消の見通しは立っていません。

 

こうした状況を踏まえれば、プラットフォームの垣根を越え、まずは事業者間で、実効的かつ効率的な審査の在り方について横断的に議論を進めることが重要でしょう。足元では実際に、所属先の枠を越えて証券会社とIFAが協調し、審査基準の見直しなど効率化を模索する動きもあると聞きます。広告審査の問題に限らず、フィー収益比率の引き上げ、コミッション依存からの脱却についても、事業者努力に加えて制度面を含め業界全体で立ち向かうべき課題と言えそうです。

 

プルデンシャル生命保険でこのほど発覚した不正な金銭授受などの不祥事は業法の枠を越えアドバイザーをめぐる制度体系の議論に新たな影を投げつつあります。金融庁の組織再編のタイミングと重なったことで、金融商品仲介業者を含む幅広い業界に、規制強化に向けた機運が飛び火する可能性も否定できない状況です。

 

生保業界の不祥事を他山の石に

サーベイでは事業者の間でコンプライアンス部門を自立化させる動きも広がっていることがうかがえます。ただし事業者の自主的努力への依存が行き過ぎれば、仮に規制強化の流れが加速した際、小規模事業者におけるリソース不足が深刻化し、健全な競争環境を歪めることにもなりかねません。

プルデンシャル生命の不祥事がもたらす影響を別の側面から見れば、銀証保など伝統的金融界を含め各業種の事業者が「顧客に寄り添うアドバイザー」を謳う中、大切な資金を預ける上でどの業界が本当に信頼できるか、歴史の長短にかかわらず選別する機運が高まりつつあるとも言えるでしょう。IFA市場の持続的な発展を目指すうえでは、他業界の騒動を他山の石としつつ、事業者とプラットフォーマーとが率直に意見を交わし、業界の未来を真剣に議論する機会がいっそう必要になりそうです。

(連載終わり)

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #金融庁
  • #IFA

おすすめの記事

IFA法人のパイオニア、GAIAが上場 中桐啓貴社長に聞く 
フィービジネスを日本で定着させるために

finasee Pro 編集部

曲がり角のIFAビジネス(3)「我々は“一支店”ではない!」――プラットフォーマーと最適な協力関係を築くには?コンプラ自立化の広がりと広告審査の壁

川辺 和将

日証協会長がNISA再拡充で「立国議連の後押し」に謝意、こどもNISAを口座増の“起爆剤”に

川辺 和将

中道改革連合「ジャパン・ファンド構想」の見過ごせないリスクと、実現に向けた論点

文月つむぎ

曲がり角のIFAビジネス(2)供給が先行気味の “オルタナティブ投資”はIFAの新たな活路になりうるか?

川辺 和将

AI関連は勝ち組と負け組に選別―2026年の投資戦略「高ボラティリティ時代」を乗り切る投資家の心得 ニッセイ基礎研究所・井出真吾氏に聞く

finasee Pro 編集部

著者情報

川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
中道改革連合「ジャパン・ファンド構想」の見過ごせないリスクと、実現に向けた論点
日証協会長がNISA再拡充で「立国議連の後押し」に謝意、こどもNISAを口座増の“起爆剤”に
第17回:「高校無償化」で加速する家計教育資金の大移動!影響を受ける意外な業種とは?
ドコモショップが「投資の入口」に? マネックス証券と連携、1月29日から一部店舗スタッフがNISA口座開設や積み立てをサポート
野村證券の売れ筋にみる2026年の活躍期待ファンド、「宇宙関連株」は「日経225」と「米国テック株」を上回るか?
曲がり角のIFAビジネス(3)「我々は“一支店”ではない!」――プラットフォーマーと最適な協力関係を築くには?コンプラ自立化の広がりと広告審査の壁
家計・企業・国家のリスクテイクを支える “国債消化策の基礎工事”を真剣に考える
「支店長! ノルマから解放されたいです!」
曲がり角のIFAビジネス(2)供給が先行気味の “オルタナティブ投資”はIFAの新たな活路になりうるか?
成長と財源の両立に具体策はあるか?野党「NISA再強化提言」に見る多党制時代の“建設的議論”のあり方
「支店長! ノルマから解放されたいです!」
第17回:「高校無償化」で加速する家計教育資金の大移動!影響を受ける意外な業種とは?
中道改革連合「ジャパン・ファンド構想」の見過ごせないリスクと、実現に向けた論点
2カ月連続で1兆円を超える資金流入で純資産残高が過去最高を更新、「オルカン」に圧倒的な資金流入=25年12月投信概況
曲がり角のIFAビジネス(2)供給が先行気味の “オルタナティブ投資”はIFAの新たな活路になりうるか?
曲がり角のIFAビジネス(1)多様化する収益源、信報低下圧力の中で持続可能なビジネスモデルとは?
運用現場で知っておきたい大口信用供与等規制の「5%ルール」
「IFAエグゼクティブ・サーベイ2025」注目ポイントを一挙解説(1)――ビジネス戦略編
「IFAエグゼクティブ・サーベイ2025」注目ポイントを一挙解説(2)――コンプライアンス・ガバナンス編
野村證券の売れ筋にみる2026年の活躍期待ファンド、「宇宙関連株」は「日経225」と「米国テック株」を上回るか?
野村證券の売れ筋にみる2026年の活躍期待ファンド、「宇宙関連株」は「日経225」と「米国テック株」を上回るか?
ファンドモニタリングは、どの指標を参照すればいいか
(5)バランスファンドのモニタリング② リスクは標準偏差だけでなく下方リスクにも注目
「地域金融力強化プラン」は逆から読むべし(2)地銀を追い込むモニタリングの多視点化、“北風とインセンティブ”
“霞が関文学”で読み解く金融界⑤ 表題は「FDレポート」なのにFDを突き放す当局
「支店長! ノルマから解放されたいです!」
第17回:「高校無償化」で加速する家計教育資金の大移動!影響を受ける意外な業種とは?
「地域金融力強化プラン」は逆から読むべし(1)存在しない終章と居心地悪そうな3施策
「地域金融力強化プラン」は逆から読むべし(3)高市政権による「運用立国」再解釈と、証券・運用・メガ・システム業界へのメッセージ
「IFAエグゼクティブ・サーベイ2025」注目ポイントを一挙解説(1)――ビジネス戦略編
2026年、日経平均「6万円」が射程距離となる理由 注目セクターと株価の見通し―マネックス証券 広木隆氏に聞く
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2026 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら