1. 第1回の振り返りと第2回のテーマ
皆様、こんにちは。三井住友DSアセットマネジメント株式会社の宮崎忠夫です。前回は、資産運用立国実現プランや金融庁の「顧客本位の業務運営に関する原則」改訂を背景に、運用会社・販売会社間の情報連携がなぜ重要なのかを整理しました。
第2回となる本稿では、実際にどのような枠組みで情報連携を進めるのか、どんなデータがやり取りされるのか、実務の観点から解説します。
2. 製販情報連携の枠組み
情報連携の対象ファンド
情報連携は、想定顧客が限られるファンドに絞って実施されます。具体的には、以下の8類型が対象です。
なぜ一般的に販売している毎月分配型が対象になるのか?と疑問を持つ販売担当者の方も多いのではないでしょうか。
毎月分配型は、複利による長期での運用効果が低く、NISA制度が安定的な資産形成を目的とするものであることを踏まえ、2024年1月から始まったNISAの成長投資枠の対象となっていません。このように、毎月分配型は毎月の安定的なキャッシュアウトを求める顧客には適した商品かもしれませんが、資産形成を行う際の投資対象商品としては適切性に留意が必要と考えられます。
一方、毎月分配型ファンドの保有者の年代構成比を見ると、20~40代の資産形成層が半数近くを占めている状態です。このことから、販売会社・運用会社の両者で実際に商品を購入した顧客の属性と想定顧客属性の合致・乖離の状況を検証する必要性があると判断されました。
対象ファンドの割合
2025年1月時点の純資産総額ベースで、公募投資信託の約11%が情報連携の対象となっています。
情報連携の流れ
STEP1 :運用会社→販売会社
対象ファンドをリスト化し、投資信託協会を通じて連絡
STEP2,3:販売会社→運用会社
販売データ等に顧客の属性情報を付加し統計処理し、連携
STEP4,5:運用会社→販売会社
データを分析し、フィードバック資料を作成し、連携
STEP2,3の連携手段は、当初メールを原則として、将来的には所謂「公販ネットワーク」を活用していく方針でした。しかしシステムベンダー各社のご尽力により、第1回の情報連携(2025年4月~6月のデータを2025年12月末までに連携)から、一部で「公販ネットワーク」の活用が開始されています。
「公販ネットワーク」の活用によりセキュリティの面での向上が期待できる一方、メールでの情報連携と「公販ネットワーク」の情報連携で販売データのフォーマットが異なる等の理由で販売会社・運用会社の双方にご不便をおかけしているため、早急に解消を図るべく関係者で協議している状況です。
顧客属性の区分と想定顧客
①顧客属性の区分
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販売会社によって「顧客カード」の各項目内の情報が異なるため、上記の統一した区分に再分類する必要が生じました。その上で「設定」「解約」「残高」の各取引(残高)について、年代(7種類)、保有資産(4種類)、投資目的(3種類)で場合分けした7×4×3=84に「法人」を加えた85パターンのいずれかに分類して集計します。
3項目以外にも、例えば①販売経路が店頭(勧誘)なのかオンライン(非勧誘)なのか、②投資経験の有無、③年収、等も項目の一つにすることも検討しましたが、すべての販売会社からデータ取得することは困難であるため、対象外としました。
②想定顧客属性
顧客属性の区分をベースに、上記のような想定顧客属性を表す「想定顧客プレート」を定義しました。このプレートは情報連携対象の8類型毎に商品(ファンド)毎のリスク水準(高・中・低の3段階)を加味したうえで作成しています。青色を「最も想定する顧客」とし、水色、クリーム色になるにつれて離れていくイメージです。
ここで留意が必要なのは、想定顧客プレートは、運用会社が顧客としての適格性を有すると考える想定顧客属性を示すものであって、販売会社における適合性の検証を目的とするものではないということです。つまり、
■「クリーム色」の顧客に販売してはいけない
■「青色」の顧客であれば他の条件に関係なく販売してよい
というわけではない点です。
上記例でいえば、「クリーム色」の20代の方であっても、何らかの理由で毎月一定の資金ニーズがあり、かつ適合性が満たされているのであれば、毎月分配型を販売不可にする必要はありません。逆に「青色」の60代の方でも、安定的な資産形成のニーズであるのであれば、毎月分配型を推奨することは望ましくないと考えられます。
3. まとめ
本稿では、運用会社と販売会社間の情報連携の枠組みや実務について解説しました。対象ファンドは毎月分配型を含む特定の8類型に限定され、販売データ等に顧客の属性情報を付加し統計処理したうえで、販売会社から運用会社に連携します。足元ではデータフォーマットの統一が課題です。
次回は、実際の事例や現場で判明した課題、運用会社から販売会社へのフィードバック内容や今後の展望についてご紹介します。
本稿が、皆様の実務や理解の一助となれば幸いです。


