販売会社の投信担当者が選ぶ優れた運用会社(ブランドインテグレーション調査)において、ゆうちょ銀行・郵便局編で2025年に総合的に最も高い評価を得たのは前年に続いて野村アセットマネジメントだった。第2位も前年同様に運用力が評価されてセゾン投信になった。ゆうちょ銀行・郵便局が運用会社を評価する6つの軸(「運用力」「商品開発力・企画力」「営業担当者・研修担当者の質」「サポート力」「識別力」「ガバナンス」)の中で、もっとも重視しているのは「運用力」だ。それに次ぐのが「営業担当者・研修担当者の質」で、第3位以下が「サポート力」「商品開発力・企画力」「ガバナンス」「識別力」になっている。この6項目の中で野村アセットマネジメントは4項目でトップに評価されている。
第1位の野村アセットマネジメントは、「営業担当者・研修担当者の質」「サポート力」「ガバナンス」「識別力」の4項目でトップの評価を得た。また、「商品開発力・企画力」は前年の第5位評価を第2位に上げるなど、すべての項目で2位以上という高評価を得ている。第2位のセゾン投信は「運用力」と「商品開発力・企画力」の2項目でトップに評価された。第3位は大和アセットマネジメントが前年第6位から大きく順位を上げた。
野村アセットマネジメントの強さの源泉とは?
総合的に高い評価を受けている野村アセットマネジメントの強さは、ゆうちょ銀行・郵便局の売れ筋ファンドとして常にトップ10にランクインしている「野村世界6資産分散投信(成長コース)」と「野村6資産均等バランス」を提供していることにあると考えられる。これらは、国内外の株式と債券、そして、REIT(不動産投資信託)に分散投資するファンドになっている。世界に幅広く分散投資するというコンセプトは、投資信託の基本的な機能そのものといえる。郵便貯金から投資信託による資産形成へという流れを作るにあたって、最初に提案する商品として「世界中に分散投資して安定的に運用する商品」である「野村世界6資産分散投信(成長コース)」と「野村6資産均等バランス」が適していたということだろう。
そして、野村アセットマネジメントは組織的なサポート体制によって「投資の第一歩を踏み出すためのアドバイス」を中心に、ゆうちょ銀行と郵便局の全国拠点において徹底した研修を行っていると考えられる。その結果が、「営業担当者・研修担当者の質」と「サポート力」において、昨年から2年連続でトップに評価され続ける力になっている。「資産運用立国」という国策を推進するためには、全国に最も緻密な店舗ネットワークを有するゆうちょ銀行・郵便局のネットワークが、「郵便貯金から投資信託へ」という流れを作り出す必要があるという使命感がゆうちょ銀行・郵便局にはあるだろう。その強いニーズに対して商品と販売サポートという両面で頼りになる存在としての立場を固めているのが、野村アセットマネジメントといえる。この強さは簡単には覆せないかもしれない。
「運用力」の評価と運用実績にギャップ
「運用力」でトップに評価されるセゾン投信は、「セゾン・グローバルバランスファンド」と「セゾン資産形成の達人ファンド」を提供している。「セゾン・グローバルバランスファンド」は、ゆうちょ銀行の取り扱い投資信託のバランス運用型ファンドの中で安定的に高い運用成績を残しているファンドとして知られている。ただ、2025年10月末時点でトータルリターンの5年(年率)ではトップが「野村世界6資産分散投信(成長コース)」の16.06%、そして、3年(年率)のトップは「野村資産設計ファンド(DC・つみたてNISA)2060」の15.32%で、「セゾン・グローバルバランスファンド」は野村アセットマネジメントやJP投信の運用ファンドに負けてしまっている。運用実績は評価に直結するだけに、来年以降の「運用力」の評価は違ったものになるかもしれない。
一方、総合評価で第3位に躍進した大和アセットマネジメントは、運用成績で極めて優れた成績を残している「iFree S&P500インデックス」や「大和 ストック インデックス225ファンド」などを提供している。インデックスファンドであるため「運用力」の評価にはつながらないが、「商品開発力・企画力」や「サポート力」などの高い評価につながっている。特に、「iFree S&P500インデックス」はゆうちょ銀行・郵便局の売れ筋トップのファンドとして2025年に入って人気が定着している。インデックスファンドもまた、「貯金から資産運用」を促す重要なツールとして位置づけられるため、運用成績の面でも優れた商品を提供する大和アセットマネジメントの評価を大いに高めることになっている。
「人材」に対する要求水準が高まる
ゆうちょ銀行・郵便局の評価で2025年に評価軸が大きく動いたのは「営業担当者・研修担当者の質」という項目だった。「ニーズや課題を踏まえた対応をしてくれる」という設問への支持が前年の50.9%から、68.1%へと大幅に高まった。また、「業界動向・他社動向に詳しく、商品・マーケットの知識がある」も前年の49.1%から55.6%に高まった。反面で「プレゼンテーション能⼒が高い」は前年の56.6%から44.4%に下がり、「コミュニケーション能⼒に優れている」も50.9%から49.6%になった。一般的なサポート能力よりも、より具体的に「販売額を増やすためのアドバイス」や「顧客の興味・関心を高める話し方」など、現場の販売力を高めるためのアドバイスが求められるようになっているのではないだろうか。これは、新NISAスタートから2年、「つみたてNISA」が始まった2018年1月から7年以上の歳月が流れ、ゆうちょ銀行・郵便局の販売現場でも、より高い水準の販売サポートを求めるようになっているからだと考えられる。
「営業担当者・研修担当者の質」や「サポート力」という項目において、前年から大きく評価を高めているキャピタル・インターナショナルは、今後も評価を一段と高めていく可能性がある。特に、「サポート力」の評価で前年の第22位から第8位へとジャンプアップしている。同社には「キャピタル世界株式ファンド(DC年金つみたて専用)」という運用実績で評価の高いファンドがある。ゆうちょ銀行・郵便局では、同ファンドのみの提供にとどまっているが、外資系の中ではピクテ・ジャパンやHSBCアセットマネジメント、アライアンス・バーンスタイン、フィデリティ投信、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントなど国内で実績のある運用会社を差し置いて高い評価を勝ち得ていることは注目に値する。
ゆうちょ銀行・郵便局では、野村アセットマネジメントを筆頭に、大和アセットマネジメント、三菱UFJアセットマネジメント、アモーヴァ・アセットマネジメント、アセットマネジメントOneなど国内の大手運用会社の評価が高い。これは、全国津々浦々に点在する拠点を広くカバーできるサポート力を提供するために、相応の人員を提供する必要があるためだろう。このチャネルで評価を得るためには、経営規模の充実が求められるといえる。そこを割ってランキング上位に食い込んでいるセゾン投信やキャピタル・インターナショナルは、規模の面ではかなわないものの、規模の劣勢をはね返すだけの個性があるということだろう。特に、ゆうちょ銀行・郵便局の担当者が運用会社に求めるスキルを、より高く求めるようになっているのであれば、運用会社の工夫や努力によって規模に勝る印象を残せるだろう。ゆうちょ銀行・郵便局の評価ランキングは大きな転換期を迎えているのかもしれない。


