7月20日の参議院議員選挙の与党の過半数割れという結果を受け、日本維新の会が掲げている副首都構想が、改めて注目されています。そもそも維新は、参院選のマニフェスト(政権公約)とした4本柱の中に、「副首都から起動する経済成長」を掲げていました。
東京一極集中から多極分散型国家への転換を目指す副首都構想は、維新の看板政策である大阪都構想の延長線上の政策として掲げられました。2月に高校授業料無償化で与党と党首合意した経緯が認められるため、自公連立に加わって副首都構想も実現すべきとの声も上がっています。
また、同じ参院選で躍進した参政党の神谷宗幣代表が、2007年に初めて政界に足を踏み入れたのが、大阪府吹田市議会でした。今回は、そんな台風の目となっている大阪府に着目してみます。
企業数・人口は減少もインバウンドは好調
筆者には、サラリーマン時代の2002年4月から1年半ほど大阪府内の店舗に赴任し、法人担当の渉外担当者として府内各所を回った経験があります。公共交通網が発達しているため、自動車に乗る必要はありませんでした。その一方で、東京よりずっと湿度が高く、蒸し暑い夏の外回りに閉口したことを思い出します。

その赴任時にも、大阪の景気はなかなか上向かないと言われていましたが、近年の数値にも停滞が認められるようです。5年ごとの調査のため、直近が2021年になる経済センサスでは、2011年比で企業等が10%以上減少しています。人口とあわせ、右肩下がりの傾向をどう食い止めていくかが問われているようです。
他方、2025年1月1日現在の過去1年間の社会増加(=転入者-転出者)で、大阪市が全市町村で最多の3万7,907人[うち日本人1万8,004人増・外国人1万9,903人増]となりました。府内でも、市町村間で相応の差異がみられる模様です。
大阪市の社会増加は日本人・外国人ともに最多のため、国内有数の国際都市である一方、外国人の増加に伴う摩擦の解消も課題となっているようです。日本人は20代単身者、外国人は就労や留学を目的とした転入が多いということです。
インバウンド需要にも、顕著な回復動向が認められる模様です。7月29日に(公財)大阪観光局が公表したデータでは、1~6月に)大阪府を訪れた訪日外国人客数は前年同期比で2割以上多い847万6,000人と過去最高になりました。
本年7月1日現在の府の推計人口が877万4,930人ですので、上半期だけで府内人口に近い外国人観光客が訪れたことになります。府は2025年の訪日外国人客目標を1,500万人、2030年の目標を2,000万人としています。府内には約4万の飲食店、特区民泊を含め約7,500の宿泊施設がある模様ですので、相応のインバウンド需要が見込めそうです。
数多の“全国ネーム”
府内の政治・経済・芸能に着目し、関西圏のみならず全国的に著名もしくはサービス提供などを行っている先を抽出してみました。人口で神奈川県を下回ったとはいえ、“商都”大阪の基盤はなお厚く、特に経済面では錚々たる事業者が並びます。芸能面でも旬であり、かつ東京での知名度も意識して人選しました。言い換えれば、主に関西ローカル放送に出演する方は割愛せざるを得ないほど人材は豊富です。
分野 |
府内出身者・事業者[敬称略] |
政治 |
吉村洋文(府知事、元大阪市長、日本維新の会代表)、藤田文武(日本維新の会共同代表)、ラサール石井(社民党参議員議員)、立花孝志(元参議院議員、NHKから国民を守る党党首) |
経済 |
伊藤忠商事(大阪市)、キーエンス(大阪市)、サントリー(大阪市)、シャープ(堺市)、住友生命保険(大阪市)、住友電工(大阪市)、積水化学工業(大阪市)、ダイハツ工業(池田市)、大和ハウス工業(大阪市)、高島屋(大阪市)、武田薬品工業(大阪市)、竹中工務店(大阪市)、日本生命保険(大阪市)、日本ハム(大阪市)、パナソニック(門真市) |
芸能など |
西川きよし、和田アキ子、笑福亭鶴瓶、海原やすよ・ともこ、豊川悦司、沢口靖子、今田耕司、久本雅美、小籔千豊、福田麻貴(3時のヒロイン)、平井堅、相川七瀬、菅田将暉、aiko、さらば青春の光(森田哲矢・東ブクロ)、ファーストサマーウイカ、霜降り明星(粗品・せいや)、渋谷凪咲、お見送り芸人しんいち、古川優奈(ゆうちゃみ)、大江裕(演歌歌手)、もえのあずき(大食いタレント)、ラファエル(ユーチューバー) |
メディア |
毎日放送(TBS系)、朝日放送(テレビ朝日系)、テレビ大阪(テレビ東京系)、関西テレビ(フジテレビ系)、読売テレビ(日本テレビ系) |
メディアでは、大阪日日新聞が2023年7月31日をもって休刊に至り、滋賀県と並ぶ地方紙空白域となりました。他方、テレビはTVerなどのOTTサービス(テレビ放送の動画配信)が活発化しているため、Yahoo!ニュースなどにも関西ローカルの番組が頻繁に取り上げられるようになっています。
業態を問わず再編が進行
日本第二の経済圏の中心である“商都”大阪には、明治維新以降に多くの金融機関が設立・運営され、景気変動の荒波に向き合う中で、姿形を変え続けてきました。バブル経済崩壊後の1990年3月時点で府内に本店を置いていた銀行は13行ありましたが、2025年8月現在では3行まで縮小し、府内に本店のある信託銀行と第二地方銀行は姿を消しました。三井住友銀行や三井住友信託銀行のように、再編などを機に本店を東京に移す動きもみられます。
業態 |
1990年3月 |
(変遷過程) |
現在 |
都市銀行 |
三和銀行 |
→旧東海銀行と再編[UFJ銀行] →旧東京三菱銀行と再編 |
(三菱UFJ銀行) [本店所在地:東京都] |
住友銀行 |
→旧さくら銀行(旧三井+旧太陽神戸)と再編 |
(三井住友銀行) [本店所在地:東京都] |
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大和銀行 |
→旧あさひ銀行(旧協和+旧埼玉)と再編 |
りそな銀行 |
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信託銀行 |
住友信託銀行 |
→旧中央三井信託銀行(旧三井信託+旧中央信託)と再編 |
(三井住友信託銀行) [本店所在地:東京都] |
地方銀行 |
大阪銀行 |
→旧近畿銀行と再編[近畿大阪銀行] →旧関西アーバン銀行と再編 |
関西みらい銀行 |
泉州銀行 |
→旧池田銀行と再編 |
池田泉州銀行 |
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池田銀行 |
→旧泉州銀行と再編 |
同上 |
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第二地方銀行 |
近畿銀行 |
→旧大阪銀行と再編[近畿大阪銀行] →旧関西アーバン銀行と再編 |
関西みらい銀行 [地方銀行] |
なにわ銀行 |
→旧福徳銀行と再編[なみはや銀行] →経営破綻、旧大和銀行および近畿大阪銀行に営業譲渡 |
― |
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幸福銀行 |
→経営破綻 →旧関西さわやか銀行に事業譲渡[関西さわやか銀行] →関西銀行と再編[関西アーバン銀行] →旧近畿大阪銀行と再編 |
関西みらい銀行 [地方銀行] |
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福徳銀行 |
→旧なにわ銀行と再編[なみはや銀行] →経営破綻、旧大和銀行および近畿大阪銀行に営業譲渡 |
― |
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関西銀行 |
→旧関西さわやか銀行と再編[関西アーバン銀行] →旧近畿大阪銀行と再編 |
関西みらい銀行 [地方銀行] |
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大正銀行 |
→旧徳島銀行と再編 |
(徳島大正銀行) [本店所在地:徳島県] |
信用金庫はさらに複雑な変遷を経ているため、ごく簡単にまとめさせていただきます。
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再編などを行った信用金庫(含一部譲渡など) |
大阪信用金庫 |
旧東洋・三和[三和・住吉]・南大阪(泉州[泉大津・春木・岸和田]・泉陽[貝塚・堺・堺興業])・大阪第一・相互 |
大阪厚生信用金庫 |
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大阪シティ信用金庫 |
旧大阪市[大阪市民・大阪中央]・大福・大阪東(八光[小坂・八尾・大阪産業]・阪奈[布施・牧岡・富士]) |
大阪商工信用金庫 |
― |
永和信用金庫 |
― |
北おおさか信用金庫 |
旧十三[十三・茨木]・摂津水都(水都[豊中・大阪殖産]・摂津[高槻・吹田]) |
枚方信用金庫 |
― |
※[ ]内は途中再編過程。一例では三和[三和・住吉]は旧三和・旧住吉が再編し旧三和の名称となったことを指す。
府内には、大同・成協・大阪協栄・大阪貯蓄・のぞみ・中央・大阪府医師・大阪府警察・近畿産業・毎日・ミレの11信用組合があります。近畿産業信用組合の2025年3月の預金残高は1兆6,079億円で、国内最大手信用組合です。
内国為替で使用する統一金融機関コードが大同信用組合は2540、ミレ信用組合は2582のため、かつては府内に43信用組合があったことが窺えます。それが11まで減少していることから、2005年7月に本店所在地を東京都に移した2580の朝日新聞信用組合を除いても、再編の荒波の中で31信用組合が姿を消したことになります。
万博の行方
2014年頃より開催に向け動き始めた大阪・関西万博は、会場建設費が当初見込んだ1,250億円から2,350億円まで上昇したことに代表される費用の増大に悩まされることになりました。加えて、ウォータープラザの海水からのレジオネラ属菌の検出、ユスリカの大量飛来、喫煙所設置やパーク&ライド駐車場の利用低迷など想定していなかった事象への対応費用増大も見込まれます。
万博の予算は総額で7,630億円を基準としている模様で、チケット・グッズ等の売上などを差し引いた分を国および府ならびに大阪市と経済界などが負担する形になります。チケット販売の損益分岐点は約1,840万枚とされているようですが、これは、運営費のうち、969億円をチケット収入で賄う計画にしているためのようです。
8月9日までの累計チケット販売枚数は既に1,809万5,703枚に達しているため、上記の損益分岐点を超えるのは時間の問題のようです。また、オフィシャルグッズを扱うショップは当初の想定をはるかに上回る売上げとなっている模様です。

吉村知事は、8月下旬には目標を超えるのではという見通しを示していますが、万博事務局側は、想定よりも低調なパーク&ライドなどを背景に、より慎重な発言にとどまっています。駐車場からのバスの運行が、パーク&ライドの利用料金収入で賄うスキームとしているため、赤字なら収支に影響する可能性もあることを踏まえてのものです。