内閣府令で基準を公表へ
法案は、暗号資産交換業者の名称を「暗号資産取引業者」と改め、利用者保護の観点で規制を強化する内容になっています。施行後は、流動性、コンプライアンス、移転記録管理などについて内閣府令で基準が示され、その基準を満たさない暗号資産の取り扱いが禁止されることになります。
暗号資産を投資対象とする投資運用行為、投資助言行為は、それぞれ既存の投資運用業、投資助言業の枠組みで規制されます。
ビットコインなど一般的な暗号資産については、取り扱いにあたって取引業者が、その暗号資産の性質・機能や供給量、基礎技術など基本的な情報を公表する必要が生じます。発行者が存在するタイプの暗号資産(特定暗号資産)に関しては、そうした基本的な情報に加え、発行者の商号や経理の状況、暗号資産に関連する事業の状況を含め、情報の公表が求められます。
今回政府が提出した法案は、暗号資産の金商法移行の他にも、サステナビリティ情報の開示強化、スタートアップ企業への資金供給促進を目的とした有価証券報告書等に関するルールの緩和、インサイダー取引規制の対象者拡大などが盛り込まれています。
「定番のビジネスモデル」構築が不可欠に
金融庁は規制強化による利用者保護の趣旨を前面に打ち出していますが、法改正が実現すれば、投資家から見た暗号資産の敷居はかえって低くなり、既存金融界においても、暗号資産ビジネスを手掛ける事業者が拡大すると見込まれます。
一方で事業者側の課題となるのは、セキュリティを確保・維持するコストです。法案のベースとなった報告書を作成した金融審議会作業部会の委員の1人、松尾真一郎氏(ジョージタウン大学/バージニア工科大学研究教授)は、3月に開かれた「FIN/SUM2026」(金融庁、日本経済新聞社共催)のセッションに登壇し、次のように語りました。
「金商法移行でセキュリティ対策のやることが多くなると、経営が立ち行かなくなるのではという声があるが、そうした反応はおかしい。セキュリティというのは技術の話でありながら、それより実は企業経営の話であり、鍵を握り、ボールを持っているのは経営者、CEOの方だ」
「無限の予算があればインシデントをゼロにすることが出来るだろうが、そうでない限りはリソース配分の問題だ。経営としてのリスク管理が先にあり、そこから実現手段としてどんな技術を入れ、どう運用をするのかという順序になる。利益構造がうまくできてないからセキュリティ対策費が出せないと愚痴を言う方が出てくるのは、本当は良くない。インターネットの ISPは利益率が低いが振れ幅が少ないのでセキュリティ投資ができるのに対し、暗号資産業界には米国を含め定番のビジネスモデルが存在しない。それを作り上げなければ健全な議論はできない」
同セッションに登壇した金融庁暗号資産・ブロックチェーン・イノベーション参事官の今泉宣親氏は、4月3日に公表した「暗号資産交換業等におけるサイバーセキュリティ強化に向けた取組方針」に言及。「暗号資産交換業による自助、業界による共助、そして我々行政がやる公助の三本柱で取り組んでいこうということ」とその趣旨を説明した。
