販売会社の投信担当者が選ぶ優れた運用会社(ブランドインテグレーション調査)の全国調査において、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)法人編で2025年に総合的に最も高い評価を得たのは前年に引き続きキャピタル・インターナショナルだった。キャピタル・インターナショナルは、「運用力」や「サポート力」など個別の評価項目で「商品開発力・企画力」を除く項目でトップの評価を受けている。第2位はフィデリティ投信が前年の第3位から順位を上げ、前年第2位だったアライアンス・バーンスタインは第3位に後退した。前年はトップ10圏外だったインベスコ・アセット・マネジメントが第7位に食い込んできたことが目立っている。IFA法人が運用会社を評価する6つの軸(「運用力」「商品開発力・企画力」「営業担当者・研修担当者の質」「サポート力」「識別力」「ガバナンス」)の中で、最も重視しているのは「運用力」だ。それに次ぐのが「サポート力」、「識別力」、「営業担当者・研修担当者の質」であり、「商品開発力・企画力」と「ガバナンス」は評価の価値が低くなっている。
「運用力」で評価される運用会社は実績も十分
IFA法人を対象にした運用会社の評価は、外資系運用会社優位の状況が続いている。2024年、25年と連続してトップ3はキャピタル、フィデリティ、アライアンス・バーンスタインという米国系大手運用会社が占めた。米系運用会社が高く評価されるのは、2020年3月の「コロナ・ショック」以降は、米国株式市場が世界の市場をリードして上昇し、他の市場と比較しても非常に高いパフォーマンスを稼ぎ出してきたことと関係が深いと考えられる。IFAは証券会社や銀行に所属しない独立系のアドバイザーであるだけに、預金や住宅ローンの相談等のついでにではなく、資産形成についての強い意欲を持った人々に投資信託を提案する。それだけに、案内したファンドのパフォーマンスについては自らの評判に直接かかわってくる重要な要素として厳しく評価していると考えられる。
その点で、世界で最も高い運用成績につながった米国株式の運用で定評のある運用会社は、米国をホームグラウンドにしているだけで有利な立場にある。もちろん、米国を本拠としていても平均以上に優れた運用成績を残せていないと高く評価されることはない。トップ3に選ばれた運用会社は、いずれも長期のトラックレコードを持ち、長期の運用期間において米国の代表的な株式インデックスを上回る成績のファンドを持っている。
トップに評価されたキャピタル・インターナショナルは、旗艦ファンドである「キャピタル世界株式ファンド」が純資産残高が1兆円に迫る大型ファンドになっている。そのパフォーマンスをみると2025年11月末で、過去1年のトータルリターンは21.55%で内外の株式に投資する国内籍の株式ファンド682本中216番目の成績だが、過去5年間では126.80%で682本中107位、過去10年では258.64%となり682本中11位の成績になる。運用期間が長期になるほどに上位の運用成績を残していることは、同社の運用力に対する高い信頼度に結び付く。同社に対する評価として自由記述では「長期運用に徹する姿勢が、企業の経営、人事、商品すべてに表れている」という言葉があり、支持の理由を象徴している。
「運用力」で第2位にランキングされたフィデリティ投信は、残高が9200億円を超える「フィデリティ・世界割安成長株投信Bコース(為替ヘッジなし)(愛称:テンバガー・ハンター)」が、2025年11月末時点で過去5年のトータルリターンで139.88%となり、内外の株式を対象とした国内籍ファンド682本中75位の成績にある。現在の米国株市場はAI関連のテクノロジー株式を中心とした成長株が優位な展開が続いており、割安株に着目した「テンバガー・ハンター」には不利な市場環境といえる。実際に過去3年までの成績では平均に負ける運用成績になっているが、5年では市場平均を大きく上回る成績になっている。この他にも「フィデリティ・USハイ・イールドファンド」、「フィデリティ・USリート・ファンド」、「フィデリティ・グロース・オポチュニティファンド」、「フィデリティ・日本成長株・ファンド」が残高5000億円を超える大規模ファンドに成長している。このラインアップの多彩さが「商品開発力・企画力」でトップに評価される理由だろう。
アライアンス・バーンスタインは、国内のアクティブファンドの中で最大の純資産総額約3兆4700億円の「アライアンス・バーンスタイン米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予定分配金提示型」を運用する。同ファンドは為替ヘッジなしの「Bコース」も1兆8600億円を超える巨大ファンドだ。2025年11月末時点で過去10年の運用成績が外国株を投資対象とした国内籍ファンド880本の中で15位の成績になっている。過去1年では平均を下回る成績になっているが、長期で高いリターンを残していることが根強い支持の背景だろう。
また、今年の総合評価を大きく上げたインベスコ・アセット・マネジメントは、「運用力」の評価で第4位になった。「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)(愛称:世界のベスト)」が残高2兆9700億円を超え、国内アクティブファンドで2番目に大きな規模のファンドになった。このファンドも内外の株式に投資する国内籍ファンド682本中で過去5年が27位、過去10年で48位という成績になっている。
「サポート力」は「分かりやすさ」と「タイムリーさ」
「サポート力」と「営業担当者・研修担当者の質」とで前年に続くトップに評価されているのはキャピタル・インターナショナルだった。自由記述の回答には「歴史、運用力、資料等全てにおいて優れている」、「説明資料も分かりやすく、必要な情報を迅速に対応していただけるので信頼がある」などのコメントがある。同じく、「サポート力」と「営業担当者・研修担当者の質」とで前年に続いて第2位に評価されたアライアンス・バーンスタインは、「月次レポートや販売用資料が見やすい」、「勉強会やメールなどフォローアップ体制ができている」、「ストラテジストの見通しの発信」など情報提供に積極的に取り組んでいる姿勢が評価されている。
飛躍の時を迎えたIFA
IFA法人は、比較的若い業態で、本格的に拡大してきたのは「NISA」が始まった2014年1月以降。そして、「つみたてNISA」が始まった2018年1月、「新NISA」が始まった2024年1月などをきっかけに国民の間で資産運用への関心が高まるのと並走する形でIFAビジネスも成長してきた。一般の投資家が資産形成に目を向け始めたのは「つみたてNISA」の開始に合わせて投信各社が競うように設定した低コスト(購入手数料なし、信託報酬率が低い)・インデックスファンドが出そろったあたりからで、その流れが加速したのが1人当たり1800万円の非課税枠が生涯使える新NISAのスタートだ。「つみたてNISA」が始まってから約8年になろうとしているが、IFAの経験年数も10年に満たないアドバイザーが大半と考えられる。
日本証券業協会が発表しているIFA法人を含む金融商品仲介業者(法人)の登録外務員数は「つみたてNISA」が始まる直前の2017年12月末時点で567社に約3123名だったものが、「新NISA」が始まる直前の2023年12月末時点には638社7760名に倍増し、2025年6月末時点では665社9997名になっている。もはやIFA「1万人時代」がやってきたといえる。米国のIFAは2017年時点で12万7681人という規模だったため、国内のIFAには依然として成長余地が大きいと考えられる。証券会社に所属する登録外務員の数は2017年12月末時点で7万6696名だったが、徐々に減少し2025年6月末時点には7万1480名になっている。個人投資家がアドバイスを求める証券サービスは証券会社からIFAに移っていくのかもしれない。
IFAが1万人規模に成長したとはいえ、証券業界における知名度は依然として低く、大資本に守られていないだけに、事業の存続性も含めて顧客からの信用を勝ち得るのは簡単ではないだろう。IFAが証券会社や銀行よりも頼りになるという信頼を勝ち得ていくためには、より優れたパフォーマンスを提供し、より分かりやすく丁寧な情報をタイムリーに届けるということを地道に行っていくしかないだろう。IFAが運用会社に求めているのは、銀行や証券会社と同等以上の運用成果と情報ということになる。
IFAチャネルは先行した米国において、すでにアドバイザー経由の顧客資産では証券会社に匹敵するシェアを獲得し、富裕層を中心に登録投資顧問業者(RIA)としてアドバイスだけではなく顧客に代わって資産運用を代行してフィー(手数料)を得る事業に発展している。金融庁も注目している米国や英国のIFA事業の発展を考えると、運用会社としては、今後の発展が期待されるIFA法人に高く評価されることのメリットは大きいと考えられる。先行した外資系各社に比べて国内大手の動きは鈍いように見える。今後の推移をみていきたい。



