finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
藤原延介のアセマネインサイト

【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑮不安定な相場で存在感高まるアセットアロケーション運用

藤原 延介
藤原 延介
BNPパリバ・アセットマネジメント マーケティング部
2025.01.07
会員限定
【連載】藤原延介のアセマネインサイト<br />⑮不安定な相場で存在感高まるアセットアロケーション運用<br />

2024年は年末にかけて投信市場への資金フローに鈍化の兆しが見られました。NISAの投資枠が暦年での管理であることを考えれば、新年に入って新たな投資先に資金を向けるため、年末にかけて利益確定売りが出やすいといった要因もあるかもしれません(2023年11月、12月もこうした動きから資金流入が大きく鈍化しました)。

2024年に関して言えば、やはり8月初旬に顕在化した金融市場の不安定化によって、投資家の警戒感が高まったという要因も大きかったと思われます。実際に、それまで資金流入が集中していた外国株式型の資金フローが大きく鈍化した一方で、よりリスクを抑えたアセットアロケーション型(バランス型)のファンドの資金流入額は2024年前半よりも後半の方が大きくなっています。

足元で資金流入強まるアロケーションファンド

以下のグラフを見ると、アロケーション型ファンドの残高は2024年11月時点で17.3兆円となっており、新型コロナショックの相場急落時(2020年3月)の10.0兆円からほぼ一本調子に増加しています。また、資金フローは2021年に入ったあたりから流入トレンドに転じており、足元の5カ月のうち4カ月で1000億円を超える資金流入額となるなど、投信全体の資金フローが鈍化する中でその存在感を高めています。

アロケーション型に分類されるものの中で資金流入が見られている個別ファンドを見ると、銀行での販売が中心と見られるファンドやゴールド(金)への資産配分が特徴となっているファンド、そして確定拠出年金(DC)向けのファンドやネット証券での販売が中心と見られる低コストのバランスファンドなど、様々なチャネルでその関心が高まっていることがうかがえます。なお、対面の証券会社で売れ筋のファンドが出てこないのはアロケーション運用に関心が低いためではなく、ラップ口座がその中心的な役割を担っているためだと考えられます。

 

7-9月の相場混乱を受けても拡大するラップ口座

当連載の「⑤外国株式型への資金集中とアセットアロケーションの重要性」のなかで、アロケーション運用を同じように行う金融商品として取り上げたラップ口座の動きについても確認しておきたいと思います。12月10日に日本投資顧問業協会が公表した2024年9月末時点の契約資産の状況によれば、ファンドラップに代表される「ラップ口座」の残高は20兆円を超えて過去最高を更新しました。次のグラフでも示したようにラップ口座は契約金額・件数ともに増加トレンドが続いており、最新のデータである9月末で、契約件数が173.6万件、契約金額は20.3兆円に達しています。

2024年前半(1-6月)は好調な株式相場、円安外貨高の効果で契約金額の伸びが大きかったものの、7-9月の相場混乱を受けてもなお、契約件数の増加ピッチが弱まっていないことが確認できます。またラップ口座の契約1件当たりの金額は1170万円と、ロボアドバイザー(ロボアド)の人気で一時は1000万円を下回るなど小口化する傾向にありましたが、再び増加トレンドに転じています。こうしたことからも、対面チャネルにおけるラップ口座の拡大も続いているものと考えられます。

 

ラップ口座内で存在感高まる債券ファンド

ここで、拡大するラップ口座の運用状況も確認しておきましょう。投資顧問業協会の統計では9月末時点で20.3兆円の残高がありますが、このうちの大部分は国内のラップ口座専用ファンド(以下、ラップ専用ファンド)で運用されています。ロボアド最大手は外国ETFを活用した資産運用を行うなど、全てが国内の公募投信で運用されている訳ではありませんが、9月末時点の国内公募投信におけるラップ専用ファンドの残高は15.1兆円と、ラップ口座の契約金額(20.3兆円)の4分の3程度を占めています。

以下のグラフはこの15.1兆円に上るラップ専用ファンドにおける投資対象別の残高内訳を示したものです。これを見ると、株式ファンド(外国株式型と国内株式型)が計40.5%にとどまっているのに対し、債券ファンド(外国債券型と国内債券型)が計42.6%と、債券への投資配分の方が大きくなっています。また、今年に入って株式相場が大きく上昇する中で、資産配分を一定に保つ動き(リバランス)などから債券ファンドに目立った資金流入が見られています。日本の10年債利回りが1%台を回復したことも、こうした債券シフトの動きを強めていると言えるでしょう。

 



国内公募投信全体で見ると、まだまだS&P500や全世界株式、米国の成長株式といった外国株式ファンドに人気が集中しているように見えますが、特に夏の相場変動を受けて、アロケーション運用への関心が徐々に高まっているように感じられます。市場拡大を続けるラップ口座に加えて、アロケーションファンドでは金や債券などを組み入れた商品も目立っており、債券への資産配分も含めたアロケーション運用が安定的な資産運用の受け皿として存在感を高めつつあると言えそうです。

2024年は年末にかけて投信市場への資金フローに鈍化の兆しが見られました。NISAの投資枠が暦年での管理であることを考えれば、新年に入って新たな投資先に資金を向けるため、年末にかけて利益確定売りが出やすいといった要因もあるかもしれません(2023年11月、12月もこうした動きから資金流入が大きく鈍化しました)。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #公募投信
  • #NISA
  • #債券
前の記事
【連載】藤原延介のアセマネインサイト⑭
~米国投資信託最新事情
米ETFが10兆ドルに迫る!ミューチュアルファンドもETFも債券シフトの動き
2024.12.02
次の記事
【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑯外国株式ファンド中心に過去最高の資金流入を記録した2024年投信市場
2025.02.03

この連載の記事一覧

藤原延介のアセマネインサイト

【連載】藤原延介のアセマネインサイト㉔
過去最大となった個人マネーで広がる物価高対策

2025.10.01

【連載】藤原延介のアセマネインサイト㉓
~米国投資信託最新事情
拡大続く米ETF市場、アクティブETFの本数はついにインデックスETF超え!

2025.09.01

【連載】藤原延介のアセマネインサイト㉒
外国株式ファンドの資金流入減速とトレンド変化の兆し

2025.08.01

【連載】藤原延介のアセマネインサイト㉑
パフォーマンス好調な欧州株ファンドに約11年ぶり高水準の資金流入

2025.07.01

【連載】藤原延介のアセマネインサイト⑳
~米国投資信託最新事情
2025年1〜3月の米投信動向と米投信業界のさらなる進化

2025.06.02

【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑲高齢者向けNISA創設の報道で再注目される毎月分配型ファンド

2025.05.01

【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑱日経平均下落で日本株ファンドに資金流入も、アクティブ型の人気に陰り

2025.04.01

【連載】藤原延介のアセマネインサイト⑰
~米国投資信託最新事情
2024年の米投信市場を振り返る 米ETFに1兆ドル超の資金流入、残高10兆ドル突破!

2025.03.03

【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑯外国株式ファンド中心に過去最高の資金流入を記録した2024年投信市場

2025.02.03

【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑮不安定な相場で存在感高まるアセットアロケーション運用

2025.01.07

おすすめの記事

資産運用立国の実現に向けた官民対話の新たな挑戦──「資産運用フォーラム」が描く日本市場の未来とは
③日本の金融リテラシー向上へ、将来の資産運用を支える人材を育てる

finasee Pro 編集部

資産運用立国の実現に向けた官民対話の新たな挑戦──「資産運用フォーラム」が描く日本市場の未来とは
②DX・企業価値・サステナ・オルタナの4分野で日本を動かす

finasee Pro 編集部

資産運用立国の実現に向けた官民対話の新たな挑戦──「資産運用フォーラム」が描く日本市場の未来とは
①国内外の金融50社超が参加!資産運用フォーラムが目指すもの

finasee Pro 編集部

日本初のハンセンテック指数連動ETFが東証上場―注目浴びる“中国テック株”が投資の選択肢に

Finasee編集部

10億円以上の資産家が多いのは山口県、北陸ではNISA活用が進む。県民性から読み解く日本人の投資性向とは?

Finasee編集部

著者情報

藤原 延介
ふじわら のぶゆき
BNPパリバ・アセットマネジメント マーケティング部
2021年にBNPパリバ・アセットマネジメントに入社し、サステナブル投資や欧州規制動向など資産運用に関連する情報発信を担う。1998年三菱信託銀⾏⼊社後、2001年ロイター・ジャパン(リッパー・ジャパン)、2007年ドイチェ・アセット・マネジメント、2019年アムンディ・ジャパン。ドイチェAMでは資産運用研究所長を務めるなど約25年に渡りリサーチ、投資啓蒙に従事。慶応⼤学経済学部卒。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
「支店長! 高齢者にリスク性商品を販売することは顧客本位から外れませんか?」
【地域金融力の現在地-後編】再開発に販路支援、山口FG、愛媛銀行の地域活性化策とは
みずほ銀行でリスクテイクに慎重姿勢? 売れ筋トップは限定追加型の債券ファンド(為替ヘッジあり)
【地域金融力の現在地-前編】横浜銀行、ひろぎんの目指す地域金融力の形とは?
【連載】こたえてください森脇さん
⑧ゴールベースアプローチを実践するための具体的な会話例は?
野村證券の売れ筋で首位に定着する「グロース・オポチュニティ・ファンド」、さらに「半導体」「ゴールド」も追い上げ
資産運用ビジネスの本気度が問われる時代へ、変わる監督行政と業界
7月に発足した金融庁「資産運用課」の課題は  永山玲奈課長に聞く
「支店長!融資が第一とおっしゃいますが、投信販売は重要ではないのでしょうか。担当する私たちの仕事が軽視されているように感じます」
【文月つむぎ】日証協の「個人投資家意識調査」を熟読すべし 新規投資家層の早期失望に備えよ
資金流入額は5カ月ぶりに1兆円の大台回復、パフォーマンスは「暗号資産関連株」と「純金」=25年9月投信概況
【地域金融力の現在地-前編】横浜銀行、ひろぎんの目指す地域金融力の形とは?
【連載】こたえてください森脇さん
⑧ゴールベースアプローチを実践するための具体的な会話例は?
【文月つむぎ】発足はいつ?高市政権下での金融機関の役割
【地域金融力の現在地-後編】再開発に販路支援、山口FG、愛媛銀行の地域活性化策とは
資産運用ビジネスの本気度が問われる時代へ、変わる監督行政と業界
7月に発足した金融庁「資産運用課」の課題は  永山玲奈課長に聞く
三菱UFJMS証券の売れ筋にランクインした新ファンドと「ゴールド」のインパクト
資金流入額は5カ月ぶりに1兆円の大台回復、パフォーマンスは「暗号資産関連株」と「純金」=25年9月投信概況
【文月つむぎ】日証協の「個人投資家意識調査」を熟読すべし 新規投資家層の早期失望に備えよ
野村證券の売れ筋で首位に定着する「グロース・オポチュニティ・ファンド」、さらに「半導体」「ゴールド」も追い上げ
「支店長!融資が第一とおっしゃいますが、投信販売は重要ではないのでしょうか。担当する私たちの仕事が軽視されているように感じます」
「支店長!融資が第一とおっしゃいますが、投信販売は重要ではないのでしょうか。担当する私たちの仕事が軽視されているように感じます」
資産運用ビジネスの本気度が問われる時代へ、変わる監督行政と業界
7月に発足した金融庁「資産運用課」の課題は  永山玲奈課長に聞く
佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」
第16回 米価高騰の実態は? 飲食・製造・不動産…多セクターに広がる負担
【地域金融力の現在地-前編】横浜銀行、ひろぎんの目指す地域金融力の形とは?
【文月つむぎ】日証協の「個人投資家意識調査」を熟読すべし 新規投資家層の早期失望に備えよ
【連載】こたえてください森脇さん
⑧ゴールベースアプローチを実践するための具体的な会話例は?
地銀協が合併促進策の強化を要望!「3分の1赤字」の高度化会社も規制緩和へ【金融審地域金融力WGレポート】
唐突感ある「地域金融力」の論点化、金融庁の狙いの"ウラのウラ"を探る【オフ座談会vol.8:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】
【文月つむぎ】iDeCoがんばれ、NISAに負けるな! 
現状打破へ「7つの提言」
SBI証券で「ゴールドファンド」を上回る運用成績の株式ファンドがランクイン、高分配の「WCM」もランクアップ
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら