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資産運用の常識を疑え

第7回 アクティブファンド投資の常識を疑え!(その5)
アクティブファンドは過去実績の優劣で選ぶ?

篠原 滋
篠原 滋
株式会社お金の育て方 代表取締役/資産運用ナビゲーター
2025.02.28
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第7回 アクティブファンド投資の常識を疑え!(その5)<br />アクティブファンドは過去実績の優劣で選ぶ?

「資産運用の常識」はどこまで信頼できるのか? お金の育て方 代表取締役/資産運用ナビゲーターの篠原滋氏が、テーマごとにその真偽を検証し分かりやすく解説します。

前回に続き、今回もアクティブファンド投資に関する「常識」を疑います。

【アクティブファンド投資の常識⑤】
アクティブファンドは過去実績の優劣で選ぶ?

アクティブファンド(以下、「アクティブF」)について、幅広く、しかも根強く信じられている「常識」のひとつが、「ファンド間で運用成績に差がつくアクティブFでは、過去実績の優れたものを選ぶべき」というものです。過去の実績の優れたファンドは、優れた運用力を有すると考えられることが理由でしょう。運用成績の優れたファンドは、注目され、さまざまな賞や高いレーティングを受け、より大きな資金が集まります。

この「常識」は正しいと考えてもよいでしょうか? 最新のデータを利用して、検証します。

アクティブFの過去実績は今後につながるか?

アクティブFの運用成績の良否は、ファンド評価機関では同種ファンド間の順位で測り、レーティングやアワードを付与しています。本稿でもアクティブFの運用成績を同種ファンド間の順位で表します。

その上で過去の順位とその後の順位との連続性を確認します。もし過去の実績が有効なファンド選定につながるのであれば、過去に上位の実績を上げたファンドは、その後も上位にランクされるはずです。

以下では、6年以上の運用実績を有するファンドの成績順位を、2021年末までの3年間とその後の2024年末までの3年間で比較します。測定期間3年では短すぎると思う方もいらっしゃると思いますので、同様の分析を2019年末までの5年間とその後の2024年末までの5年間でも行います。

日本株ファンドと日本含む世界株ファンドについて調査します。

(1)日本株ファンドのケース
野村総合研究所が公表するデータを用いて最初の3年間とその後の3年間の各ファンドの順位の変化を確認します。その上で縦軸に最初の3年間の順位を、横軸にその後の3年間の順位を表すグラフ上に各ファンドを記します(図1参照)。

 

過去の実績がその後の成績につながるのであれば、多くのファンドがピンク色の楕円形が表すエリアに集まるはずですが、そうなっていません。過去の順位とその後の順位は全く関係がないように見えます。

5年+5年でも調査したところ、同様の結果となりました(図2参照)。

 
 

(2)世界株ファンドのケース
同じテストを行ったところ、日本株と同様の結果となりました(図3・4参照)。世界株でも過去の順位はその後にはつながらないようです。

 
 
 

期間を変えて日本株ファンドと世界株ファンドの運用成績の順位の変化を見てきました。いずれも過去の運用成績の順位はその後の順位とは「ほぼ無関係」であることを示唆しています。たまたまこのタイミングでは無関係に見えると思う人もいるでしょう。しかしながら、私は投資信託に30年にわたって携わり、同様の分析を継続して行ってきましたが、結果は常に「ほぼ無関係」でした。

アクティブFの過去成績順位はなぜその後につながらない?

理由を私なりに考えてみました。過去の順位がその後も繰り返されるためには、以下の条件が必要と思われます。
■過去と同様の市場環境が継続すること
■その以前と同様の環境下で、ファンドが以前と同様の投資行動をとること
■他のファンドも以前と同様の投資行動をとること


しかしながらこのようなことはほぼ起こらないのではないでしょうか。時間が経てば市場環境は変化します。環境が変わらなくても運用者は過去を反省し、投資行動に反映させるでしょう。それは他のファンドでも起きるのではないでしょうか。過去の順位がその後の順位につながる可能性は、決して高くはないでしょう。

【以上のことから導き出された結論:アクティブファンド投資の常識⑤】

アクティブFの過去の運用実績はその後につながる可能性は高くない。アクティブFの選定では運用成績以外にも調査分析が必要

過去の運用実績を決め手として優れたアクティブFの選定を試みることは非常に危険です。評価機関やメディアが過去実績に基づいて付与するアワード等は、既に挙げた実績を表彰する点では有意義です。保有していれば好成績の確認にもつながります。しかしながらアワードを受賞したからそのファンドに投資するのではなく、その決定にはさらに深堀りした調査・分析が必要でしょう。

では他にはどのようなことをチェックする必要があるでしょうか。この点につきましてはまた改めてお話ししたいと思います。

次回はアクティブFの選定についてのもう一つの常識を疑います。

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著者情報

篠原 滋
しのはら しげる
株式会社お金の育て方 代表取締役/資産運用ナビゲーター
1996年に野村證券株式会社にて投資信託分析・評価業務を立ち上げ、独自の定性評価中心のプロセスを確立。2000年の野村ファンド・リサーチ・アンド・テクノロジー株式会社(“NFR&T”、野村フィデュシャリー・リサーチ・アンド・コンサルティング株式会社(”NFRC”)の前身)設立を経て、25年にわたり東京、ニューヨーク、ロンドンを拠点に国内外の多数の運用会社/ファンドの分析調査及び選定ファンドの組み合わせによる投資助言に従事。2021年9月に独立し、独自の視点に基づく合理的な資産運用並びに投資信託活用に関する情報発信を開始。2022年6月に株式会社お金の育て方設立に参加し代表取締役に就任。国際基督教大学教養学部卒。米国ニューヨーク大学スターン経営大学院経営学修士(MBA)課程修了。
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