finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
藤原延介のアセマネインサイト

【連載】藤原延介のアセマネインサイト⑪
~米国投資信託最新事情
米投信は、ミューチュアルファンドから新しい金融商品へ進化

藤原 延介
藤原 延介
BNPパリバ・アセットマネジメント マーケティンググループ
2024.09.02
会員限定
【連載】藤原延介のアセマネインサイト⑪<br />~米国投資信託最新事情<br />米投信は、ミューチュアルファンドから新しい金融商品へ進化

日本で資産運用立国に向けた取り組みが広がる中、家計金融資産の動向や投資信託の制度・規制等において、米国の投資信託を参考とするケースが多く見られる。米国の投資信託動向を四半期に一度、定点観測していただく。今回は、4 ~ 6月の米投信市場動向について、藤原氏に解説してもらった。※当コラムでは今後、米投資信託に関する用語は、米ICIが作成した「投資会社ファクトブック クイックファクトガイド(日本語版)」に準じて記載します。

前回の「米国投資信託最新事情」では、米投資信託協会(ICI)のデータを用いて1 ~ 3月期の米ミューチュアルファンド(Mutual Fund)の資金動向を確認し、米国株式型を中心に長期投資信託(MMFを除くミューチュアルファンド)からの資金流出が続いていることを解説しました。米ICIは「投資会社ファクトブック(Investment Company Fact Book)」という年次報告書を作成していますが、今年7月に初めて日本語版のクイックファクトガイドを公表しています。こちらは米国を中心に2023年までの投資信託市場のデータをまとめたものですが、改めて米投信市場の大きさや先進性などがうかがえる内容となっています。

米ミューチュアルファンドの残高は過去最高を更新

7月30日に米ICIが6月の米ミューチュアルファンドのデータを公表していますので、まずは最新の残高データから確認していきましょう。6月末時点の残高は27.1兆ドルと3四半期連続で増加し、2021年12月末の26.9兆ドルを上回って四半期ベースの過去最高を更新しました(図1)。ただし、この内訳をみるとMMFの伸びが顕著となっています。

 

MMFの残高は6.1兆ドルと8四半期連続で過去最高を更新しており、米短期金利の上昇などを背景に急拡大しています。

一方で、MMFを除く長期投資信託の残高は6月末時点で21.0兆ドルとなっていますが、こちらは2021年12月末時点の22.1兆ドルに届いておらず、米国株式相場が過去最高値を更新する中でその伸びは限定的となっています。この点は、NISAの制度拡充や円安・株高の恩恵で過去最高残高の更新を続ける日本の投資信託とは異なる動きと言えるでしょう。

株式型を中心に資金流出が継続

続いて、ミューチュアルファンドの資金流出入を見ていきますが、分類別で最大の資金流入を記録しているのは、やはりMMFとなっています(図2)。4~ 6月期の資金流入額は+530億米ドルで、次いで債券型が+96億米ドルで2四半期連続のプラスとなっていますが、それ以外の分類は資金流出が続いています。6月末時点の残高で最大のシェアを持つ米国株式型は2014年4 ~ 6月からおよそ10年間、一貫して資金流出が続いており、国際株式型も10四半期連続の資金流出です。また、401(k)など米確定拠出型企業年金で市場が拡大していると言われるターゲットデートファンドを含むバランス型も、11四半期連続の資金流出となっています。

 

前回の連載ではこうした長期投資信託からの資金流出の背景にはベビーブーマー(出生率が上昇した1946年から1964年に生まれた世代)の資産の取り崩しがあることを指摘しました。一方で、上場投資信託(ETF)は4 ~ 6月期も+2000億米ドル程度と高水準の資金流入が続いており、伝統的なミューチュアルファンドからは資金流出が続いているものの、米国の資産運用ビジネス全体としては成長が継続していると考えられます。

ミューチュアルファンドからCIT への資金シフト

また、冒頭で紹介した「投資会社ファクトブック」の日本語版クイックファクトガイドでも取り上げられていますが、ミューチュアルファンドからの資金流出の理由として、集団投資信託(CIT:Collective Investment Trust) と呼ばれる金融商品がミューチュアルファンドに代わって台頭しているという事実も見逃せません。CITは信託スキームを活用して合同運用を行うもので、情報開示などの点でミューチュアルファンドほどの厳しい規制が求められないため、一般的に低コストでの商品提供が可能になると言われています。図3に示したように、401(k)プランでも比較的規模の大きいものは、ミューチュアルファンドから、より低コストのCITにシフトしています。つまり、401(k)のプランスポンサーが、規制とコストのバランスを考えながら、投資家のニーズに対応する形で金融商品の選択を行っているということです。

 

そもそも米ICIが毎年公表している「投資会社ファクトブック」は、2005年に公表された2004年版までは「ミューチュアルファンド・ファクトブック(Mutual Fund Fact Book)」と呼ばれていました。この名称が変わったのは、米国の集団投資スキームが多様化し、伝統的なミューチュアルファンドだけでは資産運用業界の動向がカバーしきれなくなったためと考えられます。こうした金融商品をめぐるさまざまな進化が見られるところこそ、米国の資産運用業界の見習うべき点と言えるかもしれません。

前回の「米国投資信託最新事情」では、米投資信託協会(ICI)のデータを用いて1 ~ 3月期の米ミューチュアルファンド(Mutual Fund)の資金動向を確認し、米国株式型を中心に長期投資信託(MMFを除くミューチュアルファンド)からの資金流出が続いていることを解説しました。米ICIは「投資会社ファクトブック(Investment Company Fact Book)」という年次報告書を作成していますが、今年7月に初めて日本語版のクイックファクトガイドを公表しています。こちらは米国を中心に2023年までの投資信託市場のデータをまとめたものですが、改めて米投信市場の大きさや先進性などがうかがえる内容となっています。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #米国投信
  • #ミューチュアルファンド
  • #ETF
前の記事
【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑩2024年1-6月は記録的資金流入に!新NISAがもたらした変化
2024.08.01
次の記事
【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑫過去最高となった家計金融資産で存在感高まる投資信託
2024.10.01

この連載の記事一覧

藤原延介のアセマネインサイト

【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑲高齢者向けNISA創設の報道で再注目される毎月分配型ファンド

2025.05.01

【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑱日経平均下落で日本株ファンドに資金流入も、アクティブ型の人気に陰り

2025.04.01

【連載】藤原延介のアセマネインサイト⑰
~米国投資信託最新事情
2024年の米投信市場を振り返る 米ETFに1兆ドル超の資金流入、残高10兆ドル突破!

2025.03.03

【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑯外国株式ファンド中心に過去最高の資金流入を記録した2024年投信市場

2025.02.03

【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑮不安定な相場で存在感高まるアセットアロケーション運用

2025.01.07

【連載】藤原延介のアセマネインサイト⑭
~米国投資信託最新事情
米ETFが10兆ドルに迫る!ミューチュアルファンドもETFも債券シフトの動き

2024.12.02

【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑬投資戦略の多様化で4兆円に迫るインド株ファンド

2024.11.01

【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑫過去最高となった家計金融資産で存在感高まる投資信託

2024.10.01

【連載】藤原延介のアセマネインサイト⑪
~米国投資信託最新事情
米投信は、ミューチュアルファンドから新しい金融商品へ進化

2024.09.02

【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑩2024年1-6月は記録的資金流入に!新NISAがもたらした変化

2024.08.01

おすすめの記事

【新NISA対象】ブラックロックから「iシェアーズ S&P500 トップ20 ETF」「iシェアーズ ゴールド ETF」が上場! 個人投資家にとっての魅力は…

Finasee編集部

日経平均はもう古い?野村アセットが参入!日本の魅力を凝縮した「JPXプライム150」連動ETFが上場 先物取引もスタート

finasee Pro 編集部

「外国株式型」の純資産が3カ月連続で減少して資金流入にも陰り、パフォーマンスでは「ゴールド」(為替ヘッジあり)が好調=25年4月投信概況

finasee Pro 編集部

【みさき透】視界不良の「プラチナNISA」、意外に響くネットの評判 

みさき透

大和証券の売れ筋上位のアクティブファンドは運用成績にバラつき、株価が上昇に転じた有望ファンドとは?

finasee Pro 編集部

国内投資促進の圧力が高まる?議連提言書と新資本主義会議が示した機関投資家への「期待」とは

川辺 和将

野村證券の売れ筋で「国内株」の人気は浮上、「S&P500」が急落する中で踏みとどまったファンドとは?

finasee Pro 編集部

著者情報

藤原 延介
ふじわら のぶゆき
BNPパリバ・アセットマネジメント マーケティンググループ
2021年にBNPパリバ・アセットマネジメントに入社し、サステナブル投資や欧州規制動向など資産運用に関連する情報発信を担う。1998年三菱信託銀⾏⼊社後、2001年ロイター・ジャパン(リッパー・ジャパン)、2007年ドイチェ・アセット・マネジメント、2019年アムンディ・ジャパン。ドイチェAMでは資産運用研究所長を務めるなど約25年に渡りリサーチ、投資啓蒙に従事。慶応⼤学経済学部卒。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
「外国株式型」の純資産が3カ月連続で減少して資金流入にも陰り、パフォーマンスでは「ゴールド」(為替ヘッジあり)が好調=25年4月投信概況
新刊『海外投資家はなぜ、日本に投資するのか』の著者に聞く、日本株のさらなる可能性
ワイズマン廣田綾子氏
【みさき透】視界不良の「プラチナNISA」、意外に響くネットの評判 
「支店長! 売れ筋の投資信託を3つ覚えて売れるようになりました。全ての商品を覚える必要はありますか?」
野村證券の売れ筋で「国内株」の人気は浮上、「S&P500」が急落する中で踏みとどまったファンドとは?
【連載】金融史観~金融史が語る資産形成の未来~
⑫振り子の金融史観(下)―分断が進む現代の先を読む―
プラチナNISAだけじゃない!「立国議連」提言書で見逃せない注目ポイント3選
「支店長! 他の金融機関と比較して、投信の取扱商品が少ないので投資の案内がしにくいです!」
「支店長! 本音が知りたいです! 顧客本位と成果(収益)のバランスをどのように考えていますか?」
日本におけるゴールベースアプローチの現状ー米国から学ぶ「顧客本位ともうかる仕組み」の両立
野村證券の売れ筋で「国内株」の人気は浮上、「S&P500」が急落する中で踏みとどまったファンドとは?
プラチナNISAだけじゃない!「立国議連」提言書で見逃せない注目ポイント3選
新刊『海外投資家はなぜ、日本に投資するのか』の著者に聞く、日本株のさらなる可能性
ワイズマン廣田綾子氏
【みさき透】視界不良の「プラチナNISA」、意外に響くネットの評判 
eスマート証券の売れ筋主要インデックスに見えた「トランプ相場」で頼りになるリスクヘッジ手段とは?
プラチナNISA新設に現実味、金融庁の懸念は業界がつい先送りした”アレ”の管理【オフ座談会vol.3:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】
「外国株式型」の純資産が3カ月連続で減少して資金流入にも陰り、パフォーマンスでは「ゴールド」(為替ヘッジあり)が好調=25年4月投信概況
【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑲高齢者向けNISA創設の報道で再注目される毎月分配型ファンド
国内投資促進の圧力が高まる?議連提言書と新資本主義会議が示した機関投資家への「期待」とは
楽天証券の売れ筋がほとんど動かなかったのは大きな変化の前兆か? 意外にもろかった「SCHD」
NISAで高齢者に毎月分配型解禁へ 制度の進化か参院選対策か、それとも「自民党・ネオ宏池会」の野望か 
【緊急座談会・みさき透とその仲間たち】
新潟との地銀越境統合は成功するか? 群馬県の金融事情【金融風土記】
プラチナNISAの創設案が映す「森信親イズム」の終焉
プラチナNISA新設に現実味、金融庁の懸念は業界がつい先送りした”アレ”の管理【オフ座談会vol.3:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】
「支店長! 売れ筋の投資信託を3つ覚えて売れるようになりました。全ての商品を覚える必要はありますか?」
【連載】投信ビジネスのあしたはどっちだ
③トランプ関税でボラティリティが高まる今こそ能動的なフォローを
シニア向け「プラチナNISA」で毎月決算型も解禁? 毎月決算型の選び方と使い方
【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑲高齢者向けNISA創設の報道で再注目される毎月分配型ファンド
みずほ銀行の売れ筋上位が5カ月連続で同じ理由、株価の急落にもしっかり耐えるファンドとは?
【文月つむぎ】毎月分配型のアウト/セーフは?当局に問われる「線引き力」
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら