finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
こたえてください支店長~投信窓販における顧客本位を実現するために~

「支店長! 今年は日銀が金利を上げてきましたが、お客さまに提案する商品に変化はありますか?」

森脇 ゆき
森脇 ゆき
フィデューシャリー・パートナーズ 代表
2024.12.20
会員限定
「支店長! 今年は日銀が金利を上げてきましたが、お客さまに提案する商品に変化はありますか?」

投信販売に徹底した顧客本位の姿勢が求められる中、現場からは戸惑いや不安の声も聞かれます。若手、ベテランを問わず真のフィデューシャリー・デューティーを実現するにはどうすればいいでしょうか。これまで2000人以上のお客さまに「あなたのための」資産アドバイスを行ってきた株式会社フィデューシャリー・パートナーズの森脇ゆきさんが、皆さんのお悩みに答える連載、第13回目です。

Q:職員「支店長! 今年は日銀が金利を上げてきましたが、お客さまに提案する商品に変化はありますか?」

A: 支店長「いい質問です。私たちの仕事において金利は非常に重要なものですから、変化は当然あります」

 

森脇's Answer:

日本銀行は2024年3月19日の金融政策決定会合でマイナス金利の解除を決定しました。「2007年2月以来のおよそ17年ぶりの利上げ」というニュースが流れたことは記憶に新しいと思います。歴史をさかのぼれば、金利はバブル崩壊の91年以降段階的に下がり、99年にはゼロ金利となり、2016年にマイナス金利政策へと突入しました。99年から現在に至るまで約25年間、金利はゼロに近い状態が継続してきました。この間に金融機関に就職した多くの方は、金利がないことが当り前の時代を過ごしています。金利と共に長期投資や複利のメリットも失われており、金利への関心も薄れていたと言えるでしょう。

定期預金の満期フォローから始めよう

さて、金利上昇によってお客さまへの提案にどのような変化があるかということについて一緒に考えていきましょう。

まずは、自分ごととして想像してみてください。今後金利は上昇する可能性があります。あなたはこの先5年は使用予定のない資金を定期預金にしようと考えています。1年定期と5年定期のどちらを選びますか。筆者は1年を選択します。なぜならば1年後の満期の際に、金利が上昇してより有利な条件で継続契約ができる可能性があるからです。もう一つ質問です。これから先、金利が下がっていく局面だと予想されていた場合、契約する定期預金は1年ですか、5年ですか。筆者は5年を選択します。これから金利が下がっていくなら、いま高い金利で長期の定期預金に固めておきたいからです。

このように、金利の変化による行動変容を想像してみて分かるように、まずは定期預金の満期フォローを変えていく必要があります。これまで意識されることの少なかった金利についての関心を喚起し、定期預金の契約期間を変更するニーズをお聞きしてみましょう。それと同時に、国債の金利についても案内してみると良いでしょう。金利を吟味する時代になると、個人向け国債も選択肢の一つとして魅力を増してきます。預貯金しか契約した経験のないお客さまも少なくないと思いますが、そのような方に選択肢を提示することも対面金融機関の大切な役割の一つです。

金利上昇の経済的な背景などをお話ししつつ、お客さまの困りごとや不安なことなどをヒアリングしてみましょう。特に、現在は多くの方が物価上昇を実感しているので、話をしやすい環境にあると思います。お客さまのニーズを探っていくと、金利あるいはインカムゲインについてどのように考えているのか、どこに魅力を感じるのかが見えてきます。そこから、国債の金利、J-REITの利回り、日本株の配当利回りなど各金融商品の利回りの話へと展開しながら、個別の商品のご案内へと移行していくことができるでしょう。

ここで、運用提案に携わる人全員に必要な考え方として「総資産提案」について触れておきます。これは、不動産や金などの物品を含む全ての資産について考えを巡らせてお客さまに提案する活動のことです。預金や投資、保険などの金融資産だけを把握していても、総資産提案はできません。顧客本位の投資・運用の提案をするためには、総資産を念頭に置いておく必要があるのです。そう考えれば、お客さまにとってこれまで金利のつかなかった預貯金の役割は何であったのか、これからは金利の付く預貯金の役割は何か、ということについてより深い見方ができるようになるでしょう。

金利に関する知識や最新の動向を頭に入れておく

金利の面から提案をしていく上では、各種金利について把握しておくことが必須です。預貯金の金利、個人向け国債の金利、J-REITの平均利回り、日本株の平均配当利回りは、常に最新の情報を頭に叩き込んでおきましょう。たとえば、高配当利回りをうたう日本株の投資信託があるとして、配当利回りが何%くらいならこの商品に魅力を感じるでしょうか。普通に考えれば、平均利回り以上でなくては高配当とは言えないと思いますよね。ということは、日経平均採用銘柄とTOPIX採用銘柄の平均利回りが頭に入っていなければ、商品の魅力や運用状況を把握することは難しいわけです。同様に、J-REITを組み入れた投資信託を評価するためには、J-REITの平均分配利回りを把握しておく必要があります。

金利は、預貯金や投資のみならず貸出も含め、全てに関わってくるものですから、金融機関にとっては最重要なものの一つであり、最優先で身につけてほしいのが金利についての知識・感性だと筆者は考えています。

そのために有効なのは、日々の金利を定点観測していくことです。株価と同じように、金利についても毎日確認して、常に即答できるようにしておくと良いでしょう。また、以下の項目について月一回程度の頻度で小テストを実施するのも良い方法だと思います。

①日本の政策金利
②前営業日の無担保コール翌日物
③前営業日の10年国債利回り
④前営業日のJリートの平均利回り
➄前営業日の日経平均株価採用銘柄の配当利回り
⑥前営業日のTOPIX採用銘柄の配当利回り

また、以下の商品の金利が、上記のどれに影響を受けるかという問題にも答えられるようにしておきたいところです(各商品の金利の決め方は金融機関により多少の違いがあると思われるので、自金融機関に適合するように検討してください)。

普通預金金利
定期預金金利(短期、長期)
個人向け国債の金利
住宅ローンの変動金利
住宅ローンの固定金利

10の知識があったとしても、実際にお客さまに伝えるのは1です。だからといって、知識を1だけ持っていれば良いわけではありません。1の知識をそのまま1だけ伝えるのでは、お客さまはその言葉に深みがないことを察知し、関係性が深まりにくいものです。10の知識で1話すと、お客さまはどんどん質問をしてくるようになり、投資への理解が深まると同時に信頼関係も深まります。積極的に自己開示するようになり、そうして得られた情報から適切な提案ができるようになり、お客さまに喜んでいただける営業活動ができるのです。そのための一歩として、金利の定点観測をして、いつでも話ができるようにしておくのです。

多くの支店長も未経験の金利上昇局面です。現場の漠然とした不安を、支店長も感じていることと思います。今後の局面を見据えて、まずは基礎の知識として現在の金利確認を徹底するところから始めてみてはいかがでしょうか。

Q:職員「支店長! 今年は日銀が金利を上げてきましたが、お客さまに提案する商品に変化はありますか?」

A: 支店長「いい質問です。私たちの仕事において金利は非常に重要なものですから、変化は当然あります」

 

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #フィデューシャリー・デューティー
  • #投信窓販
前の記事
「支店長! 60 歳男性に対して投資信託の商品は何を提案するのが正解ですか?」
2024.11.22
次の記事
「支店長! 他の金融機関と比較して、投信の取扱商品が少ないので投資の案内がしにくいです!」
2025.01.24

この連載の記事一覧

こたえてください支店長~投信窓販における顧客本位を実現するために~

「支店長! 同行訪問していただく際、緊張してうまく話せなくなってしまいます!」

2025.08.22

「支店長! 業績を上げるためにFP資格は必要ですか」

2025.07.18

「支店長! 一般職に投信のセールスをしろとおっしゃいますが、日常業務が忙しくてとても無理です!」

2025.06.20

「支店長! ゴールベースアプローチをすれば、お客さま本位の提案になるということでよいですか?」

2025.05.23

「支店長! 売れ筋の投資信託を3つ覚えて売れるようになりました。全ての商品を覚える必要はありますか?」

2025.04.25

「支店長が代わると方針や雰囲気が変化して戸惑います! 」

2025.03.21

「支店長! 本音が知りたいです! 顧客本位と成果(収益)のバランスをどのように考えていますか?」

2025.02.21

「支店長! 他の金融機関と比較して、投信の取扱商品が少ないので投資の案内がしにくいです!」

2025.01.24

「支店長! 今年は日銀が金利を上げてきましたが、お客さまに提案する商品に変化はありますか?」

2024.12.20

「支店長! 60 歳男性に対して投資信託の商品は何を提案するのが正解ですか?」

2024.11.22

おすすめの記事

中国銀行で「毎月/隔月決算型」株式ファンドの人気高まる、「ROBOPRO」のパフォーマンスも評価

finasee Pro 編集部

「支店長! 同行訪問していただく際、緊張してうまく話せなくなってしまいます!」

森脇 ゆき

【連載】こたえてください森脇さん
⑥類似商品との違い、どう説明すればいい?

森脇 ゆき

福岡銀行で国内株アクティブファンドが人気化、「世界半導体投資」と「未来の世界」にも見直し

finasee Pro 編集部

新規設定金額は前月の約4分の1に急減、「逆張り戦略」や「暗号資産」に投資するファンドも登場 =25年7月新規設定ファンド

finasee Pro 編集部

著者情報

森脇 ゆき
もりわき ゆき
フィデューシャリー・パートナーズ 代表
信用金庫の預金業務担当を経て信託銀行に勤務、個人向け資産アドバイスを担当。担当総顧客数は約2000人、不動産・相続相談を含む総合的な資産アドバイスを経験する。深く学ぶにつれて、働く意義、社会貢献、自分にとっての良い仕事とお客さまの最善の利益を追 求するため、独立を決意。2018年、フィデューシャリー・パートナーズを設立。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
【みさき透】金融庁、FDレポートで外株の回転売買に警鐘 「2、3の事例はアウト」か
FPパートナーへの業務改善命令は"FDレポートの保険版"?金融庁が処分にこめた3つのメッセージ
「支店長! 同行訪問していただく際、緊張してうまく話せなくなってしまいます!」
中国銀行で「毎月/隔月決算型」株式ファンドの人気高まる、「ROBOPRO」のパフォーマンスも評価
【連載】こたえてください森脇さん
⑥類似商品との違い、どう説明すればいい?
三井住友銀行の売れ筋で光るアクティブファンド、インデックスの不安定さを克服するファンドとは?
【連載】こたえてください森脇さん
④ネット証券ではなく、自金融機関で投信購入するメリットを説明できない。
【みさき透】金融庁はなぜ毎月分配型に「免罪符」を与える気になったのか
野村證券の売れ筋にみえる積極的なリスクテイク姿勢、売れ筋ランキングをかけ上がったファンドとは?
第12回運用資産に関わる常識を疑え!(その1)
銀行預金ではインフレに負けるから投資すべき?
信頼たる資産運用アドバイザーには理由(わけ)がある “進化”した米国の資産運用ビジネスから日本が学ぶべき点は何か? 【米国RIAの真実】
令和のナニワ金融?万博でにぎわう大阪府の金融機関事情
【金融風土記】
FPパートナーへの業務改善命令は"FDレポートの保険版"?金融庁が処分にこめた3つのメッセージ
「支店長! 同行訪問していただく際、緊張してうまく話せなくなってしまいます!」
新規設定金額は前月の約4分の1に急減、「逆張り戦略」や「暗号資産」に投資するファンドも登場 =25年7月新規設定ファンド
【連載】こたえてください森脇さん
④ネット証券ではなく、自金融機関で投信購入するメリットを説明できない。
【連載】こたえてください森脇さん
⑥類似商品との違い、どう説明すればいい?
三菱UFJMS証券の売れ筋で「オルカン」が落ちて「日経平均」がジャンプアップ
福岡銀行で国内株アクティブファンドが人気化、「世界半導体投資」と「未来の世界」にも見直し
中国銀行で「毎月/隔月決算型」株式ファンドの人気高まる、「ROBOPRO」のパフォーマンスも評価
信頼たる資産運用アドバイザーには理由(わけ)がある “進化”した米国の資産運用ビジネスから日本が学ぶべき点は何か? 【米国RIAの真実】
【連載】こたえてください森脇さん
④ネット証券ではなく、自金融機関で投信購入するメリットを説明できない。
【文月つむぎ】"フィーベース信仰"に一石? IFA団体が世に問う「顧客本位の新常識」とは
FPパートナーへの業務改善命令は"FDレポートの保険版"?金融庁が処分にこめた3つのメッセージ
第12回運用資産に関わる常識を疑え!(その1)
銀行預金ではインフレに負けるから投資すべき?
【みさき透】金融庁、FDレポートで外株の回転売買に警鐘 「2、3の事例はアウト」か
佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」
第15回 住宅ローン金利の上昇はどのセクターにどんな効果を及ぼすか
DCは本当に「儲からないビジネス」なのか? 業界活性化の糸口はカネではなく「情報」に?
浜銀TT証券の売れ筋トップは「ピクテ・ゴールド」、ランクダウンのインド株ファンドは?
令和のナニワ金融?万博でにぎわう大阪府の金融機関事情
【金融風土記】
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら