「資産運用において疑うべき常識」を振り返る
インデックスファンド投資
「インデックスファンド以下(“インデックスF”)投資」に関して、注意すべきポイントは2つです。
■ 運用状況はどのファンドもほとんど変わらないと考えられているのが、インデックスFです。そのため、確実に差がつくコスト(主に信託報酬)水準の安いファンドが良いファンドとされる傾向があります。しかしコスト水準の差は、ファンド選定の結果を左右するほど重要ではありません。
■ 同じ投資対象であればどのインデックスに連動させてもあまり差はないと考えられていますが、実は大きな差があります。どのインデックスを選ぶかは、非常に重要な選択です。例えば同じ日本株でも、TOPIXと日経225とでは全く異なるリターンになることがあります。
アクティブファンド投資
「アクティブファンド以下(“アクティブF”)投資」では、5つの点を考慮しましょう。
■ アクティブFは、インデックスFよりもリスクが大きいわけではありません。ダウンサイドリスクでは、インデックスFよりも小さいものも見られます。
■ インデックスFがアクティブFよりも優れているわけではありません。運用成績で見ても、どちらが優れているかは判定困難です。測定する時期、つまり投資環境によって異なります。
■ アクティブFとインデックスFは二者択一のものではありません。組み合わせることにより、市場環境の変化にうまく対応できる可能性が高まります。
■ 過去の運用成績のみでは優れたアクティブFは選定困難です。運用実績以外の調査と分析が必要です。
■ 過去の運用成績が悪いからといって、そのアクティブFの運用力が劣っているとは限りません。市場環境と当該ファンドの運用戦略の関係に大きく影響を受けます。
投資信託選び
コスト水準ではなく、下記の通り、運用方針や市場環境が重要です。
■ 投資信託選びにおいては、コスト水準は特別重要な要素ではありません。インデックスF選びにおいては連動させるインデックスが、アクティブF選びにおいては運用力の優劣が非常に重要です。
■ バランス型ファンドやターゲット・イヤーファンドなど複数の資産を組み合わせて運用するタイプのファンドは、市場環境によってその商品性は変化します。投資初心者を含む万人向けのファンドであるとは言い切れません。
運用資産
「 運用資産」においては、目からうろこの注意点が挙げられていました。
■ 銀行預金で運用したからといって、中長期でインフレに負けるわけではありません。むしろ、インフレから資金を守る傾向があります。近年のわが国は特異な状況にあると言えます。
■ 高金利通貨で運用することが有利な運用につながるわけではありません。高金利通貨はインフレより速いスピードで通貨の価値が減少している通貨です。
■ 債券は低リスク資産であることには変わりありませんが、投資手法や市場環境から派生する隠れたリスクに注意する必要があります。
■ 株式は価格変動が大きいため、高リスク資産であることは否定できません。しかし環境変化への対応が期待できることから、むしろ投資初心者向けの運用資産であるとも言えます。
【連載を終えるにあたり:データによる裏付けや検証を大切に】
資産運用の世界では「常識」と言われることでも、必ずしもデータによる裏付けを伴っていないものが多く見られます。インターネット上やその他で得られる情報を安易に信用せず、データによる裏付けや検証結果を自身で確認することが重要です。
また、これらの「常識」を利用して、得られる情報あるいはアドバイスの信頼度をチェックすることもできると考えます。本連載で疑ってきた「常識」を、ぜひ活用してみてください。



