これまで5回にわたり、インデックスファンドからアクティブファンド、そしてバランスファンドまで、ファンドモニタリングに必要な指標と考え方を整理してきました。
最終回となる今回は、これまでの内容を横断的に振り返りながら、金融機関の本部担当者として「ファンドモニタリングを実務でどう活用するか」という視点で整理します。
1.モニタリングの目的は“運用の優劣判定”ではない
ファンドモニタリングの目的を、「運用の優劣を判定すること」だと捉えている人も多いかと思います。
しかし、ファンドの運用の優劣を判断することは、非常に困難です。ファンドの運用成績は、投資環境の影響を受けます。運用成績のうちファンドの運用力に起因するのか、投資環境に起因するかを見極めることは難しく、判断を誤る懸念があります。
したがって、今回の各レポートではモニタリングの目的=「ファンドが想定したファンド特性どおりに運用されているかを確認すること」を前提に考察をしています。
・想定特性と運用実態がズレていないか
・市場環境変化や資金流入・流出の影響で特性が変化していないか
・想定どおりであれば問題なし。ズレがある場合は理由を確認し、改善要否を判断
ファンドの良し悪しを決めつける作業ではなく、「想定との差異を把握する」ことこそがモニタリングの本質といえます。
2.指標はファンドの種類で異なる
特定の指標を見て全ての種類のファンド特性が確認できると良いのですが、実際にはそのような指標はありません。ファンド特性を確認するには、ファンドの種類に応じた指標を分析することが必要となります。また、分析する指標は、一つだけでなく複数の指標を合わせて分析することが重要です。過去5回の記事では、下記の指標を紹介しました。
・インデックスファンド トラッキングエラー
・アクティブファンド リスク・リターン(シャープレシオ)、α値、β値
・バランスファンド 標準偏差、下方リスク、最大下落率
当然ながら、上記が全てではありません。各ファンドのコンセプトや投資家がそのファンドに期待していることなどを考え、いくつかの指標について、分析結果が特性の確認に有効か否かの検証を繰り返すことが大切です。
3.定点値だけで判断しない──必ず時系列で確認する
ファンドモニタリングは、直近の月末を基準日にして、過去1年、3年、5年、10年のように一定の観測期間を設けて分析するのが一般的です。過去1年では、ファンドの特性を確認するには不十分であることから、5年や10年といった中・長期のデータを重視することが多いと思います。しかし、これらは、あくまで直近の月末から見た定点観測です。
・長期データは平均化され変化が見えない
・各月末ごとのデータを一定の期間遡り、観測することでサンプル数を増やす
・視覚化(グラフ化)すると分かりやすくなる
定点観測の長期データの問題点は、「平均化されたデータ」であるという点です。そのため、特性が異なるファンドでも観測期間によっては、類似した結果となるケースもあります。また、足元で起きている変化が顕在化するまでに時間を要することにも注意が必要です。
直近の月末基準だけでなく、各月末ごとのデータを時系列で観測していくことで、上記の問題は解消します。
その際、1年間、3年間、5年間、10年間などの各期間の月末時点のデータを一定期間、遡ってみると良いでしょう。例えば5年分遡ることができると、12か月×5年で60のサンプルを観察することになります。
サンプル数が多くなると確認しづらくなるというデメリットは、グラフ化するなどで解決できます。

