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【特別対談】本音で語る“顧客本位”の理想と現実 現場と行政の対話が照らす「これからの投信窓販」
③ 金融行政に本部が過剰反応?対面金融機関の役割とは

金融庁市場企画室長兼資産運用改革室長 今泉宣親氏 ×フィデューシャリー・パートナーズ 森脇ゆき氏

finasee Pro 編集部
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2025.07.04
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【特別対談】本音で語る“顧客本位”の理想と現実 現場と行政の対話が照らす「これからの投信窓販」<br />③ 金融行政に本部が過剰反応?対面金融機関の役割とは

「顧客本位の業務運営」が求められて久しいが、現場では戸惑いの声も多い。新NISAの導入や一部商品への規制強化などが進む中、制度と現場、理念と現実の間にあるギャップは埋められているのか。金融庁・今泉氏と現場の最前線を知る森脇氏が、顧客本位の在り方や投信窓販の今後を巡って率直に語り合った。

金融行政に本部が過剰反応する実態

森脇氏

そういう意味では、金融庁が出すレポートに対して、各金融機関の本部が過剰に反応して、「こうしなければならない」というルールを一律に現場へ押し付けてしまう現象が起きているのも問題です。

金融庁は営業店へのヒアリングなども行っているので、そういう現場の実情をかなり把握されているのではないでしょうか。

 

今泉氏

私自身が営業店ヒアリングなどに足を運んでいるわけではないため、あくまで一般論になりますが、考慮すべきポイントは2つあると思います。

1つ目は、やはり金融機関は大きな組織である以上、さまざまな枠組みや業績目標、評価制度等を通じて、現場に金融機関として進もうとされる方向を共有することは必要となるということ。

2つ目は、その枠組みなどを考える上で「心理的安全性」が重要ではないかということです。数年前から私たちは金融機関の皆さまとの対話の場面でこの言葉を使っています。一人ひとりが不安を感じることなく、安心して発言・行動できる場の状況や雰囲気が確保されて初めて対話が成り立つ、という考えです。同じことは、金融機関の中でも考えられるのではないでしょうか。現場が「こんなことを言ったら不利益を被るんじゃないか」と思って何も言えなくなってしまうと、組織としての風通しが悪くなり、上げるべき報告や意見も出てこなくなってしまうのではないかと思います。

 

 

森脇氏

現場では本部のルールに従わなければならないけれど、その結果、お客さまには不便を強いることがあります。例えばお客さまに「ルールにより一筆ください」とお願いするような場面ですね。

おかしな運用でも、それを改善する仕組みがないのが現状だと思います。

 

今泉氏

(法令等に直接関わらない)「顧客対応が悪い」とか「手続きがわずらわしい」といった問題は、行政というよりは、市場のメカニズムによって改善されるのが健全ではないでしょうか。顧客から支持されなければ、その金融機関・そのサービスが選ばれなくなるので、そうならないように創意工夫を重ねていただく。

一方、お客さまに不利益を与えるような(法令等に抵触するような)行為が本当に起きているのだとすれば、それは行政として厳格に対応することが求められるべきものと思います。

 

森脇氏

1人のお客さまの中にも、「コア」として長期で運用する資産と、「サテライト」として柔軟に売買する資産があって当然なんです。しかし現状では多くの金融機関がお客さまのリスク許容度を確認し記録するルールは一律で、コア・サテライトのように資金によって性格の違う運用があることを想定してしかるべきなのに、その区別がほとんど考慮されていないのではないでしょうか。もっと柔軟な仕組みが必要だと思います。

 

今泉氏

コア・サテライトの是非も含め、顧客の状況を把握いただいて、「本質的なニーズ」に適うような提案がなされるということが必要ではないかと思います。

ただし、顧客の状況をより深く把握いただく、それを組織として共有していく、といったことを実行するためには、CRM(顧客関係管理)やバックオフィス業務、情報システムの見直しなど、さまざまな準備が必要になるかもしれません。そのためのリソースを割けるかどうかも含めて、各金融機関のビジネスモデルや経営方針のご判断であると思います。

 

対面金融機関の役割とは

 

森脇氏

インターネット証券の普及は非常に歓迎すべきことだと思っています。実際、多くの人がネット証券を利用していくでしょうし、それ自体に異論はありません。ただ、ネット証券だけで国民全体をカバーできるわけではないですよね。

やる人は自分で調べてやる。でも、やらない人は放っておかれる可能性が高い。だからこそ、やはり顔の見える存在である対面金融機関が必要なんです。昨今のインフレ下で資産形成の重要性は高まっていると思います。このような中、今泉さんは対面の金融機関にどのような役割があるとお考えですか。

 

今泉氏

「ネットリテラシーのない世代の方の受け皿」としての対面金融機関の役割は、高齢の方もスマホを使いこなし、富裕層でもネット証券を使う時代ですから、もう終わりつつあると思います。単に“ネットではないから安心”だけでは、付加価値になりづらくなっているのではないでしょうか。

顧客があえて時間を割いてまで“対面”を選ぶ理由、その付加価値をどうお考えいただくかが重要になってきていると思います。

 

森脇氏

まさにその「付加価値づくり」が問われていると思います。

単に商品を売るのではなく、自分の仕事の意義を、もっと地域やお客さまの生活全体の中で捉え直す必要があるのではないかと。対面だからこそ届けられる細やかな情報や、お客さまの背景にある生活や人生設計にまで目を向けた提案が求められるはずです。

しかし、現場は日々の業務に追われ、なかなかそこまで視野を広げられていないのが現状です。

そこで私は、「ちょっと視点を変えてみよう」という意味で、経営理念を振り返る研修などを取り入れて、目線を地域全体に引き上げるような工夫をしています。

 

今泉氏

結局のところ、ネット証券と対面の役割の違いは、情報の取り扱い方や提案の在り方に違いがあると思います。

例えば、ネット証券では大量の顧客データを分析して、マス向けに効果的なサービス提供ができる。生成AIなども活用した的確なレコメンドを行うケースも今後は出てくるかもしれません。

他方、対面については、例えば法人営業との連携や、地場のネットワークを生かした非金融の情報など、ネット証券にはまねできない価値を持っているのも事実です。金融機関においても、コミュニケーションの中で得られた定性的な情報の活用を含め、顧客にどのような付加価値をもたらせるかを検討されていると思います。

 

森脇氏

今、金利も上昇傾向にあり、お客さまの資産形成への関心はより敏感になっています。そうした状況で、「金利の高い商品に移す」や「手数料の安い商品に移す」だけの提案なら、誰にでもできてしまう。

でも、例えば住宅購入を検討したいお客さまに対し、収入、生活費、預貯金、投資、保険、ローンなどキャッシュフローを見て、より良い選択をお手伝いする。ライフプラン全体を設計し、ワンストップで提案から契約までするような話になれば、それは対面金融機関にしか提供できない価値です。

それぞれの金融商品を“点”ではなく“線”としてつないで、総合的に提案できること。それが、これからの対面金融機関の競争力になるのではないかと思うのです。

そのためには、やはり現場の人たちが「日々の仕事=地域やお客さまの未来づくり」だと気づけるような環境や支援が不可欠ですね。対面ならではの強みを生かして、単なる販売員ではなく人生の伴走者としての金融人へとシフトしていくことが、今求められているのだと思います。

金融行政に本部が過剰反応する実態

森脇氏

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