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エクセレントカンパニーに学ぶDCへの取り組み

「誰も取り残さない」を理念に企業型確定拠出年金を運営―電通総研ITがアプリを活用して実践した効果的な施策とは?

finasee Pro 編集部
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2025.12.08
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「誰も取り残さない」を理念に企業型確定拠出年金を運営―電通総研ITがアプリを活用して実践した効果的な施策とは?
近年、人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出す人的資本経営が注目されている。その観点からも企業年金の一つである企業型確定拠出年金(DC)制度の充実は、従業員の活躍やエンゲージメントを高める一因として企業価値の向上に資することが期待されている。企業型DC制度運営に熱心な企業はどのような取り組みを行い、そしてどんな成果を実現しているのか。DC制度運営に秀でた企業に贈られる「2025年DCエクセレントカンパニー」継続教育部門において優秀賞に輝いた電通総研ITの取り組みを紹介する。


電通総研ITが企業型確定拠出年金(DC)の継続投資教育で成果を上げている。特筆すべきは元本確保型のみを選択する加入者の割合が、2年半で45.6%から20.0%まで減少した点だ。同社では加入者にDC専用アプリの活用を促し、元本確保型偏重の課題に対処してきた。「誰も取り残さない」という理念のもと実施された取り組みから、効果的な継続投資教育の秘訣を探る。

元本確保型偏重への問題意識からDC専用アプリ導入を決定

当社はDCと確定給付企業年金(DB)を併用しています。社員の年金資産の割合はDCが約8割、DBが約2割です。DBは全国情報サービス産業企業年金基金(JJK)に加入しています。M&Aにより電通総研グループとなった経緯がありますが、JJKへの加入は前身企業の時代から続いています。

継続投資教育に注力した背景には、加入者のDC掛金が元本確保型に集中していた状況がありました。2022年9月時点では全社員の45.6%が元本確保型のみを選択しており、20代では65.8%にも達していました。経営層を含め、この状況は明らかに問題だと認識していました。

対策の1つとして、2021年に親会社の電通総研が開発したDCの専用アプリ『お金のシェルパ』を導入しました。このアプリは、加入者がリスク許容度診断に基づいた資産配分と現在の資産配分とを可視化して確認できる機能があります。また、運用状況がマッピングされるので自分の位置を同僚と比較することもできます。運用への改善意識が生まれやすく行動を促す仕掛けがあったことから、まさに当社の課題解決に有効だと考え導入を決めました。

全社員のログインを目指しアプリの利用を促進

2022年11月にアプリを導入して以降、継続投資教育を兼ねて本格的な利用促進に取り組みました。まずは「全社員に一度ログインしてもらうこと」を初期目標として、導入後3カ月は週1回のメールマガジンを配信。ログインセミナーは日時を変えて複数回開催し、加入者が手元で操作しながら進められるプログラムを実施しました。社長からも自身の体験談を交えてDC運用の大切さを発信したことで、加入者がアクションを起こしやすい導線を作りました。

この過程で生じた課題は、ログインに必要な運営管理機関サイトのID・パスワードが分からない加入者が続出したことです。再発行をするにもコールセンターへの電話や郵送での申請が必要で、対応を後回しにするケースが目立っていました。こうした問題を解決するため、オンラインでID・パスワードの再発行が完結できる仕組みを整備しました。具体的にはTeamsのシステムを使って全加入者から同意を取り、運営管理機関に会社のメールアドレスを登録しました。

若手向けの教育では新入社員向けセミナーにも力を入れました。全員参加必須の研修として「楽しく投資を学べる」をテーマにセミナーを開催し、運営管理機関によるDC制度の基本説明、ファイナンシャル・プランナー(FP)の講義を行いました。同期社員やFPと意見交換をしながら運用指図書を記入する時間を設け、納得感のある選択を促しています。

運用状況の可視化が見直しのきっかけに

アプリの利用状況や施策の効果は、社長、人事担当、アプリ担当者のメンバーで継続的に分析・検証しています。戦略的にさまざまな工夫を積み重ねた結果、アプリ導入時はログイン率が約30%だったところ、現在は約80%まで上昇しました(図1)。

 

継続投資教育の最大の成果は、元本確保型商品のみ選択者の割合が、大幅に減少したことです。2022年9月時点では45.6%(20代では65.8%)だったところ、2025年3月には20.0%(20代では19.3%)まで減少しました。2023~2024年の新入社員に限定すると、元本確保型のみで運用を行う加入者は1人もいません。

最近、これまでアプリを使っていなかった社員からも「忙しさにかまけてDCのことを後回しにしていたが、ふと届いたメルマガをきっかけにログインして、自分のスコアの低さに驚いた。同僚の状況を見て危機感を持ち、運用を見直した」といった声を聞くことができました。

これまで多くの社員は、「自分のDC運用は適切なのか」「何か問題があるのか」といった不安を抱えながら、行動に移せずにいたのではないかと感じています。アプリを通じて自身の運用状況がスコアとして可視化されたことで、漠然とした不安が具体的に把握でき、見直しのきっかけになっていると思います。

また、アプリには定年時に受け取れるDC資産のシミュレーション機能があり、マッチング拠出をする場合・しない場合の金額の差も見ることができます。こうした機能を通じて老後資金として使える金額が具体的にイメージできることで、自分ごと化も進んでいる印象です。実際、マッチング拠出の申込割合も2021年には15.0%だったところ2025年には32.2%まで増加しました。

今後の課題は加入者の多様なニーズに対応していくことです。年齢やライフステージ、金融リテラシーのレベルによって必要な情報は大きく異なるため、今後はFPによる個別相談をより充実させていくことを検討しています。個々の状況や悩みに応じてアドバイスを受けられる場として、より実効性のある投資教育を実現したいと考えています。特に、これから資産形成を本格的に始める若手社員や、ライフイベントを迎える中堅層にとって、個別相談は大きな安心材料になるはずです。

一人で背負い込まず、社内外のサポートの活用を

DC担当者は幅広い業務を抱えており、継続教育だけに集中するのは難しいものです。だからこそ一人で背負い込まず、使えるサポートは最大限活用していくことが重要だと感じます。また外部ツール・アプリの導入など、「仕組みで支える」ことも有効な手段です。

私たちDC担当者は地道ながらも社員の人生に長く関わる大切な役割を担っています。限られた時間とリソースの中で思うように進められないこともありますが、加入者がDC制度を理解し、資産形成に向き合えるようになることは、その人の将来の安心につながり、ひいては企業にとっても大きな価値になると信じています。これからもお互い無理なくできることを少しずつ進めていきましょう。

電通総研IT 管理本部 人事部部長 黒川 和宏氏(右)、管理本部 人事部 猿田 由香氏(左)

会社概要 本社:東京都港区 業種:システム構築事業 加入者数:572名
(2026年1月1日より電通総研テクノロジーに社名変更)

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