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プラチナNISAだけじゃない!「立国議連」提言書で見逃せない注目ポイント3選

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2025.05.12
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プラチナNISAだけじゃない!「立国議連」提言書で見逃せない注目ポイント3選

岸田文雄前首相が率いる資産運用立国議員連盟が4月に提出した提言書。高齢者向けの「プラチナNISA」枠の創設に注目が集まりましたが、よく読むとこの他にも、実現すれば金融業界の幅広い事業者に影響が広がる論点が多数盛り込まれています。リテール関連を中心に、筆者が選んだ「見逃せない注目ポイント」を3つ取り上げ、直近の議論の経緯と合わせて解説します。

①マイナンバー紐づけによる個人資産データの一元化

提言書では、マイナンバーの活用を視野に、個人の資産のデータを集約し、アドバイス業務などに役立てる案が盛り込まれています。

 

「家計の収支管理やライフプランの設計・点検を容易に行えるよう、J-FLEC(金融経済教育推進機構)の個別相談等の現場で活用することも念頭に、必要に応じてマイナンバーとの情報の紐づけも検討しつつ、個人が自身の金融資産やキャッシュフロー等の状況を容易に把握できるためのデータ集約の仕組みを整えるなど、年金も含めた金融情報の「見える化」の環境整備を進めるべきである」

 

ここの書きぶりでは具体論に踏み込んでいませんが、内閣官房デジタル行財政改革会議のデータ利活用制度・システム検討会では、銀行・証券会社・保険など別々の業態で取り扱う多様な資産について、情報を一元的に集約し、アドバイス事業に生かすための制度整備について既に議論が進められています。投資助言業の新枠の創設や、現行では銀行法での努力義務にとどまっているオープンAPIの実装(行内のデータを外部と接続するためのシステム整備)について、規制の強化や対象拡大も視野に検討が進められています。

 

マイナンバーを活用した資産情報の一元化については、中央省庁が制度整備を打ち出すたび「国家による私的財産の監視だ」といった批判がSNS上などで巻き起こります。センシティブな論点の悪目立ちを避けるかのように、今回はさりげない書きぶりになっていますが、政府が提言通り制度改正に本腰を入れるならば、幅広い事業者がAPI対応など影響を受けることになりそうです。

 

②「運用対象多様化」の具体化

岸田政権下の23年に政府が策定した資産運用立国実現プランでは、「成長資金の供給と運用対象の多様化」と題する章立てが設けられ、スタートアップ投資やオルタナティブ投資の環境整備が打ち出されていました。ただ、具体的にどのような分野に投資をするかについては、踏み込んだ言及は見られませんでした。

 

今回の提言書では「運用対象資産等の多様化の更なる推進」の一環として、以下のように記載しています。

 

経済安全保障や日本の産業力強化の観点から国内でデータセンター等を整備する需要が高まっている。政府においてはデータセンターと発電所を一体で整備する「ワット・ビット連携」構想を打ち出し、データセンターの地方への分散化を図ることにより、GXとDXの両立や地方創生の推進を目指している。こうした動きを踏まえ、国内のデータセンター投資を促進しつつ不動産を含む多様な運用手段の提供を図るため、金融庁は、REIT(不動産投資信託)の保有資産として、データセンター等を組み入れるための環境整備を行うべきである。

 

このように、「運用対象の多様化」という漠然とした抽象的表現を脱し、REITを通じたデータセンター分野へのリスクマネー供給という具体論に踏み込んでいます。

 

岸田前政権が掲げていた「資産運用立国」というスローガンと、石破政権の「投資立国」というスローガンの違いは、前者がリスクマネーの出し手側に着目しているのに対し、後者は受け手側に着目した政策方針であると整理できます。岸田氏が率いる議連の提言に盛り込まれたデータセンター投資の促進策は、その意味で、岸田路線による石破路線の融合、あるいは、岸田路線が石破路線を呑みこんで政策の幅を拡大させようとする試みとも解釈できそうです。

 

③霞が関への「圧」

また、今回の提言書では金融庁など霞が関の中央省庁に対し「圧」をかけるような記載がところどころに見受けられます。

 

本提言にある多数の施策の推進を担う金融庁は、新たに設置された組織であるがゆえに局や課等の機構が少ないが、経済・金融環境の変化により増加する課題に応じた更なる体制強化が不可欠である。このため、既存の省庁内の機構のスクラップ&ビルドに固執した硬直的な考え方を踏襲することなく、抜本的な組織拡充を行うべきである。

 

金融庁では既に、証券課から分離・独立した資産運用課が創設され注目を集めましたが、こうした既存のスクラップ&ビルドの域を超えた「抜本的な組織拡充」に向けた働きかけを打ち出しています。この他にも、高齢顧客の将来的な認知判断能力の低下に備え、親族等の代理取引を可能とするため日本証券業協会が仕組みを整備した「家族サポート証券口座」の普及促進に向けた働きかけ、銀証ファイアーウォール規制の見直しの前進、資産運用業高度化に関する新たな成果物の取りまとめなどを金融庁に求めています。

 

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著者情報

川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
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