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投信ビジネスのあしたはどっちだ

【新連載】投信ビジネスのあしたはどっちだ
①投信定量分析データをどう使うか~顧客本位の業務運営の観点から~

中村 裕己
中村 裕己
NTTデータ エービック P&Cオフィス シニアアナリスト
2025.02.28
会員限定
【新連載】投信ビジネスのあしたはどっちだ<br />①投信定量分析データをどう使うか~顧客本位の業務運営の観点から~

投信採用の担当者の方々は、定量分析データをどのように活用されているでしょうか?

基本的には、定量分析データを基にして、ファンドの運用力、つまりファンドの良し悪しを判断していることと思いますが、実際の投信販売、特に「顧客本位の業務運営」には、十分に活用されているとは言い難い状況ではないでしょうか。

そこで、どのようにすれば、投信定量分析データを顧客本位の業務運営に活用できるかを考えてみたいと思います。

顧客本位の業務運営の実現には、
ファンドの特性を明らかにすることが必須

金融庁の「顧客本位業務運営の原則/顧客にふさわしいサービスの提供」には、『金融業者は、顧客の資産状況、取引経験、知識及び取引目的・ニーズを把握し、当該顧客にふさわしい金融商品・サービスの組成、販売・推奨等を行うべきである』とあります。投信は、投資対象や投資手法等の運用的側面と決算頻度や分配方針等のファンド運用以外の側面により様々な特性のファンドがあります。

ファンドの特性が明らかになっていないと、顧客の投資ニーズ等にふさわしいファンドかどうかを判断することができません。

そのように考えると、顧客本位の業務運営の実現には、ファンド特性を明らかにすることが必須となるでしょう。

定量分析データでファンドの運用力を判断する場合、
その有効性は限定的

一般的な投信定量分析データの活用シーンは、ファンドの新規採用時の判断材料、取扱いファンドラインナップの整備、取扱いファンドのモニタリング等だと思います。

定量分析データでファンドの運用力を判断する場合、その有効性は限定的であるということを念頭に置く必要があります。

例えば、特定の期間のパフォーマンスが優れていても、その要因が運用力によるものであると判断できない場合も多くあります。運用力でパフォーマンスに差が出たのではなく、ファンドのコンセプト自体に由来するものかもしれないのです。また、パフォーマンス等を観測する期間の問題もあります。1年や3年だと、投資環境の変化で、評価が大きく変動する可能性があります。一方で、10年など長期間のデータを基にすると、運用力が変化したとしても、実際の評価に反映されるには、一定の期間が必要となり、結果として“あとの祭り”になる恐れがあります。

運用力の判断だけでなく、ファンド特性を明らかにするために投信定量分析データを活用

投信分析データをファンドの運用力、言い換えるとファンドの良し悪しの判断材料とすることに加えて、ファンドの特性を明らかにすることにも重点を置いて、活用してはどうでしょう。

ラインナップを整備するにあたり、重要なことは、取扱いラインナップが、顧客の投資ニーズをカバーできているかどうかです。言い換えると、様々な顧客の投資ニーズにふさわしい特性のファンド提案が実現できるようラインナップを整備するということになるでしょう。

つまり、取扱いファンドラインナップを整備するには、ファンド特性を明らかにする必要があるということになります。ファンド特性を明らかにするのは、定量分析が得意とするところです。

投信ラインナップの整備やモニタリングのためにファンドを分析・評価して終わりではなく、顧客本位の業務運営のための第一歩にすぎません。

投信定量分析データから明確にしたファンド特性を、ファンドの販売、フォローに役立てることが必須です。本部サイドだけでなく、顧客にファンドの提案やフォローをする営業現場との共有することで、顧客本位の業務運営が実現するでしょう。

多角的分析によってファンド特性を明らかにして、
顧客への提案やフォローに活用

それでは具体的にどのようにファンドの定量データを分析すれば、ファンド特性を明らかにできるでしょう。

特定の定量分析データだけで、ファンド特性が明らかになれば良いのですが、残念ながらそのような定量分析データはありません。特定の定量分析データではなく、複数以上の定量データを多角的に分析する必要があります。

観測期間については、短期だとブレが大きく、長すぎると変化の反映に時間がかかるとういう問題点は、ファンド評価の場合と同様です。期間がいくら長くても、平均化されたデータでは、ファンドの特性は明確にはなりません。定点観測のデータではなく、月次や年次のデータと合わせて、こちらも多角的に分析することが重要です。そうすることで、投資対象資産の投資環境の変化とファンドの運用成績の変遷の関係性が明確になるでしょう。

ファンド提案時に、投資対象や運用手法、また決算頻度や分配方針、信託報酬等のコストなどの説明に加えて、下記のような情報まで提供すれば、顧客の投資判断に有効な情報となるのではないでしょうか。

  • 「このファンドは、〇〇のような投資環境では、市場平均に比べ高いリターンが期待できる一方で●●のような環境になると、市場平均を下回ることも考えられます。」
  • 「このファンドは、比較的安定的な運用成績が継続していますが、金融市場が▲▲のような局面では、基準価額は下落する可能性が高くなると思われます」

 

提案時に、「金融市場や投資環境の変化が、ファンドの運用成績に同様な影響を及ぼすことが想定されるか?」を伝えておけば、ファンドのパフォーマンスが芳しくない時期でも、効果的なフォローが可能となるでしょう。

資産形成を目的とした運用は、長期間に及ぶので、投資環境の変化は避けて通れません。顧客が保有しているファンドに対して「こんなはずではなかった」と感じて資産運用をやめてしまい、資産形成が実現できないといったことを避けるためにも、多角的分析によってファンド特性を明らかにして、顧客への提案、フォローに活用してはいかがでしょう。

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著者情報

中村 裕己
なかむら ひろみ
NTTデータ エービック P&Cオフィス シニアアナリスト
1985年 一吉証券会社(現いちよし証券)入社、金融商品部長等を歴任。投資信託の企画選定、販売プロモーション等の業務に携わる。2008年 コスモ証券(現岩井コスモ証券)。証券会社においては、投資信託の企画・選定、 販売プロモーション企画・立案等の業務に長年携わる。30年以上に及ぶ投信関連業務歴を生かした、顧客目線の投信選定と分析が信条。2018年よりNTTデータ・エービックに参画
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