――暗号資産は資金決済法から金融商品取引法の適用範囲へ、決済手段から投資商品へと法律上の位置づけが大きく変わろうとしていますが、こうした日本の規制動向は、海外の目からどのように見えているのでしょうか。
米国でのジーニアス法成立(2025年7月)をきっかけに、多くの国の当局がデジタル資産に関する新たな制度的枠組みを構築するべく模索を続けています。従前からフィンテック分野で様々な先進的・実験的挑戦に取り組んできた日本の動向も、その延長上にあります。
その上で言えば、金融庁のこのたびの果断な措置は、まさに「資産」としての暗号資産の捉え方を転換することになると考えています。資金決済法から金融商品取引法の適用範囲に暗号資産を移行することは、すなわち金融市場に対する規制の下にそれを位置づけ直すことを意味します。不正取引防止、口座の管理、さまざまな審査への適合が求められることになり、証券会社など既存業態のライセンシングの枠組みにも影響を及ぼす可能性があるでしょう。
――金融庁は暗号資産ETFの解禁にも前向きな姿勢を見せています。
たしかに金融庁は暗号資産を組み込んだETFを既存の金商法の枠組みでサポートできるという手ごたえを得ている印象を抱いています。今後は、現物資産の裏付けを担保するカストディ業務をどれだけ強化できるかが、新たな市場を発展させるカギになることでしょう。インカムゲインをめぐる税制や情報開示に関するルールの整備、内部者取引の防止等とあわせて環境整備が進めば、日本は機関投資家による売買を含めた暗号資産ETF取引のハブに発展することもあり得ると考えています。
実際に東京はロンドン、シンガポール、香港と並び、デジタル資産の規制動向が世界中の注目を集めている都市の一つです。実際に、世界の多くの当局が日本の動向を踏まえて、デジタル資産に関して金融庁と連携を深めたいとポジティブに考えています。
――国内ではステーブルコインの分野にも注目が集まっています。円建てステーブルコインの発行・運営を手掛ける企業が現れ、金融庁の音頭で、有価証券の決済や大手商社を交えた大口決済に関する実証実験も進められているところです。一方、そもそも円建てステーブルコインにどれだけ需要があるのか、懐疑的な見方も根強くあります。
私は、円建てステーブルコインの成功を強く信じています。というのも、国境を越えた貿易におけるドル建てステーブルコインの代替として、大きな需要が見込めるからです。日本の金融システムに対する強い信頼性に裏打ちされて普及が加速すれば、流動性も高まり、クロスボーダー決済において円建てステーブルコインがいっそう使いやすいツールになるという好循環が生じるでしょう。
――金融システムの強固さが海外から評価される反面、顧客保護の制約の厳しさがイノベーションの重荷になっているというジレンマもあります。日本のフィンテック市場の未来をどう展望しますか。
そもそも人々が今も伝統的金融(TradFi)を強く支持している理由は、それだけの信頼があるからにほかなりません。一方、ブロックチェーン技術を用いた分散型金融(DeFi)への不信感が拭えないのは、信頼が完全には確立されていないからでしょう。そしてその信頼とは、投資家の保護から生まれ出るものです。
投資家保護に関する厳格な規制は既存のシステムを守り、結果的にそこで作り出される新たなシステムへの信頼向上にも繋がります。重要なのは、ただデジタル資産の導入を自己目的化することなく、イノベーションを社会的課題、経済的課題の解決に結びつけることです。現実のユースケースと厳格な投資家保護が組み合わされることは、事業者にとってのビジネスの発展にとっても大きな意義がもたらされることと確信しています。
写真:Global Finance & Technology Network (GFTN)提供
