半沢氏は、「新NISAの開始など政府の資産運用立国の取り組みにより、長年の課題であった家計の『貯蓄から投資へ』の動きも本格化している。こうした前向きな動きを捉え、我が国全体でリスクマネーのインベストメントチェーンを太くしていくことが不可欠だ」と指摘。その上で、「銀行界は家計と企業を繋ぐ金融仲介機能を発揮し、企業による成長投資の後押しや家計の資産形成の支援を行い、ダイナミックなマネーフローを創出する役割を担っていく。家計・企業のいずれに対しても、AIを活用し、利便性や付加価値の高いサービスの提供に挑戦しているところだ」と説明しました。
インベストメントチェーン活性化に向けたAI活用の一例として、融資業務における活用事例を紹介。「初期的な案件分析やお客様へのヒアリングポイントの確認、稟議のドラフトにおいて、AIエージェントによる支援が有効」との認識を示し、「情報整理や与信判断における効率化を実現し、営業活動など、より付加価値の高い業務にかけるリソースを捻出していく」と述べました。
MUFGは2024年4月、デジタル戦略統括部を新設。足元までにグループ全体でAIの業務実装が100件超進んでおり、「2026年度には250件超とすることを目指している」といいます。
足元ではSakana AI社と組み、融資業務を高度化する「AI融資エキスパート」の全国展開を目指して検証を進めています。半沢氏は「過去の稟議書やマニュアル等の形式知の取り組みに加え、MUFGが積み上げてきた融資における目利き力、勘所、判断の機微といった暗黙知をAIに取り込み、業務全体の付加価値を上げる」と狙いを説明。「案件数が増えるほどAIが行員の思考プロセスを学び、判断軸を獲得し、精度の向上が図られる。さらに専門家がナレッジを承認・管理することで品質を高め、MUFG標準として当社の暗黙知を蓄積する枠組みの整備も、差異化を進める鍵になる」と説明。将来的には「他業務における暗黙知もアセット化し、AIに取り込むことが可能」との考えを語りました。
リテール部門では、昨年6月、専用アプリを中心とする新ブランド「エムット」の提供を開始。「銀行・証券・信託・カードを始めとするグループ各社の幅広い金融サービスをシームレスに利用できるものであり、AI機能の実装やOpenAI社との戦略的なコラボレーションによって、新たな体験価値の提供にも取り組んでいる」と述べました。ウェルスナビ社と共同開発しているアドバイザリープラットフォーム「MAP」についても、「MUFGの多様なデータとAI技術を活用し、お客様1人1人の状況やライフステージ、ライフイベントに寄り添った最適なアドバイス提案をしていくことを目指していく」と話しました。
加えて、銀行界全体として、ブロックチェーン技術の活用やAIの悪用を念頭に置いたサイバーセキュリティ対策にも取り組んでいく姿勢を示しました。
SMFG磯和氏、「《昔の野球的》なこの国を変える」
三井住友フィナンシャルグループの磯和啓雄・執行役員専務グループCDIOはAIの実装を阻害する硬直的な組織文化を打破するための人材配置・育成に向けた考えを、単独講演で語りました。
磯和氏は、支援先の企業規模ごとの縦割りを脱し、同じ担当者が大企業にもスタートアップにも顔を出すサイクルを創出するなどの構想を説明。その上で、「部長などの今の偉い人よりも、今入って来る人材の方が絶対にAIに詳しいはずだが、ほとんどの企業では部長のハンコがないと前へ進まない。下手な3年生がベンチに入れるのに、上手い1年生はトンボをやっている昔の野球と同じ。このへんを変える必要があり、(磯和氏自身の)最後の仕事として一生懸命やろうかなと決意をした」と語りました。
「FIN/SUM2026」では、みずほフィナンシャルグループの上ノ山信宏・執行役常務グループCDOも登壇。同グループにおけるAI活用の取り組みとともに、テクノロジー発展が加速する状況下での経営戦略の課題と展望を語りました(関連記事《「事務職大規模削減」報道で注目のみずほFG、執行役常務CDOが胸の内を語る》に詳細)。
