finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート

外貨関連を軸に多彩なサービスを展開顧客の信頼を勝ち取る「総資産アプローチ」case of SMBC信託銀行

Ma-Do編集部
Ma-Do編集部
2025.06.13
会員限定
外貨関連を軸に多彩なサービスを展開顧客の信頼を勝ち取る「総資産アプローチ」case of SMBC信託銀行

顧客口座数約70万口座ながら、外貨決済などエッジの効いたサービスで、評価と注目を集めるSMBC信託銀行。 だが、その事業内容の特性のためか、その実情は知られていないことも多い。 「より一層価値のある独自のサービスを提供し、お客さまと共に発展」する同銀行の取り組みについて、 常務取締役の進藤徹也氏に語ってもらった。 取材・文/金融ジャーナリスト 浪川 攻

日本経済新聞社が提供している金融分野のデジタルコンテンツサイト、「NIKKEI Financial」は毎年、「NF銀行ランキング」を発表している。2025年、同ランキングで総合第1位を獲得したのはSMBC信託銀行である。顧客口座数約70万口座という小兵がメガバンクや大手信託銀行などをしり目にトップに躍り出た。

「NF銀行ランキング」は、消費者調査、公開データから64の評価指標を策定し、それらを「利便性」「商品サービス」「接客応対」「企業姿勢」「収益性」という5つの評価軸に集約して偏差値化したもの。規模、収益といった定量評価だけのランキングとは別次元のアプローチである。

銀行業界では今、顧客支持を重視している。その一環として定性的評価を経営上の主軸のひとつに置く傾向が強まっている。その意味でも、同ランキングへの関心は高い。今回、柔道の無差別級の試合のように、軽量級が重量級を退けるような結果となったのも、定性的評価を反映したランキングならではの醍醐味である。

エッジ際立つ外貨決済関連サービス

SMBC信託銀行の沿革は仏系のソシエテ・ジェネラル信託銀行から始まる。2013年に三井住友銀行が同社を100%子会社化し、2015年にはシティバンク銀行の日本におけるリテールバンキング事業を統合した。従って、本邦系とはいえ、商品サービスの考え方、ラインアップ、セグメント・チャネル戦略など事業運営の随所に外資系的な特徴が垣間見られる。

今回、銀行ランキングを5つの評価項目ごとに見ると、商品サービス、接客応対、収益性で高評価を得た。このうち、商品サービスは1位、接客応対は3位となっている。これは、同銀行独自のモデルが顧客支持を得た証左とも言えるかもしれない。では、そのモデルはどういうものなのか。同銀行でウェルスマネジメント部門を担当する進藤徹也常務取締役はこう語る。

SMBC 信託銀行 常務取締役 兼 常務執行役員
ウェルスマネジメント部門担当 進藤 徹也氏

「外貨決済サービスから運用まで一連のサービスを、それぞれの分野に精通したスタッフをそろえて提供している。そして、お客さまとの対面を通じて、われわれが総資産アプローチと呼ぶ顧客リレーションの体制を推し進めている」

とにかく、外貨決済サービスはエッジが立っている。通り一遍の外貨両替業務などではない。外貨が日常生活に欠かせない人たちに対する手厚いサービスである。例えば、グローバル企業で海外赴任する人、海外留学する人や、逆に海外から帰国して海外にある資産をスムーズに国内に移す必要がある人なども相談にやってくる。

さらに、海外に居住していた親戚からの相続が発生し、国内にいる親族に資産を渡すという遺言になっていたり、あるいは、海外保険で相続が発生したりした場合、海外から小切手が送られてくることがあるが、海外小切手を現金化できる金融機関はそう多くない。個人向けの同サービスを停止している金融機関が多いからだ。従って、そうした悩み、課題を抱えた人たちはSMBC信託銀行を訪れる。

外貨を外貨のままで運用できる受け皿として外貨建て投信もある。さまざまなアセットクラスで長期保有が可能な投資信託を約120本ラインアップしており、長期間にわたって顧客に案内できるロングセラー商品も用意している。また、海外への赴任や旅行、あるいは海外資産への投資のため外貨を調達する必要がある人々には、時間分散を図りながらの外貨積み立てを為替手数料無料で提供したり、あらかじめ外貨に転換できる為替レートを設定して、それにヒットした場合、外貨に転換するオーダーウォッチという仕組みもある。これもインターネットバンキング利用で為替手数料を無料としている。

少ない拠点数を補う質の高い担当者の存在

外貨関連サービスは限りない。例えば、外貨定期預金のなかに「マンスリースマイル」という仕組みを設けている。預入期間1年以上の定期預金で、年利息を月割りして毎月、利息を外貨、円資金などのあらかじめ定めた通貨で受け取れる。この受取利息を元に、「GLOBAL PASS」というVisaデビットカードで、海外での買い物などで決済することもできる。「GLOBAL PASS」は、海外での生活や旅行、ビジネス活動をサポートするため、円預金と17種類の外貨預金口座のデビット決済、世界200以上の国と地域に広がる260万台以上のATMで現地通貨を引き出しできるカードである。「GLOBAL PASS」に加え、海外送金など、外貨での決済ニーズに幅広く対応するためのサービスを提供している。

このように顧客ニーズをくみ取ってそろえたサービスメニューは多彩だが、多彩であるがゆえに顧客のために最も有効なサービスを選定し提供できる能力と、外貨関連業務に特有の複雑な仕組みをきちんと顧客に理解してもらえるだけの説明能力が担当者たちには求められる。この能力の高さが同銀行の第一線の価値を決めていると言ってもいい。

もっとも、支店数はわずかに21拠点にすぎない。そこで、重要となるのはチャネル戦略である。具体的には、預入資産額5000万円以上、そのうち運用残高1000万円以上(外貨預金含む)をゴールドプレミアム、そして、預入資産額1000万円以上、そのうち、運用残高300万円以上をゴールドと顧客セグメントし、ここまでは支店の対面で対応し、その状況に応じて優遇サービスの内容を変えている。一方、ゴールドではないものの、運用残高が300万円以上の顧客はデジタルゴールドとして、主にデジタルチャネルに限って優遇を提供している。

チャネル面では「リモート営業部」でのコールセンター機能の秀逸さも見落とせない。シティバンク時代から日本国内における拠点数の乏しさをカバーするために運営されてきたコールセンターは、明らかに戦略拠点なのだ。実際、進藤氏はこう説明する。

「われわれの拠点の中でお客さまとのコンタクトの頻度は最も高い。海外在住の日本人からの問い合わせ、外国の方からの相談などの英語対応も含めて、電話で可能な限り対応できる体制を整備し、常に体制の改善を重ねている」もちろん、そうしたなかでは顧客から「不便である」などの苦情、不満を電話応対のコンシェルジュが受けることはある。肝心なのはその後である。「お客さまの声、その声を聞いたスタッフの意見を本部がきちんと吸い上げるプロジェクトを6年ほど前から継続して、優先順位を付けながら、一つひとつの問題解決に動いている」という。顧客や顧客と向き合う現場の声を改善活動につなげる歯車がきちんと回っているわけである。

総資産アプローチの中軸担うプライベートバンカー

こうした各チャネルの対応を通じて顧客とのリレーションを深めて、あらゆる顧客のニーズに応えていくことが同銀行が目指す総資産アプローチであり、SMBC信託銀行では、支店も含めて総資産アプローチをしているが、それを中心となって担うのがプライベートバンカーである。

「アベノミクス以降の資産価値上昇に伴って、企業オーナーの方々が保有する自社株式の一部を現金化しようという動きが広がった。そうした方々を既存のお客さまや、あるいは、三井住友銀行やSMBC日興証券というグループ各社から紹介を受けている。また、既存のお客さまからも各種資産の売却資金等、追加取引を頂戴したりしている」

そのような大きなキャッシュフローのうねりの受け皿が単独運用指定信託である。そのため、同残高は好伸している。具体的な残高は非開示だが、新型コロナ感染症の流行期以降で約4倍に急成長しているという。顧客との会話で投資比率を決めて、ファンドマネジャーがその枠組みに基づいてポートフォリオを構築する。顧客とは3カ月に一度は現状報告などコンタクトをとっているという。顧客リレーションを重視している一端がここから見えてくる。

 

すべてのチャネルは顧客の信頼獲得のため

プライベートバンキング営業部には現在、東京、大阪、名古屋に44人のプライベートバンカーが在籍している。一般的に、支店の担当者たちは数年ごとに異動するが、プライベートバンカーは一度顧客を担当すると、基本的に異動しない。定年退職等を除けば会社都合で担当変更を行うことはなく、同じプライベートバンカーが長く顧客と付き合っていく。「お客さまと共に」という、金融業界でしばしば語られる営業トークが、ここでは現実の世界になっている。

「単独運用指定信託は主力商品だが、この単品商品でお客さまとのリレーションが築ききれるわけではない。むしろ、その取引を入口にして総資産アプローチをしながら、ファイナンス、不動産、事業承継・相続等々につなげていかなければいけない。そのため、プライベートバンカーについても決して定量的な評価だけではない。日頃の取り組み姿勢、お客さまとのリレーション構築力についても、実力評価という枠組みの中で評価している」

市場環境次第という面はあるものの、支店業務もさることながら、プライベートバンキングのサービス強化も必要となっておかしくない。進藤氏もこの先をこう展望する。

「支店のお客さまにもプライベートバンキングのサービスを求める方はいると思う。そういう方々に支店にいながらプライベートバンキングのサービスを紹介できるようなオペレーションを作らないといけないだろう。実は、2024年、名古屋支店ではそれを実施した。今後、この名古屋方式の支店を増やしていこうと思っている」

従来、プライベートバンカーは社内インターン制度や社内公募を通じて選び出してきた。中途採用もある。今後はこれらの方法に加えて、若手を配属し、プライベートバンカーのアシスタント業務で経験を積んだ後、実力が備わったと判断できる人材を一人前のプライベートバンカーに昇格させるような仕組みも取り入れていく余地はあるという。

とにかく、インターネットバンキング、コールセンター、リアル店舗、そして、プライベートバンキング営業部のすべてが顧客からの信頼を獲得するためのチャネルである。そのチャレンジが評価されてこその「銀行ランキング」首位にも見える。メガバンク、大手信託銀行などに比べて、SMBC信託銀行は小さい。だが、「山椒は小粒でもピリリと辛い」という存在感を発揮している。

日本経済新聞社が提供している金融分野のデジタルコンテンツサイト、「NIKKEI Financial」は毎年、「NF銀行ランキング」を発表している。2025年、同ランキングで総合第1位を獲得したのはSMBC信託銀行である。顧客口座数約70万口座という小兵がメガバンクや大手信託銀行などをしり目にトップに躍り出た。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #SMBC
  • #富裕層

おすすめの記事

4カ月ぶりに純資産残高が増加したものの資金流入は低調、「半導体」「暗号資産」のパフォーマンスが好調=25年5月投信概況

finasee Pro 編集部

外貨関連を軸に多彩なサービスを展開顧客の信頼を勝ち取る「総資産アプローチ」case of SMBC信託銀行

Ma-Do編集部

三菱UFJMS証券の売れ筋にみえる国内株式ファンドへの期待、物価高で苦しむ年金生活者を支えるファンドとは?

finasee Pro 編集部

投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【アクティブファンド編】

Ma-Do編集部

野村證券の売れ筋で浮上した米国株ファンドとは? リスク分散型の「のむラップ・ファンド」の人気も高まる

finasee Pro 編集部

著者情報

Ma-Do編集部
ま・どぅへんしゅうぶ
「Ma-Do(Marketing-Do)」は、銀行や証券会社といった金融機関でリテールビジネスに携わるプロフェッショナルに向けた専門誌です。「資産所得倍増プラン」の旗印のもと「貯蓄から資産形成」への機運が高まる昨今、金融機関の資産運用アドバイザーの役割はますます高まっているとともに、リテールのビジネスもさらなる発展が求められています。「Ma-Do」は、投資信託を資産運用のコアとしてアドバイスを行う銀行や証券会社、IFAなどと、運用会社や保険会社をつなぐコミュニティ・メディアとして、金融リテール・ビジネスの発展をサポートする情報を発信しています。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
外貨関連を軸に多彩なサービスを展開顧客の信頼を勝ち取る「総資産アプローチ」case of SMBC信託銀行
4カ月ぶりに純資産残高が増加したものの資金流入は低調、「半導体」「暗号資産」のパフォーマンスが好調=25年5月投信概況
三菱UFJMS証券の売れ筋にみえる国内株式ファンドへの期待、物価高で苦しむ年金生活者を支えるファンドとは?
「自立と連携」を掲げて試行錯誤を重ね、確立された「銀証連携」モデルが新時代を拓く case of しずおかフィナンシャルグループ
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【アクティブファンド編】
【文月つむぎ】投信だけでなく保険販売でもFDを徹底できるか?知っておきたい「保険業法」改正のポイント
SBI証券でインベスコ「世界のベスト」を評価、反対に人気が離散したファンドとは?
いわき信組の不正を見抜けなかった金融庁、「根本的な人員不足」も背景
【運用会社ランキングVol.5】IFA法人からの評価は? トップはキャピタル・インターナショナル、運用力やサポート力で図抜けた評価/IFA法人編
浪川攻の一刀両断
手数料自由化とファンドラップから見る日本と米国の証券リテール改革の相違
「自立と連携」を掲げて試行錯誤を重ね、確立された「銀証連携」モデルが新時代を拓く case of しずおかフィナンシャルグループ
【文月つむぎ】投信だけでなく保険販売でもFDを徹底できるか?知っておきたい「保険業法」改正のポイント
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【アクティブファンド編】
三菱UFJMS証券の売れ筋にみえる国内株式ファンドへの期待、物価高で苦しむ年金生活者を支えるファンドとは?
外貨関連を軸に多彩なサービスを展開顧客の信頼を勝ち取る「総資産アプローチ」case of SMBC信託銀行
【文月つむぎ】「プラチナNISA」という言葉がない!自民党金融調査会の最新提言を読み解く
野村證券の売れ筋で浮上した米国株ファンドとは? リスク分散型の「のむラップ・ファンド」の人気も高まる
いわき信組の不正を見抜けなかった金融庁、「根本的な人員不足」も背景
「支店長! ゴールベースアプローチをすれば、お客さま本位の提案になるということでよいですか?」
SBI証券でインベスコ「世界のベスト」を評価、反対に人気が離散したファンドとは?
「支店長! ゴールベースアプローチをすれば、お客さま本位の提案になるということでよいですか?」
今月スタートした「投資運用関係業務受託業」を金融庁が激推し!金融機関に勤める中堅・若手の有望な移籍先に?
「自立と連携」を掲げて試行錯誤を重ね、確立された「銀証連携」モデルが新時代を拓く case of しずおかフィナンシャルグループ
【文月つむぎ】「プラチナNISA」という言葉がない!自民党金融調査会の最新提言を読み解く
【文月つむぎ】投信だけでなく保険販売でもFDを徹底できるか?知っておきたい「保険業法」改正のポイント
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【アクティブファンド編】
浪川攻の一刀両断
手数料自由化とファンドラップから見る日本と米国の証券リテール改革の相違
トランプ関税の混乱を横目に「戦略的自律」をめざす欧州企業に可能性、「テンバガー・ハンター・ヨーロッパ」の視点とは?
いわき信組の不正を見抜けなかった金融庁、「根本的な人員不足」も背景
【みさき透】視界不良の「プラチナNISA」、意外に響くネットの評判 
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら