finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
資産運用の常識を疑え

第14回 運用資産に関わる常識を疑え!(その3)
債券は本当に低リスク資産?

篠原 滋
篠原 滋
株式会社お金の育て方 代表取締役/資産運用ナビゲーター
2025.09.30
会員限定
第14回 運用資産に関わる常識を疑え!(その3)<br />債券は本当に低リスク資産?

「資産運用の常識」はどこまで信頼できるのか? お金の育て方 代表取締役/資産運用ナビゲーターの篠原滋氏が、テーマごとにその真偽を検証し分かりやすく解説します。

今回も運用資産に関わる「常識」を疑います。

【運用資産に関わる常識③】債券は本当に低リスク資産?

資産運用関係の書籍やサイトであたかも事実のように語られる「常識」の一つが、「債券は低リスク資産。株式は高リスク資産。」との認識です。リスク度別にコースが用意されているバランス型ファンドでは、リスク度の低いコースほど株式の組入比率を低く、債券の組入比率を高くしているのではないでしょうか? あるいはリスク許容度が低いと考えられるお客様には、債券中でも国内債券への投資比率の高いポートフォリオをご提案しているのではないでしょうか?

この「常識」は正しいと考えても良いでしょうか? 債券は本当に低リスク資産でしょうか? 見過ごしているリスクはないでしょうか?

筆者も債券が基本的に低リスク資産であることを否定するものではありませんが、これから述べる理由により、リスク度が実際より低く過小評価されていると考えています。

 

債券は償還されるが債券ファンドは?

債券は通常の場合、償還日に額面で償還されます。金利見通しを誤り投資後に価格が額面を割り込んでも、償還日には額面で償還されるとの安心感があります。

ただしこれは債券(の現物)に直接投資をした場合に限定されます。債券にファンドを通して投資した場合はこの限りではありません。債券ファンドでは信託期間が満了するまでは(多くの場合無期限で)運用を継続するために組入債券が償還されるとすぐに代わりの債券を組み入れます。またそのような保有債券の償還がまとまって起きないように残存期間の異なる債券を組み合わせて投資します。例えば多くの国内債券ファンドが運用目標とするベンチマークにも採用され。多くのインデックス・ファンドが連動を目指す代表的市場指数(注)では、全体の1/3強の残存期間が10年を超えており、平均残存期間でも10年を超えています。このような構造は急激には変化しませんので、ポートフォリオの大きな部分が同時に償還されて元本が回収されることはありません。

(注)Nomura-BPI総合指数:日本国内で発行された公募固定利付債券の流通市場全体の動向を表すために開発された投資収益指数(パフォーマンス指数)。

従って、債券にファンドを通して投資する場合は、いずれ元本で償還されるからリスクが小さいわけではありません。

なお、現物に投資すれば、金利が上昇し額面以下に価格が下落しても、いずれは額面で償還されて損失を免れることができます。しかしこれは会計上の損益に限っての話です。実質的かつ経済的な価値を考えると、低金利の債券に投資して身動きが取れなくなり、より高い金利水準での運用のチャンスを逃すわけですので、機会損失が生じることとなります。

 

債券はこれまではリスクが小さい?

まずは図1で過去の日本・ドイツ・アメリカの金利水準とその動きをご確認ください。各国共に1990年代から2020年前後まで、約30年間にわたり金利水準が継続的に大きく低下しました。このような長期間に及ぶ世界的かつ大幅な金利低下はそれまで経験したことのないものであり、今後も起こる可能性は極めて低いであろうと考えられます。

☑拡大画像

従って過去実績に関わるデータの扱いには注意が必要です。

比較的短い期間のデータを参考とする場合には2020年代に入ってからの金利上昇期が大きなウエイトを占めますので、相応のリスク水準で表示されます。しかしより過去に遡ってリスク量を測定すると、一方方向の金利低下局面が大きなウエイトを占めることとなり、リスク量が実勢よりもより小さく測定されます。

前出の国内債券を代表する市場指数(注)で過去のパフォーマンスを調べてみても、測定期間が過去にさかのぼって長くなるほど、リスクが小さく表されます(図2)。

☑拡大画像

債券に関しては長期にわたるデータは必ずしも参考とはなりません。注意が求められます。

 

リターンのアップサイドvsダウンサイド?

債券投資のリスクを考える上でもう一つ重要なことが、低利回り債券のリターンがアップサイドとダウンサイドで非対称である、つまり期待されるリターンのアップサイドがダウンサイドのリスクに見合っていないという点です。

低利回り債券の代表として国内債券を考え、ここでは前出の日本国10年債券を見てみます。同債券の利回りは8月末で約1.6%でした。経済予測とか金利見通しとは無関係に可能性のある利回りの変動幅を考えてみると、金利は下がっても0%までですが、上昇した場合の天井はありません。かつて2020年当時はマイナス金利に陥っていたこともあり、金利低下は全く期待できない状況でした。言い換えれば国内債券に関しては、可能性のある価格上昇幅よりも下落幅の方がずっと大きくなっています。価格のバラツキ幅という意味の投資理論上のリスクでは、国内債券は低リスクかもしれません。しかし値下がりリスクでは、ダウンサイドの大きな国内債券はとても低リスク資産とは考えられません。

アメリカやドイツなどの外国債券では利回り水準は高く、この非対称性の問題はないですが、代わりに為替リスクを負いますので、やはり低リスク資産とは言えません。

 

【以上のことから導き出された結論:運用資産に関わる常識③】

債券は比較的低リスクの資産であることには変わりがないが、投資手法や現在の市場環境から生じる隠れたリスクにも注意が必要。

債券は低リスク資産であると過信するのは危険です。運用上どうしてもリスクが取れないのであれば、預金や短期運用などの本来の無リスク資産の利用も検討すべきかもしれません。

次回はもう一つの運用資産である株式に関する常識を疑います。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
1

関連キーワード

  • #投資信託
前の記事
第13回 運用資産に関わる常識を疑え!(その2)
高金利通貨での運用は有利?
2025.08.29
次の記事
第15回 運用資産に関わる常識を疑え!(その4)
株式はリスクが大きいので投資初心者には不向き?
2025.10.31

この連載の記事一覧

資産運用の常識を疑え

第16回 資産運用にまつわるさまざまな常識を疑え!【総集編】
「資産運用において疑うべき常識」を振り返る

2025.12.02

第15回 運用資産に関わる常識を疑え!(その4)
株式はリスクが大きいので投資初心者には不向き?

2025.10.31

第14回 運用資産に関わる常識を疑え!(その3)
債券は本当に低リスク資産?

2025.09.30

第13回 運用資産に関わる常識を疑え!(その2)
高金利通貨での運用は有利?

2025.08.29

第12回運用資産に関わる常識を疑え!(その1)
銀行預金ではインフレに負けるから投資すべき?

2025.07.25

第11回 投資信託選びの常識を疑え!(その3)
ターゲットイヤー・ファンドは万人向き?

2025.06.27

第10回 投資信託選びの常識を疑え!(その2)
バランス型ファンドは投資初心者向き?

2025.05.30

第9回 投資信託選びの常識を疑え!(その1)
投資信託選びにおいてコスト水準は非常に重要?

2025.04.30

第8回 アクティブファンド投資の常識を疑え!(その6)
過去実績の劣るアクティブファンンドは運用力でも劣る?

2025.03.31

第7回 アクティブファンド投資の常識を疑え!(その5)
アクティブファンドは過去実績の優劣で選ぶ?

2025.02.28

おすすめの記事

浜銀TT証券の売れ筋に大きな変化、「WCM」がトップを取り、「AB米国成長株投信」が3カ月ぶりランクイン

Finasee編集部

SMBC日興証券で「世界のベスト」がトップに浮上、「日経225」人気が衰えてアクティブファンドの出番

Finasee編集部

人気アクティブファンドの強さを決めるものとは?「ネクスト・ジェネレーション」運用元のWCM等が持つ“意外な要素”とは

Finasee編集部

「顧客そっちのけ」の乗り換え営業からの転換点とは?「今では考えられない状況」から投信350兆円時代までを振り返る

Finasee編集部

ファンドアナリスト海老澤 界が2026年第1四半期を振り返る~投資信託の今と、これから

Finasee編集部

著者情報

篠原 滋
しのはら しげる
株式会社お金の育て方 代表取締役/資産運用ナビゲーター
1996年に野村證券株式会社にて投資信託分析・評価業務を立ち上げ、独自の定性評価中心のプロセスを確立。2000年の野村ファンド・リサーチ・アンド・テクノロジー株式会社(“NFR&T”、野村フィデュシャリー・リサーチ・アンド・コンサルティング株式会社(”NFRC”)の前身)設立を経て、25年にわたり東京、ニューヨーク、ロンドンを拠点に国内外の多数の運用会社/ファンドの分析調査及び選定ファンドの組み合わせによる投資助言に従事。2021年9月に独立し、独自の視点に基づく合理的な資産運用並びに投資信託活用に関する情報発信を開始。2022年6月に株式会社お金の育て方設立に参加し代表取締役に就任。国際基督教大学教養学部卒。米国ニューヨーク大学スターン経営大学院経営学修士(MBA)課程修了。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
【連載】藤原延介のアセマネインサイト㊱
個人マネーが2500兆円超え!インフレ定着で投信に資金流入加速
佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」第21回:“106万円の壁”撤廃の影響を受けるセクターとは
【第3回】オルタナティブ資産ファンドは何を見て選ぶのか
「過去の実績上位」だけに頼らない投資信託の提案アプローチ ~10年間のデータが示すファンド成績の入れ替わりと販売現場で役立つ活用ポイント~
「家計の見える化」が拓く新たな地平――74項目のデータを実務の叡智に変えるために
【プロが解説】持続可能な水資源確保――データセンター・半導体工場の建設で高まる水需要、長期的な需給ギャップにどう備えるか
【有識者対談】“正念場”の保険業界に学ぶ「顧客本位のビジネスモデル」の持続性(後編)
「支店長!お客さまが迷惑そうなので、電話をしたくありません!」
【有識者対談】“正念場”の保険業界に学ぶ「顧客本位のビジネスモデル」の持続性(前編)
三菱UFJ銀行でバランス型の「ウェルス・インサイト」がトップ、毎月分配のアクティブファンドもランクアップ
佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」第21回:“106万円の壁”撤廃の影響を受けるセクターとは
【第3回】オルタナティブ資産ファンドは何を見て選ぶのか
“霞が関文学”で読み解く金融界② 仕組債販売ルール指針案と「文脈検査の拡張」
「過去の実績上位」だけに頼らない投資信託の提案アプローチ ~10年間のデータが示すファンド成績の入れ替わりと販売現場で役立つ活用ポイント~
「支店長!お客さまが迷惑そうなので、電話をしたくありません!」
【有識者対談】“正念場”の保険業界に学ぶ「顧客本位のビジネスモデル」の持続性(前編)
アセット・スワップで有効性検証をあえてやってみたら?
【連載】藤原延介のアセマネインサイト㊱
個人マネーが2500兆円超え!インフレ定着で投信に資金流入加速
「AIはポジティブ回答に寄っていることも…」投資のプロが“実際に行っている”情報インプット術
金利高止まりで足利銀行の売れ筋が二極化──「のむラップ」と「世界のベスト」が示した投資家の選好
「支店長!お客さまが迷惑そうなので、電話をしたくありません!」
預り資産額1兆円を見据えるブレイクスルーの全貌  ゴールベースとチーム体制でリテール金融を変える
【金融風土記】「豊かさと分散」の経済圏――山形の金融動向とは
日本版IFAに迫る自主規制の刃、そのとき求められる真の「独立」とは何か
佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」第21回:“106万円の壁”撤廃の影響を受けるセクターとは
お客さまとその家族を深く知り、寄り添い続け、総資産の増加を目指すストックビジネスへ case of 横浜銀行
「真剣な姿勢できれいごとを貫く」時代を捉え、顧客に寄り添い、自ら変革し続ける case of 三菱UFJモルガン・スタンレー証券
“霞が関文学”で読み解く金融界② 仕組債販売ルール指針案と「文脈検査の拡張」
上位4ファンドの「オルカン」「S&P500」「世界のベスト」「グロース・オポチュニティ」にそれぞれの事情=2026年8月純流入額トップ20
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【日本株アクティブファンド編】
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2026 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら