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こたえてください支店長~投信窓販における顧客本位を実現するために~

「支店長! 本音が知りたいです! 顧客本位と成果(収益)のバランスをどのように考えていますか?」

森脇 ゆき
森脇 ゆき
フィデューシャリー・パートナーズ 代表
2025.02.21
会員限定
「支店長! 本音が知りたいです! 顧客本位と成果(収益)のバランスをどのように考えていますか?」

投信販売に徹底した顧客本位の姿勢が求められる中、現場からは戸惑いや不安の声も聞かれます。若手、ベテランを問わず真のフィデューシャリー・デューティーを実現するにはどうすればいいでしょうか。これまで2000人以上のお客さまに「あなたのための」資産アドバイスを行ってきた株式会社フィデューシャリー・パートナーズの森脇ゆきさんが、皆さんのお悩みに答える連載、第16回目です。

Q:職員「支店長! 本音が知りたいです! 顧客本位と成果(収益)のバランスをどのように考えていますか?」

A: 支店長「本音でお答えします。顧客本位であればこそ成果は上がり続けます。もし顧客本位でない活動で成果が上がっているとしたら、それは今だけです」

 

森脇's Answer:

今回は「Ma-Do」の読者アンケートで多数あがっている内容を取り上げました。実際の研修や講演でも同様の質問が出ることがあります。これは特に支店長や管理者、役員から出る質問です。

このような質問をする人の気持ちを推察すると、こういうことではないでしょうか。「顧客本位が大切だということは理解しているが、実際の現場では成果が求められる。顧客本位はほどほどにして収益を上げるための活動も必要だ」。つまり、顧客本位と金融機関の利益は両立しない、という考えがあるのだろうと思います。

さて、顧客本位と収益が両立可能であることを解説する前にお伝えしておきます。筆者は単なる理想論や想像で「顧客本位であればきっと収益が上がるはずだ」と主張しているのではありません。金融機関の職員として、長きにわたり顧客本位で活動し成果を上げてきました。両立できると言えるのは、実践の結果です。そのことを踏まえてお読みいただければと思います。「Ma-Do」Vol.73または「フィナシープロ」掲載の「支店長! お客さま本位と言いますが、収益も上げる必要がありますよね。どちらを優先すべきですか?」も参考にしてください。

顧客本位であると成果が上がらないと思っている人の多くが、「顧客満足」と「顧客本位」の違いを理解していません。まずはその違いを明確に理解してほしいと思います(参考:「Ma-Do」Vol.74・フィナシープロ掲載「支店長! 正直なところ顧客本位と顧客満足の違いが分かりません」)。

顧客本位であればこそ収益は上がる

顧客本位の活動は、お客さまのニーズに合った選択肢を提案することです。良い提案には質の高い情報が欠かせません。チェックシートへの記入や一方的で尋問に近いヒアリングではなく、お客さまによる積極的な自己開示が鍵となります。それはお客さまから信頼されることで得られるものであり、そのためには顧客本位で活動し続けることが重要なのです。こうして精度の高い情報をもとに行う提案は、付加価値を創出することになります。

一般的にお客さまが金融機関を選ぶ基準は金利や利便性でしょう。自分でよく調べ考えた上で商品まで選べる人であれば、取扱商品が多く手数料の安いネット証券等を利用するでしょう。しかし、それとは異なった価値判断や営みがあります。そもそも対面金融機関と取引されるお客さまは、付加価値を重視し期待している人々であると言えます。丁寧にニーズをくみ取ること、状況に応じた説明をすること、長期にわたってサポートし続けること……対面金融機関だからこそ創出できる価値を提供すれば、それを求めるお客さまに強力に支持されます。

お客さまとのお付き合いで積み上がる顧客情報は、金融機関にとって宝の山です。それを適切に引き出し活用できるように管理することが非常に重要です。例えば、新商品を販売する際に、ニーズが見込まれるお客さまに絞って案内できれば実に効率的に営業活動をすることができます。また、お客さまの人生のさまざまな時点で金融商品に対する(潜在)ニーズが発生します。顧客情報が適切に管理できていれば、そのような機会に適切に提案することができるのです。

顧客本位の活動は、信頼関係という土壌を耕すところから始まります。個々人のお客さまと誠実に向き合うことで得られるお客さまの情報は、将来芽吹くことになる無数の収益の種です。経済環境という天候を見極めつつ、折に触れてお客さまと接しながらそれらの種を大切にしていけば、やがて芽が出て花が咲き、実を結んでいくことになります。そこからまた新たな種が得られます。顧客本位とは、付加価値を提供することによって収益が生み出される活動であり、地域のお客さまとともに永続していく営みなのです。

思考を転換し、変革が求められる時に大きな力となる存在を大切に

以上のように、顧客本位は収益と両立できるどころか、深く結びついていることが分かると思います。金融機関が付加価値を提供し、お客さまが進んでその対価を支払う、という実にシンプルなことなのです。にもかかわらず、「顧客本位だともうからない、どうすればいいか」という話をたびたび耳にします。必要なのは、まずは思考の転換をすることでしょう。

これまで金融機関本位の営業活動でもある程度の収益を上げて生き残ってこられたのは、時代状況によるものが大きいでしょう。団塊世代が退職を迎え、余裕資産を持った人口が増えていたという背景から、無理な営業で失うお客さまが多くても、退職金を持って金融機関に相談に来るお客さまが絶えなかったということです。すでにピークは過ぎ、そのようなお客さまは確実に減り続けます。そして過去に信頼を失ったお客さまは戻ってこないのです。

どの組織でも高い職業倫理を保って仕事をしている人がいます。特に金融機関本位で活動している組織では、顧客本位の活動をしようとする人々は孤独になりがちです。支店長にはそのような職員に注目してほしいのです。今はメインストリームにいないかもしれませんが、変革が求められる際に大きな役割を果たす存在になり得ます。

Q:職員「支店長! 本音が知りたいです! 顧客本位と成果(収益)のバランスをどのように考えていますか?」

A: 支店長「本音でお答えします。顧客本位であればこそ成果は上がり続けます。もし顧客本位でない活動で成果が上がっているとしたら、それは今だけです」

 

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文月つむぎ

著者情報

森脇 ゆき
もりわき ゆき
フィデューシャリー・パートナーズ 代表
信用金庫の預金業務担当を経て信託銀行に勤務、個人向け資産アドバイスを担当。担当総顧客数は約2000人、不動産・相続相談を含む総合的な資産アドバイスを経験する。深く学ぶにつれて、働く意義、社会貢献、自分にとっての良い仕事とお客さまの最善の利益を追 求するため、独立を決意。2018年、フィデューシャリー・パートナーズを設立。
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