finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
永田町・霞が関ウォッチャーのひとり言

【文月つむぎ】毎月分配型のアウト/セーフは?当局に問われる「線引き力」

文月つむぎ
文月つむぎ
2025.05.07
会員限定
【文月つむぎ】毎月分配型のアウト/セーフは?当局に問われる「線引き力」

9年前のレポートで毎月分配型を徹底批判

4月23日に、岸田文雄前首相が会長をつとめる資産運用立国議員連盟が公表した「資産運用立国2.0に向けた提言」がメディアやSNSを賑わせている。提言内容は「家計の安定的な資産形成」に関わるもののほか、「中小企業等の成長に資する金融サービスの充実と多様な資産運用商品の提供」や「企業価値の向上・コーポレートガバナンス」、「資産運用業・アセットオーナーシップの更なる高度化」に関するものなど、極めて多岐にわたっている。

読者の皆様の注目は、「高齢者が物価上昇の下でも、投資のメリットを受けつつ、生涯にわたって計画的に運用資産を活用して生活に充てることができるよう、高齢者に限定して対象商品の拡大・スイッチング解禁を図る『プラチナNISA』の導入など、政府は退職世代向けの資産運用サービスの充実に取り組むべきである。」という記述だろう。ここでいう「高齢者限定商品」は毎月分配型投信であると各メディアが指摘している。

これまで金融庁は毎月分配型投信について、長期投資に向かないことを金融レポート等で注意喚起してきた。特に平成28事務年度の金融レポートの指摘は鋭い。

まず、「複利効果が働きにくく、元本を取り崩しながら分配される場合には運用原資が大きく目減りして、運用効率を下げてしまう」ことを問題視したうえで、投信協会が実施した顧客アンケート結果から、毎月分配型投資信託を保有する顧客のうち、「分配金として元本の一部が払い戻されることもあることや支払われた額だけ基準価額が下がることを認識していない割合が約5割にも上っている」として、「毎月分配型投資信託の商品特性について、販売会社が顧客に十分情報提供した上で、顧客が商品選択しているのかについては疑問が残る」と指摘している。

さらに、「毎月分配型投資信託については、分配金を月々の生活資金に充てたいといった高齢者を中心とする顧客ニーズがあるとの見方もある」と理解を示しつつ、「顧客アンケートでは、受け取った分配金を何に使いたいかとの質問に対して、分配金を『特に使わない』、『同じ投資信託を購入する』等の回答が相当数見られていることから、顧客ニーズを十分に確認せずに販売が行われている可能性がある」と手厳しい。最後に、米国における毎月分配型投信の状況に触れ、「米国においては、投資信託全体に占める毎月分配型の割合が残高ベースで20~30%で推移する中、毎月分配型投資信託の多くは債券に投資し、利子の範囲内で分配するものが多い」として、タコ配に頼った高配当をうたう毎月分配型投信が目立つ我が国の現状をあらためて憂えていた。

新NISA口座数の伸び悩み、60代以上の低調も背景に

一方、政府が退職世代向けの資産運用サービスの充実に取り組むべきと主張する理由は明確だ。各民間の調査によると、おおむね、60歳代以上のNISA口座開設は1~2割程度に留まっており、3割に近い30歳代~50歳代よりも利用率が低い。金融庁が4月3日に開催した「NISAに関する有識者会議」の事務局説明資料でも、現役層に比べ、60歳代以上のNISA口座開設数の伸びが低いことが示されている。NISA口座数は2024年に436万口座増えて2,560万口座に達し、成人の4人に一人が口座を保有するに至っているが、足元で開設数の伸びは鈍化しており、2027年までに3,400万口座という政府目標を達成するには、高齢者のNISA利用率アップが欠かせない。もちろん、数値目標達成が主目的ではない。政府は、日本の金融資産の6割超を主に預貯金で保有する60歳以上の世代がNISA制度を活用することによって、家計の資金が成長投資に向かい、企業価値向上の恩恵が家計に還元されることで、さらなる投資や消費に繋がる、「成長と分配の好循環」を実現することを目指しているのだ。

こうした中、SNSでは、「(余裕資金の乏しい)年金暮らしの高齢者にリスクを取らせるな」、「長期保有が難しい高齢者に投資させるな」といった怒りの声が飛び交っている。また、対象商品として毎月分配型投資信託を検討しているとの報道に対し、「長期投資を促すNISA制度の趣旨から逸脱している」とか、「どうせ金融機関の手数料稼ぎが目的だろう」などといった声が聞こえる。

金融庁はこれまで安定的な資産形成・資産運用の観点より、毎月分配型投信のほか、テーマ型投信やファンドラップ、外貨建て一時払い保険、仕組債、仕組預金といった商品に厳しい目を向けてきたが、それぞれの商品の有用性は認めたうえで、顧客適合性の確認や商品説明といった販売姿勢を問題視してきたと筆者は認識している。基本的に商品自体に罪はなく、業者本位と言われても仕方のない売り方が問題なのだ。資産取り崩しニーズのある高齢者の資産寿命を延ばすうえで、毎月分配型投信は有用であることは間違いない。極度なタコ配やサービス内容に見合わない高い手数料の商品を排除し、リーズナブルな手数料で安定的な分配金を目指す毎月分配型投信に限定すればよい。なお、趣旨からして、当然ながら分配金の再投資はできないようにすべきだと思う。

ちなみに、先日、資産運用立国議員連盟メンバーである若手議員と面談する機会があった。彼によると、同議連はこれからも幅広に提言を行っていくとのことだ。そうであるならば、米国のRIAの活躍を踏まえ、我が国でもライフプランニング(ゴールベースアプローチ)に基づき具体的な投資提案を行うIFAなどの金融アドバイザーの拡充策もぜひ盛り込んでほしいと思っている。J-FLECの認定アドバイザーではラストワンマイルを埋められない。もちろん、「顧客本位の業者」であることが前提であり、並行して業者本位の輩を排除する仕組みづくりが欠かせないが、トランプ政権誕生で市場の不確実性が増す中、アドバイスニーズは高まっており、官民挙げて良質なアドバイザーの拡充を図るべき時だと心から思っている。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
1

関連キーワード

  • #NISA
  • #投資信託
  • #金融庁
  • #法律・制度
前の記事
【文月つむぎ】私が相場の先行きを悲観しない究極の理由
2025.04.16
次の記事
【文月つむぎ】「プラチナNISA」という言葉がない!自民党金融調査会の最新提言を読み解く
2025.06.04

この連載の記事一覧

永田町・霞が関ウォッチャーのひとり言

金融行政方針が示す「次の金融」の輪郭――資産運用立国を、商品からインフラへ 

2026.09.24

「顧客本位」は現場に届いているか――金融庁「令和7年度実績評価書」から考える、次の一歩

2026.09.10

株式市場の活況を次の改革へ―PTS・長時間取引・トークン化で日本株の競争力を高める

2026.09.03

販売現場の不祥事を誰が止めるのか――保険代理店・IFAの監督に必要な「多層管理」

2026.08.17

「口座を開く」から「資産形成が根づく」へ――日証協の調査が示す国民皆資産形成への次の一手

2026.08.10

個別商品から、経営の仕組みへ―金融庁モニタリング結果(FDレポート)が示した顧客本位の次の段階―

2026.08.05

GPIFの国内投資を国富の拡大につなげるには――「金利のある世界」で問い直す年金運用

2026.07.22

「骨太の方針・日本成長戦略」と家計の資産形成――問われる「貯蓄から投資へ」の先

2026.07.10

速さを支える足場の築き方とは――moomoo証券の行政処分から考える「顧客本位」の土台

2026.07.02

人生の出口にも、設計図を――終活を「思い」から「手続きの手がかり」へ

2026.06.22

おすすめの記事

資産運用立国の実現に向けた官民対話の新たな挑戦──「資産運用フォーラム」が描く日本市場の未来とは
③日本の金融リテラシー向上へ、将来の資産運用を支える人材を育てる

finasee Pro 編集部

資産運用立国の実現に向けた官民対話の新たな挑戦──「資産運用フォーラム」が描く日本市場の未来とは
②DX・企業価値・サステナ・オルタナの4分野で日本を動かす

finasee Pro 編集部

資産運用立国の実現に向けた官民対話の新たな挑戦──「資産運用フォーラム」が描く日本市場の未来とは
①国内外の金融50社超が参加!資産運用フォーラムが目指すもの

finasee Pro 編集部

日本初のハンセンテック指数連動ETFが東証上場―注目浴びる“中国テック株”が投資の選択肢に

Finasee編集部

10億円以上の資産家が多いのは山口県、北陸ではNISA活用が進む。県民性から読み解く日本人の投資性向とは?

Finasee編集部

浜銀TT証券の売れ筋に大きな変化、「WCM」がトップを取り、「AB米国成長株投信」が3カ月ぶりランクイン

Finasee編集部

SMBC日興証券で「世界のベスト」がトップに浮上、「日経225」人気が衰えてアクティブファンドの出番

Finasee編集部

人気アクティブファンドの強さを決めるものとは?「ネクスト・ジェネレーション」運用元のWCM等が持つ“意外な要素”とは

Finasee編集部

「顧客そっちのけ」の乗り換え営業からの転換点とは?「今では考えられない状況」から投信350兆円時代までを振り返る

Finasee編集部

ファンドアナリスト海老澤 界が2026年第1四半期を振り返る~投資信託の今と、これから

Finasee編集部

著者情報

文月つむぎ
ふづきつむぎ
民官双方の立場より、長らく資産運用業界をウォッチ。現在、これまでの人脈・経験を生かし、個人の安定的な資産形成に向けた政府・当局や金融機関の取組みについて幅広く情報を収集・分析、コラム執筆などを通し、意見を具申。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
【有識者対談】“正念場”の保険業界に学ぶ「顧客本位のビジネスモデル」の持続性(前編)
金利高止まりで足利銀行の売れ筋が二極化──「のむラップ」と「世界のベスト」が示した投資家の選好
“霞が関文学”で読み解く金融界② 仕組債販売ルール指針案と「文脈検査の拡張」
佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」第21回:“106万円の壁”撤廃の影響を受けるセクターとは
【第3回】オルタナティブ資産ファンドは何を見て選ぶのか
「支店長!お客さまが迷惑そうなので、電話をしたくありません!」
金利上昇で広島銀行の売れ筋に変化、米国株は「S&P500」より「メジャー・リーダー」選好の理由は?
浜銀TT証券の売れ筋に大きな変化、「WCM」がトップを取り、「AB米国成長株投信」が3カ月ぶりランクイン
金融行政方針が示す「次の金融」の輪郭――資産運用立国を、商品からインフラへ 
「IFA管理のガイドライン策定を」――日証協が提言を受け新作業部会を設置
佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」第21回:“106万円の壁”撤廃の影響を受けるセクターとは
「支店長!お客さまが迷惑そうなので、電話をしたくありません!」
【第3回】オルタナティブ資産ファンドは何を見て選ぶのか
【有識者対談】“正念場”の保険業界に学ぶ「顧客本位のビジネスモデル」の持続性(前編)
アセット・スワップで有効性検証をあえてやってみたら?
「AIはポジティブ回答に寄っていることも…」投資のプロが“実際に行っている”情報インプット術
金融行政方針が示す「次の金融」の輪郭――資産運用立国を、商品からインフラへ 
“霞が関文学”で読み解く金融界② 仕組債販売ルール指針案と「文脈検査の拡張」
物色のテーマ、株価指標さえも時には変わる…ベテランファンドマネジャーが平成バブルで得た教訓
金利高止まりで足利銀行の売れ筋が二極化──「のむラップ」と「世界のベスト」が示した投資家の選好
「支店長!お客さまが迷惑そうなので、電話をしたくありません!」
預り資産額1兆円を見据えるブレイクスルーの全貌  ゴールベースとチーム体制でリテール金融を変える
【金融風土記】「豊かさと分散」の経済圏――山形の金融動向とは
日本版IFAに迫る自主規制の刃、そのとき求められる真の「独立」とは何か
【第2回】債券ファンドは何を見て選ぶのか
お客さまとその家族を深く知り、寄り添い続け、総資産の増加を目指すストックビジネスへ case of 横浜銀行
佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」第21回:“106万円の壁”撤廃の影響を受けるセクターとは
「真剣な姿勢できれいごとを貫く」時代を捉え、顧客に寄り添い、自ら変革し続ける case of 三菱UFJモルガン・スタンレー証券
上位4ファンドの「オルカン」「S&P500」「世界のベスト」「グロース・オポチュニティ」にそれぞれの事情=2026年8月純流入額トップ20
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【日本株アクティブファンド編】
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2026 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら